第3話 夜の顔(1)

 それは7年前の春だった。


 イスタは突然、父親に〝これからは男として生きてほしい〟と頼まれた。


 リリー家は男児に恵まれず、さらに父が納得出来る養子も見つからず、後継者がいなくなってしまったからだ。


 それまで女の子として育ったイスタは、激しく動揺した。髪がやっと腰まで伸びて、初潮が来て、胸も膨らみ始めた頃だった。これから母のように髪を美しく結い、煌びやかなドレスを着るのだと思っていたのに。


 イスタは最初から男装の道を選んだわけではなかった。あくまで女性として、リリー家を支えていくつもりだったのだった。








 春祭りの悪魔騒動から7日後。



 イースター・リリーにメダルが与えられた。白金プラチナ製で、サイズは手のひらほど。細いチェーンは銀で作られている。




〝そのメダルの輝きは、まるで貴方の瞳のようですね〟



 メダルが収められた箱を差し出しながら、シスターは慈悲深く微笑んだ。


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