幕間3 母娘コラボその3 ルルーファ・ルーファ 元老騎士、乙女の教科書をめくる 後編


Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン

【メンバーシップ限定・ハゲと娘の配信】 ハゲとなんかゲームする 【ルルーナ・フォーチュン/観照退】

5298人が視聴中 チャンネル登録者数 86.2万人

#旅団長の文化勉強 #ハゲーム



「おっと、ゲームのOPオープニングが始まったな。ということは、攻略対象っぽい面子が出揃ったのかな」

「キャラ紹介のためとはいえ、転校初日で迷子になりすぎだろ、この主人公……」

「まあまあ。おかげで魅力的な王子たちに出会えたではないか」

「王道っつーだけあって、とっつきやすいキャラが多いですね」

「少し整理してみるか。生徒名簿を開いて、イカした5人のメンバーをご紹介だ」


 

「まずは一番最初の登校中に出会った学園の王子様『獅子堂ししどう 獅子座レオ』くんだ。正統派イケメンだが名前にコンプレックスを持っている」

『困ったらクラス委員長の僕に何でも言ってくれ。頼られるの好きだから』

「俺、この手のタイプ嫌いッスわ。なんか仲良くなった途端に彼女をヒモにして使い捨てそうッス」

「顔が良いから、すり寄ってくる女子が信用ならねえんだろ。誠実かつ素直に愛情を注げば心を開いてくれるさ」


「お次はレオくんの親友ポジション、陽キャなお調子者スポーツマン『刑部おさかべ 龍彦たつひこ』。通称タッツー。ポジティブの権化で兎に角クヨクヨ考えない前向きさが人気の秘訣だ」

『ウィッス! 何を落ち込んでるのか分かんねえけど、とりあえず一緒に体を動かそうぜ!』

「あー……空気読まなそー……いろんな意味で部下に持ちたくないっスね。暴走プレイで迷惑かけまくりそう」

「女子にも分け隔てなく接する性格である以上、恋愛経験は薄い子だろうな。捻らず直球に追いかけるべきだ。攻略対象の中ではきっと一番の難関だろう」


「先輩がたの紹介といこう。生徒会長の『西行寺さいぎょうじ 昭文あきふみ』。学園の生徒会長。眉目秀麗の言葉が似合うインテリメガネのイケメンだ。厳格すぎる言動が玉に瑕だな」

『私の前で学園の風紀を乱すような行為は止め給え。ここは神聖なる学び舎だぞ』

「自分が違反したら超早口で弁明するムッツリタイプとみた。普段が厳格すぎる奴に例外は無え。何よりも生意気な知り合いに見た目がソックリでムカつく」

「一度恋愛を経験して人間らしさを覚えると途端に男としての魅力が増すタイプに違いない。小悪魔的なアプローチに弱いと見た」


「生徒会長のライバル。ヤンキーの『海奈かいな ゴウ』先輩。孤独を愛するぶっきらぼうな一匹狼。喧嘩早く、何でも拳で解決する。なお女嫌いである」

『ウザってぇ……俺の前でウロチョロするんじゃねえよ、女』

「完っ全に暴力でしかコミュニケーションが取れねえタイプですね。関わり合いたくねー。つーかバジカミに似てません?」

「ジル戦のあいつと違って武を極めることしか頭にない、という訳では無さそうだ。放っておいたら破滅してしまいそうな危うさがあるな。お近づきになるなら、しっかり世話を焼いていこう。押しかけ女房だ」


「最後はちびっ子オタク後輩の『五十嵐いがらし あるや』。ゲーム部所属の天才児で、将来はプロゲーマーを目指している。小悪魔的な幼い言動で先輩たちに可愛がられているぞ」

『センパイ! 今日発売の新作ゲームを買って、ボクと一緒に遊ぶって、約束したよね!?』

「一度彼女とか出来てくっついたら周りに自慢しまくるお調子者とみた。一生結婚できなさそうッスね」

「彼もまたタッツーくんと同じで恋愛に疎そうだ。まだ精神的に未熟なのだろう。恋愛対象という立場を一度理解させて、男を磨かせていこう」


 

