59話 おねえさんたちのうたげ 前編


―― 六条安未果 ――


 初めて会う人にはいつだって緊張する。相手が男でも、女でも同じだ。最近の出会いは衝撃的な内容が多かったり、相手が積極的に語り掛けてくれる人ばかりだったので、私の人見知りが発動せずに済んでいたけど、今日はじめて話す相手はどうやら人付き合いに消極的な方みたいだ。不安が募る。

 今日は帝星ナティカ外部初コラボ配信の日。その相手とは、先日のライブでYaーTaプロ1期生である私たちをいっぱい感動させてくれた『言葉ことのはアリア』。配信歴6年を誇るベテラン中のベテランだ。


「ナティカさん、モデルの配置オーケーです。動作と音声のテストお願いします」

「分かりました」

 

 アリアさんの指示に従ってチェックを行い、問題ない事を確認して、私はほっと息を吐いた。

 現在、配信前の最終チェック中となっている。私のパソコンは既にアリアさんのパソコンとリンクしており、アリアさんに調整を担当していただいた。2Dモデルのデータを投げたら、あとはアリアさんが全部やってくれたのだ。なお、配信を行うのは私こと帝星ナティカのチャンネルではなくて、アリアさんのチャンネルとなっている。

 当然の采配だね。だって私、配信で何をするのか全く聞かされていないんだもん。配信内容の打ち合わせも、YaーTa側ではプロデューサーが、GS側ではアリアさんと彼女のマネージャーが秘密裏に押し進めてしまい、私には情報が下りずじまいとなっていた。アリアさんも、配信が始まる前は情報展開を禁止されていて、残念ながら中身を教えてもらってはいない。すごく疎外感。


「――さん」


 それに、せっかくアリアさんとお話ができているのに、交流は必要最低限で済ませてほしいと言い渡されているようだった。自己紹介もそこそこに、淡々と配信の準備だけが進んでいく。その現実がちょっと寂しい気持ちだ。


「ナティカさん」

「ひゃいっ!?」


 アリアさんの呼びかけで意識が戻る。いけないいけない。今私は、通信越しとはいえ大先輩の前にいるんだぞ。しっかりしなくちゃ。


「ごめんなさい、ぼーっとしてました」

「準備が終わりましたよ、と伝えたかったのですが……データを渡してもらったら、あんまりやることないですからね。状況は把握していますので、大丈夫です。

 こちらこそごめんなさい。会社からの指示とはいえ、これから配信でご一緒するのに、貴女とお話できてなくて。片方だけとはいえ、台本無しの企画は顔なじみ同士がやるものであって、初対面の人にはやらせないものなんですけど……」

「珍しいんですか?」

「お互いの性格や好みを理解してこそ成り立たせられるものですからね。今夜はなるべくナティカさんが話しやすいように頑張ってリードしていきますので、ナティカさんは本番まで、なるべく気持ちを落ち着かせるように努めてください」

「りょ……了解です」


 ふああ、かっこいい! これが配信歴6年にもなる大先輩の貫録……!


「あとは時間まで待機ですが……問題の洗い出しと、配信開始時のトークテーマくらいは打ち合わせをしておきましょうか。

 まずは、分からない点や懸念点はありますか――って、ナティカさんには不明点と懸念点だらけでしたね」

「この状況だとそうですね。あはは……」

「となると、トークテーマかー……うーん……何か話したい事ってありますか?」

「えーと……うーん……いざ言われると、頭が真っ白になっちゃいますね」


 私の雑談の話題はスタメンさんから提供してもらっているものばかりだし。ルルちゃんやのり子ちゃんのように話題を切り出すのはとてもとても苦手だ。


「あはは。私と同じですね。私も話題出すのって苦手なんですよ。聞いてる側は興味あるのかな、なんて考えてしまって、誰かが話し出すのを待っちゃうんですよね」

「アリアさんも?」

「雑談のやり方は上手くなったって自覚はありますけど、根本の陰キャな成分は治りませんよ。性格の問題じゃなくて、もっと根本の、気質の問題です。今は先輩だから頑張って支えてあげなくちゃってなってますけど、逆の立場だったら私、もっと上手く話せてないです」

