極星調査
一華凛≒フェヌグリーク
はじまり
チェイムは深く疲れていた。
故郷の星を離れたいと切望し、上司に遠星調査を申し出るほどに。上司ははじめ『危険だから』とチェイムを引き留めたが、やがては首を縦に振った。
調査地が決まったことを伝えると、姉は泣きながら拳を握った。『あだの教義』がどれほど弟を傷つけているのか知っていたからだ。逃れるためには星を出なければならないことも、重々。
遠星調査では
チェイムは、姉や星の誰よりもゆっくりとした時間を生きることになる。調査先の星に辿り着く頃には、宇宙年換算で二百年近く経っているかもしれない。もちろん、知り合いは誰一人生きていない。
「愛しているわ。あなたが、あなたらしく生きられる
姉は「最後だから」と青く美しい
「とーさん。ペン、もらっていくね」
出発の前日、チェイムは父母の墓に挨拶をして、姉と硬く抱擁してから故星を経った。彼を故星に留めるような未練は、もう、なかった。
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