「……団長。貴方が多くの人を惹きつける理由を改めて思い知らされましたよ」

「お前こそ。今日も絶好調だな観照退。しっかりと闇深い」


:センセェの闇と団長の光を同時に見て頭がバグってる

:センセェって、大量虐◯とか集団◯イプとか平気で描いてるもんな そりゃ闇に呑まれた心でしか描けねえよなあ

:時々ギャグが挟まってなかったら重すぎるんよ設定的に


:団長の攻略法が的確すぎて怖い それも何一つ打算で言ってないところが

:そうやってガンガン人をたらし込んでいったんだろうなぁ……

:ホストかキャバ嬢に団長がいたら一発で人生壊れる自信ある 100%貢ぐわ


「で、誰狙いです?」

「それがなあ……いまいち刺さるキャラが居なくてな。どうしたもんかと迷っておる」

「おや」

「恋愛とは情熱の生き物だ。愛が生まれれば体が勝手に動き始める。だが、今の彼らに対しての衝動が俺には生まれておらん」


:刺さる刺さらないって感覚の問題だから、それはしょーがないな

:属性が同じでも、こいつはなんか違うとかよくある話


「どうにも決定的な何かが欠けているような気がしてな。各々おのおの個性が分散されていて、それぞれに魅力的な一面を感じてはいるのだが」


:必要な属性はしっかり揃っているけどね

:アイドルグループと呼ばれてもおかしくないイケメンどもに何が不満なのだろうか

¥3400:団長には申し訳ないが、推しが攻略されませんようにと願う自分がいる 攻略されたら二度と振り向いてもらえないようなネトラレ感ががが

:分かる 分かるよ でも団長ならしょうがない

 

「ううむ……考えても埒が明かん。ひとまず均等にコミュニケーションを取っていくとしよう。交流を重ねれば伴侶と呼ぶに相応しい男が現れるかもしれぬ」

「ですね。話を進めましょう。うわ、職員室に着くまで1時間も経ってますよ」

「広大な学園なのだなあ……職員室……という事は、教師の駐在所か?」

「その通りですね」

「美男子揃いなのだから、きっと教師も例外ではないだろう」


:いや 年中ジャージのバリバリな体育会系だぞ


「おっとハズレか」

「しかし体育会系ということはスポーツマンかな? タッツーくんが居るからなあ……」

「属性かぶりッスね」

 

:かぶってない タッツーの爽やかイケメンとは対局の、ゴリラ系な色黒ムキムキ

:先生じゃなくて教師

:むさい

:くさそう

:常に汗ばんでそう

:NTRの竿役が多そう


「む? なんだと? もしや……」

「団長、なんでこっち見てるんですか」

「需要が満たせるかもしれんと思ってな。いざ入室だ」

「猛烈に嫌な予感がするんスけど」


『おお、待っていたぞ! お前が転校してきた生徒か! 転校初日からイケメンどもに囲まれたおかげで噂になっているぞ、キミ! オレの名前は『中条なかじょう』! ジョー先生って呼んでくれよな!』


「………………」

「団長? なんでこっち見てニヤニヤしてるんスか?」

「………………」

「え。ちょっと!? 無言で進めないでくださいよ! めっちゃ不安なんですけど! 団員さん大丈夫!?」


:大丈夫だよセンセェ 団長の笑顔を見て確信した

:舐めてんのセンセェ? プロの団員よオレたち

:団長の嬉し顔に私らもニコニコ笑顔

¥667:団長に伴侶が見つかったようで嬉しい限り

:とうとう行動選択 初手は何かな?


「よし。まずは情報通の友人、ヒント担当の鈴木ちゃんに聞き込み一択。当然ながら対象は担任のジョー先生だ」

「やっぱりそうなるのかよ……」


:センセェのイメージにそっくりだと思ったよw

:でもひとつ問題があるんだよなあ

 

「おい。なんでジョー先生の選択肢が無いのだ」

「俺が知るわけないでしょ!?」


:ガチトーンww

:ジョー先生は追加ルートです 全年齢版で追加 情報解禁は2周目から

:何だかんだで人気キャラなのよ

:一応初回プレイでも狙えるよ 運が絡むから非推奨だけど


「可能性はゼロではないのだな? であるなら問題ない。恋愛成就の難易度で相手を変える俺ではないぞ」

「えええ……何が気に入ったんスか、あのゴリラ」

「筋肉だ」

「はあ。筋肉ですか」

「血管が微かに浮きあがる程度の、皮下脂肪を徹底的に削ぎ落とした身体の作り込みはお見事に尽きる。俺、あんな身体に生まれたかったんだよなあ」

「そのワガママ愛されボディを貰っといて何いっとるんだアンタは」


:女として完全に強者発言(白目

:いつぞやの配信で、お嬢に自分のオッパイを譲渡したい言うてたな

:私等は羨ましいの極みだけど、当人の需要は別問題よね……

 

「鈴木ちゃんとは適当に会話してと……次の行動は職員室へ相談に行こう。とにかく先生へアプローチだ」

「もう同じ体育会系のタッツーくんあたりで手打ちにしましょうよ……」

「なぜお前に恋愛対象を指定されなければならん。恋愛を舐めるなよ。妥協で愛が育めるものか、たわけもんが」

「リアル恋愛と混同しないでくださいよ!? てゆーか、このキャラをお気に入りされると、俺がすげー複雑な気分なんですけど!」

「自分に似てるからか? 自意識過剰だなあ、お前は」

「アンタ狙って選んでんだろ! そのクソ憎ったらしいニヤニヤ顔を見たら分かるんだよ!」

「あまり大声を出すなよ。先生の麗しき御声が聞こえないだろう」

 