「そうなんですかね……あまり見えないなあ」

「現に話題を切り出せずじまいですよ」

「そうではありますが……」


 このままだと本番まで探り合いをずるずる引っ張っちゃいそうだ。アリアさんも同じことを考えているのだろう。


「交流は必要最低限で済ませろとは言われてますけど、あまりにもですよね……ええとじゃあ、一つ気になっていたので、この機会に聞いておこうと思った事があって。ナティカさんの実際の年齢っておいくつなんですか? お酒は呑めるみたいですけど、声は若いように聞こえるから、気になってしまって」

「年齢ですか……」

「あ、えーと。答えにくければ答えなくても大丈夫です。女性に年齢を聞くのは女性同士でも気になる人はいるでしょうし」


 つまり、子供っぽく見えてるんだろうなー……私、自分の年齢は正直言って好きじゃないんだよなー……でも、アリアさんも頑張って自分に詰め寄ってくれようとしているのは分かる。私だって跳ね除けたくない。よし、答えよう。


「26です」

「え!? 同い年!?」

「おなっ――ええ!?」


 衝撃の事実!! まさかの同年代だったなんて……ということは、二浪の私が大学をやっとこさ合格したころに、アリアさんはVtuberデビューしたってことなんだ。すごいなあ。行動力あるなあ。

 ……ん? 同じ年? 同じような性格?


「ちょ、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが、アリアさん」

「はい? どんなでしょうか?」

「好きなアニメや漫画やゲームの話なんかを――」



―― 帝星ナティカ ――


Aria Ch.言葉アリア

【ひみつ企画?】YaーTaプロのナティカさんとお話しますっ!【言葉アリア/帝星ナティカ】

2.3万人が視聴中 チャンネル登録者数 140万人

#うたのおねえさんと、まだうたわないおねえさん


:待機

:待機完了

:清楚✕清楚 この二人が出会って何かあるというはずもなく……

:アリたんはそれなりなオタ味あるから清楚から離れつつあるけど

:本当にちょこっとずつ化けの皮剥がれてきてるんだよなw

:二人とも陰キャ代表みたいな性格だからなー不安

:ジャスト20時。祭りのかいしだ


「くうぅぅ! ナティカさん、まさかの堂満派!? 晴明じゃないのかー」

「アウトローだからこそ輝く魅力が詰まってるって感じが好きで……堂満は汚れ役だったり必要悪みたいなタイプも居たり、型に囚われないキャラクター像ばかりで作品ごとに毛色が違ってるから、作者さんの解釈を見比べるだけでも楽しいです」

「晴明派だけど分かるなー。小説版の話なんですけど、私、晴明と親友の正雅との絡みが大好きなんですよ。あの二人のやり取り見てるだけで一日過ごせちゃいます」

「分かる、分かりますー。女の子が好きな要素ばっかり詰め込まれてますよね――」


:!?!?!?!?!??!?!?!?

:んああ!?

:オープニング中だぞ!?

:クッッソ放送事故じゃねえかwwwwww

:✕ミュート忘れてる ○ミュートの概念が無い

:マイナスとマイナス掛け合わせてプラスへ転化しやがったwwww

:開始前から濃厚な陰陽師トークwwww

:お互いに「あ……」「えっと……」と牽制しあう二人を想像していたらwwww

¥2500:もはや待ちわびておらぬ!

:↑GSの配信にもw敗北お疲れ様っす!


「あれっ、マネージャー さんから電話――あ、わ、ぎゃーっ! ナティカさん、じかん、時間です!」

「えええええ!? うわ、ほんとだ! 配信始まってる! 盛り上がりすぎたーっ!」

リスナー聖歌隊のみんな、ごめん! ミュートします!」


:アリたんがぎゃー! 言うの珍しすぎるWWWW

:今年で一番腹痛いwwww

:腹筋wwwwww返せwwwww

:アリたーん? あなた配信歴何年だっけー?

:新人Vtuber同士のコラボ配信の会場はここですね?

