歌ってみた機能(仮)

 「…それは…。確かに、色んな人に聞いて欲しいとは思います。でも、二階堂…レオ君には成り行きでこうして聞いてもらっていますけれども。他の人たちの前で、歌うなんて…。何がおかしいのです?一体、何を笑っているのです?」

  

 「フフフ…。そんな事もあろうかと!『歌ってみた機能(仮)』!最近のカラオケは、歌声を録音して配信出来るようになっているのだよん。加藤くんの歌声が、全世界の野郎の慰みものになると思うと興奮して来ねぇ?」

 「言い方よ!ってか何で、男性限定なのです?…いや、その機能については知っていましたけども。その、ボク…スマホではないのですよ。お子様用ガラケー。通話と、SMSのみです。機能を使うための、会員登録がそもそも出来なかった訳でね…」

 「マジか。後で、LIME交換しようかと思ってたのに。じゃあ、オレのアドレスで登録しちゃうよ?HN何がいい?」

 「別に。名前なんて、ただの記号ですから。それこそ、あなたがつけたいようにつければいいのですよ」

 「そうなん?じゃあ、加藤だから『茶』で。えぇと。『持ちネタは、ウンコチンチンです。みなさん、ボクの歌声を聞いてください』…」

 「限度ってものがあるでしょう!?あぁもう、いいです。『Aqua』にしましょう。水がめ座の、アクエリアスから取りました」

 「おぉ、格好いいじゃん。さてはオメー、こんな事もあろうかとバッチリ用意してたな?あはは。言うてオレも、獅子座だからレオって名前だけどねー。あと、姉ちゃんが…。って話、脱線しすぎな。はいはい、『Aqua』ちゃんですね。登録しましたよっと」

 そうして改めて何曲か歌ってもらい、録音した曲をU-tubeとトゥイッターに配信した。正確には「録画」なんだけど、当然加藤くんは姿を映される事を嫌がった。カメラの前にぐんまちゃんのぬいぐるみでも置いとこうかと思ったが、何らかの版権物は絶対に映すなってさ。面倒くせぇ!

 結局室内に置いてあったカメラさんにはそっぽを向いてもらい、壁だけを映す機械となって頂いた。本当は、室内の様子もハッキリ映せみたいな注意書きもあったんだけど…。まぁいいや。もし動画が削除されたら、その時だしね。

 さて、加藤くんとは電話番号のみを交換して家路についた。「歌ってみた」動画の反響、どうなるかな。これで一晩でバズってたら、まるで映画の「竜そば」みたいじゃん?あはは、まさか。そんな映画みたいな事、現実では起こり得ないよねー。


 と、まぁ。自分でも驚くほど、懇切丁寧なフラグを構築致しましたところ…。

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