『オススメの部活を紹介してほしいだって? 悩んだら、とりあえず陸上部に入っとけ! 色んな競技があるから得意競技が見つかるかもしれねえぞ!』


「やはりな。よく聞いたらお前の声にソックリだ。ほら、アテレコしてボイス販売しようぜ。布教するからよ」

「これ何のハラスメントなんスか!?」

 

:オレたちはニヤニヤ(・∀・)

:ニヤニヤしすぎてヨダレ出てきちまった

:センセェ不憫www


「はぁ……おかしいなあ……」

「おん?」

「俺が思い描いていた団長との初コラボ配信とえらい違うんですけど……」

「期待を裏切っちまったか」


:あらら

¥5000:ごめんなさい先生 調子に乗りすぎましたか

 

「いやいや団員の皆、不愉快とか全然思ってないッス。この配信も十分に楽しいんですよ。ぶっちゃけいつも通りだし。むしろこんな野郎どもがバカやってる配信なんか見せて成り立ってんのかと心配してるくらいに楽しんでますよ」

「では何が理想だったんだ」

「先日の紅焔嬢や姫さんがやった母娘配信みてーに、お互いリスペクト飛び交うてぇてぇ現場を期待してたんス」

「ふむ。感謝されたいと。なかなか贅沢だな」

「アイドルVtuberのルルーナ・フォーチュンとコラボしてるんですぜ。それくらいのワカガマくらいバチはあたらねえと思うんですよ」

「なるほど。まあ絶対に言わんのだが」

「まあ、そうッスよね……えええ!? 即否定ッスか!?」

「当たり前だろ。俺が何故わざわざメン限の配信にしたと思っとるんだ。今の俺はアイドルとして配信しているつもりは無い」


:素の自分でプレイしたかったからですよね団長

:実家に帰ったVって、みんな今の団長みたいな態度になると思うよ

:もはや実家w

:ママだもんなw

:今日の団長のウキウキ度合いは過去ブッチギリで最高に可愛い

:団長の「お前」呼びが聞けるだけでも白米が美味い

:この肩の力を抜きまくったルルーナ団長はセンセェにしか引き出せないんですぜ


「言われ言わされの探り合いなど、俺達には似合わんだろ観照退。体裁を取り繕うステージはとっくに過ぎ去ったと俺は思っているのだが」

「いやまあ……そうでもあるんですけど……いいんすか? 普段の団長を否定するような言い方ですよ」

「俺は配信で建前を言った記憶は無いぞ。普段の俺もまた心のままの俺だ。今日の俺が天邪鬼と言うなら、それは我儘を言って許される相手だからだ」

「………………」

「さすがに企業から公式にコラボ依頼されたら、その時はちゃんとルルーナ・フォーチュンとしてお前と配信をするよ。

 だが願わくば、そんな肌がむず痒くなるような空間など永遠に訪れなくて良いと思っておる。アイドルの殻を脱ぎ捨てて、親友のひとりとしていつまでも気を許していたい……俺にとってお前はそういう存在だよ」

「いやちょっと待って、いまめっちゃ恥ずかしいッスわ。結局すげークサいこと言ってるし」

「ああ? どう聞いても平常運転だろうが」

「……確かに。団長のいつも通りでしたね」

「では諦めてジョー先生の攻略に戻るぞ。早くせんと、お前がリスナーの攻略対象になっちまうからな」

「え? なんですって?」


:やべえ、センセェにキュン死味を感じてしまった

:何このゴリラ漫画家 可愛い

¥16670:団長とセンセェ究極の二択ゲー、発売まだッスかねー?

¥16670:センセェとホテルのレストランで乾杯したい人生だった……

:これがガチ恋か……


「なんじゃこの反応!? ここは団長にときめく場面じゃねえの!? あんたら感性おかしくないか?!」

「よくよく考えれば、お前の結婚相手が見つかるかもしれんからちょうどいいか。お前に女っ気が無いの、実は気にしてたんだよ。ちょっと真面目に団員たちと相談しようかな」

「いやいやいや待て待て待て!!?!??! なに勝手に俺の婚活はじめてるんですか!?」

「……確かに今やるべきではないな。流石にゲームタグを打っておいてゲーム中断はどうかと思う。後日あらためて事務所と出版社にかけあって、場を設けられるか審議してみるよ。ゲームに戻ろう」

「ねえ団長!? すげえ真面目な表情で不穏な発言しないでくださいよ!?」


『男の中の男、中条32歳! お嫁さんは永遠に募集中だ! うはははは!』


「現実のお前も、これくらいアグレッシブになってくれれば俺も心配しねえんだけどな……」

「マジで止めてくださいよ団長!? 俺、結婚に興味は無いんですからね!!」


:いやこれマジムーブだと思う

:あきらめようセンセェ

:団長の座右の銘『有言実行』


:不思議な関係だよなあ 男友達のようであり 父と娘のようであり 母と息子のようであり

¥2300:このてぇてぇ空間が見られれば、それでもう

¥6670:二人のやり取り、最強の癒し系BGMですわ

¥10000:永遠に見ていたいな この配信 いつまでもお幸せに


 

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