:おかしいな……この前の記念ライブって6日記念だっけ……?

:モデルの動きがせわしなさ過ぎるww

:あ、戻ってきた

:というか始まった


「こんアリア。ガールStateステート1期生、アイドルVtuberの言葉アリアです。今宵もあなたにとっての聖夜となりますように」

「こんナティカー。YaーTaヤタプロダクション1期生、同じくアイドルVtuberの帝星ナティカです。今夜もあなたの一番星となれますように、頑張ります」


:わあー。なんて清楚な挨拶なんだー(棒

:アリアって子、動画タイトルに新人Vtuberが抜けてるよ

:遅いんや……今から清楚やっても全部遅いんや……

:でも仲良しになれて、偉い!

¥2525:てぇてぇニウム補充完了! やはり百合は世界を救うな!

:挨拶も似てて親和性も倍率ドン! さらに倍ッ!

 

「あ、これもう全部遅いみたいですね」

「うわー……こんなやらかし何年ぶりだろう……後でめっちゃマネージャーに怒られちゃう」

「おかしいなー。私のほうは、プロデューサーから何も連絡来なかったんだけど」

「事務所の方針の違いってヤツかもしれませんね」


Ya-Taプロダクション【公式】:放っといたほうが面白そうで、つい黙ってました

:おい公式wwwww

:あっちのプロデューサー攻めてるなwww

:せやかてプロデューサーやろ? マネジメントには口出ししないんちゃうの?

:↑YaーTaプロのプロデューサーは1期生全員のマネージャーも兼任しとるで(ソースは団長

:↑何そのバケモノ

:ある意味1期生よりもバケモンやと思う

:そういやナティ姉、しっかり動いてるな。普通箱が違えばモデルは動かさないもんなんだが


「良いところに目を付けましたね聖歌隊の皆さん。YaーTaプロさんのところのモデルはですね、GS側のツールと互換性があるんですよ。逆も然りです」

「へー。そうだったんですね。てっきり当たり前の事だと思っていました」


:思ったよりも珍しいんだよ、姫さん

:3D配信ならスタジオ借りて撮影するから動かせるんだけどね 2Dだとなかなか難しい

:ますますヤタとGSの境目が無くなっていく


「皆さんのコメントはナティカさんにも見えてますからね。節度とマナーを守ってコメントお願いします。

 それにしても、いやー……盛り上がっちゃいましたね、ナティカさん」

「本当にご迷惑をおかけして申し訳ないです……」

「いえいえ。喋った内容はセーフだったみたいなので、むしろありがたいですよ。初対面でこんなに盛り上がれたのは久しぶりです」


:いつもコラボの時ってアリたん大人しいイメージなのに、珍しいよね


「私たち話を始めたのがついさっきで、お互いぎこちなかったんです。自己紹介をする時間もあまり取れなくって。でも今日のコラボに向けて、せめてお互いのことを情報交換しましょうってなったんですよ。そうしたら、ナティカさん、私と同年代って分かりまして!」

「で、好みのアニメや漫画を聞いたんですよ! そうしたら、私と見ている作品群がドンピシャで一致しちゃって」

「知ってる作品同士だとついつい盛り上がっちゃうんですよね」


¥4000:あぁ~ てぇてぇが加速していくんじゃ~^^

¥1059:天国はここにあった

:可愛いと可愛いの二乗効果

:あれ? ナティ姉、アリたんと同い年くらい?

:え? てことは、俺と同じ年くらい!?

:↑お前の歳なんて知らねえよww

¥2626:2 6 だ よ !

:スパチャwwww

:26歳ニキの破壊力wwww

:癒されに来たのに腹筋がドンドン壊れていくwww

:いや待て、ナティ姉、あの言葉遣いで26だと!?

