結婚式
甘夏みかん
第1話
結婚式の招待状が届いた。
大学のときの先輩たちの結婚式で、先輩たちとは今はほとんど関わりがない。
きっとサークルの後輩というだけで私を招待してくれたのだろう。
先輩たちは優しいな。桑木先輩と田中先輩はあのころも優しかった気がする。
どうしよう、と迷った。
アオ先輩、くるかな、と思った。
別にアオ先輩がくるからどうとかじゃない。
だけどやっぱり気になってしまう。
入り口までくると見たことがあるような無いような人たちが立ち話をしていた。
私が受付に来ると、
「あ、」
みんなの目が一斉にこちらに集まる。
「カノンちゃんじゃん、」
「生きてたの!?」
「なつかし!」
やっぱり、知ってた人がいた。
ほっとした。
私は「生きてましたよ~。」というとヘラっと笑ってみせた。
このひとたちは一時期入っていたサークルの先輩や友達で。サークルをやめてから今までずっと関わりがなかった人たちだ。
見たことのない人たちは、私がやめたあとに入った後輩とかだろう。
[7年前]
わあー!!と盛り上がる声が聞こえてきた。またなんか起きたな、と冷静な頭で考える。私はいま居酒屋のトイレの個室にいる。トイレから出て、手洗い場の鏡を見ると、ちょっと顔が赤い自分が映っていた。酔ってたほうがかわいく見えるのはなんでだろう。血色感がある。このころ、私はきっと、こわいものなんか無かった。いや、私たちは。それにしても、トイレの外はまだ騒がしい。誰かがまたバカなことしたんだろうな、と思いながらトイレを出た。例えば、一気飲みしたとかズボン脱いだとか。
自分の席に戻って隣に座っている同い年の子に話しかけた。「どうしたの?」「え、あのね、いま桑木先輩と田中先輩が付き合ったんだよー!」となりの子が興奮気味に言った。そして、「告白も素敵じゃなかったー!?」と、向かい側に座っている子に言う。「へー!」と私は言った。逆となりに座っていた男の先輩に「お前、歴史的瞬間見逃したぞ。」と笑われた。向かいの子も笑顔でそうそう、と頷いてまた何か話し始めた。トイレに行く前よりもちょっとだけその場の温度感が高くなっているのが伝わってきた。私は目の前にある焼酎を少し飲んだ。
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