:「えへへ」をナチュラルに使いこなす26歳……アリです


「はい。では早速今日の主旨へ入る前に、私とナティカさんの関係性について話しておかなきゃですね」

「そうですね。実は私たち、初対面のようで初対面じゃないんです」


:あれ。そうだっけ

:ていうかナティ姉の交友関係、身内以外知らないわ

:ぼっちって言うとったから……

:アーカイブ残ってないから知らない人多いかもだけど、ナティ姉の初配信でアリたんコメントしてるんよ

:激なアチアチコメだったよな


「あはは……改めて言われると恥ずかしいな。コメントでもリスナーさんが言っている通り、私、ナティカさんの初配信にコメントしちゃったんですよね」

「はい、そうなんですよ! あのコメント、本当に私にとってありがたいひとことでして……! 私、あれからお礼が言いたくて言いたくて仕方なかったんですけど、連絡先も分からなくって……この感謝の気持ちだけは伝えなくちゃって、ファンレターを生まれて初めて送ったんですよ」

「もちろん読んでいますよ。というか、手元にあります」

「ててて手元に!?」


:オッ♪ 朗読タイム待機だぜ♪

:手元に取ってあるってことは、アリたんにとってもよっぽど嬉しかったんだろうな

:ナティ姉、今日に限っては私呼びだな……よっぽど同年代が嬉しいんだな

:ある意味同期とコラボより気が抜けてるかも

:先輩相手に自分をお姉さん呼び出来ないって理由もありそうだけど


「さすがに読み上げはしませんよ。でも、あのコメントは送ってよかったんだなって、送らなかったら後悔していただろうなと、思わせてくれる内容でした。

 本当はすぐにお返事を書きたかったんですけど、マネージャーさんに止められたんです。『アリアさん、そのお返事は直接言葉で伝えましょう。もっと先の、大事な場面まで取っておきましょう』って」

「え……ええ!?」

「あの時のコメントで、貴女がこの配信に出てくれたのなら……貴女とお話できているなら……そして、こんな素敵な出会いへ繋がったのなら、私も勇気を出して良かったんだなって思います。

 こちらこそありがとうございます。貴女がVtuberを続けてくれて。私、今とてもワクワクしています。貴女がこれからどんな活躍を見せるのか、とてもワクワクしています」

「あっ、あ……ぁぁ……ちょ、ちょっとごめんなさい。また少しミュートします。ちょっとだけ時間下さい」

「大丈夫ですよ~。皆さんも少し時間を取りましょうか」


:姫さん泣いとるな 当然かw

:俺も今の顔をかーちゃんに見られとうない

:もらい泣きやで……

:5分くれ。少し泣く


「………………はい……はいっ! 治まりました! ごめんなさい、話を止めちゃって」


:まだ涙声w

:嬉し涙なら大歓迎!

 

「それじゃあ、ちょっと涙を我慢してもらいながら……動画のタイトルにも書いてある『ひみつ企画』。そろそろ発表しましょうか」

「そういえばお礼を言うことで頭がいっぱいになってました」

「ナティカさんには内容を一切知らせていませんので、たった今から公開します。字幕を出しますね」


:のっけから怒涛の展開が多すぎてすっかり忘れてたwww

:本人たちも忘れてただろうなw

:発表ktkr

:お? おおお?

:こいつは……良い発表じゃあないか!


「ナティカさん、読み上げお願いします!」

「『言葉アリア、帝星ナティカのボイストレーナー就任!』――えええええ!?」

「はい、ありがとうございます。只今をもってわたくし、言葉アリアはナティカさんのボイストレーナーへ就任させていただきます!」

「アリアさんが、私のボイストレーナー!?」

 

:アリア直々とか、太っ腹やなGS!

:おいおいスケジュール大丈夫かよ


 ふおお、プロデューサーが機密事項にしたかった理由が分かったぞ! これは私もびっくりするよ! 憧れのアリアさんから直接指導してもらえるなんて!

 

「そんな、お忙しい中……わざわざ申し訳ないですよ!」

「大丈夫。スケジュールは調整済みです。YaーTaプロダクション直々のご指名ですし、アイドルとしての言葉アリアではなく、トレーナーとして依頼を受けています」

「トレーナーとして!?」

「実は私、ボイストレーナーの資格を持ってまして」

「うぇえ!?」

「国家資格は無いので、民間の資格にはなりますが。お仕事に声を使う方々への指導が許可される程度には嗜んでおります」


:しかも腕前はかなりのもんですぞ

:Vtuberとして売れなかった時のセーフティーがよもやこんな形で活きてこようとは

:なんたって、みなもんを一流の歌い手に矯正した実績持ち 信頼度タカシちゃん

Minamo.ch 飛沫みなも:アリア先輩専用のフリー素材、使うなら今!

:本人降臨キタ!

:みなもんもようみとる

 

「みなもちゃん、見てくれてるんだ。私的には説明の説得力が高くなるからありがたいけど……じゃあ、遠慮なく使わせてもらいます」

「みなもさんとは、後輩の方でしょうか」

「はい。以前、後輩の飛沫しぶきみなもちゃんの指導を担当させてもらいました。矯正前と矯正後の様子が比較できる動画を、みなもちゃん本人が作ってくれたので、ナティカさんにも見てもらいましょう」


:劇的ビフォアアフターがよく分かるぞい

:先にアフターか

:もはや普通に上手いんだよな

:箱内でも上位に食い込むくらいじゃないか?

:みなもんの成長劇だけで動画作れる

:一昨年は念願のソロライブで涙腺崩壊しちまったったい

:紅蓮烈火を歌い直してくれねえかなw

:↑あの紅蓮烈火は初期みなもんだからこそできる芸当


「お上手ですね……声質はふわふわしてて消え入りそうなのに、しっかり声が伸びています」

「そろそろビフォアー入るかな」

「え……ええ!?」


:そーだよな、初見はだいたい姫さんみたいなリアクションだよな

:初期みなもんのトンチンカンな歌い方も好きと言えば好きだけどね

:改めて聞くと、7割くらいは音程外れてる

:カラオケ下手な女のカラオケまんまw

:ほぼ熱意だけでGSの合格もぎ取った女は伊達じゃない

:アリアの指導前提でメンバー入りさせられてる女

:今、初期みなもん追悼会を思いだして最高にキモい思い出し笑いしてるわwww

:一昨年の記念企画だねw


「だいたいビフォア・アフターの期間は1年くらいかな」

「どんなレッスンしたんですか!?」

「特別な指導はしていません。週1単位のペースで、1日1時間程度の課題をこなしてもらって、その結果を元に指導していました。それから、ひと月に1回のオンラインレッスン――いわば発表会をやっています」

「あれ。想像よりもだいぶソフトでした」

「ボイトレやボーカルレッスンというのは、体で覚えるまで反復練習をひたすら繰り返すことが基本になります。みなもちゃんには自主的に練習してもらって、あとは定期的に私が確認して、不良不備な点を指摘して自分で矯正してもらうんです。トレーニングの時間も、やりすぎては喉を壊してしまうので、1時間程度しか取ってもらってません。だから私やみなもちゃんが、アイドルや配信の仕事をしながらでもトレーニングは十分に可能なんですよ。

 みなもちゃんのケースはトレーニングの期日が無いからペースはゆっくりだったこと、みなもちゃんの素質は申し分ないこと……何よりもみなもちゃん自身の熱意があったこと。これが成功の秘訣です」

「す、すごい……!」


 私のド下手な歌でも形にできるかもしれないぞ! うわ、嬉しい! 初配信で皆が応援してくれた時くらい嬉しい! 今の私、鼻息大丈夫かな!? マイクに乗ってないかな!?


「どうでしょう、ナティカさん。私で大丈夫でしょうか?」

「はいっ! 是非、ぜひお願いします!」


:ナティ姉大興奮www

:ここ最近でも聞けなかった元気な返事だ

:いいなー心あたたまる


「良かったー。本当に引き受けてもらえるか心配だったので、ひと安心です」

「元々プロデューサーへ希望を出していたんです。その相手がアリアさんなら、断る理由なんてありませんよ」

「よーし。それじゃあ、さっそく今から始めましょう」

「はいっ! ――はい?」



「とりあえず歌ってみましょうか。

 聞いた話だと、私の楽曲『好きよも好きよは恋のうち』、いっぱい練習してくれたんですよね。それでお願いします」



「………………は?」




 

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