40話 駆けつけるな一杯


―― 帝星ナティカ ――

 

Natica Ch.帝星ナティカ

【こんどこそ初配信】お酒の力を借りて はじめまして!【帝星ナティカ/YaーTaプロ】

5680人が視聴中 チャンネル登録者数26.7万人

#帝の星より愛をこめて


:飲酒枠と聞いて

:やっとナティ姉にアーカイブが残るのかな?

:視聴者数と登録者数を見ていると落ち着くな まだ現実的

:新規起業ならこれでも多い方

:アイドルバケモノとマルチバケモノにサンドイッチされて病まないのかな

:今のところ巻き込まれた一般人だよな 精神力バカ高いけど


 うおお、やっぱり緊張するよー……全体を通して配信は4回目だけど、見守り無しで配信するのは本当に初めてだから、これはこれで緊張する。よく私、初配信を自宅でやろうと思ったな。自宅だったら失血死しててもおかしくなかったよ。事務所で配信して良かった……。

 でも、あの初配信に比べたら気持ちは楽だ。質問箱やフォームからお題をいっぱい貰っているし、スタメンさんだって、きっと話題を上げてくれるに違いない。話題を切り出すのは滅茶苦茶苦手だけど、話題に乗っかるのは大得意です。つまり準備は万端。そしてダメ押しのお酒! ネタもメンタルも上々。何も用意できていなかったあの時とは違うんです!

 よーし。そろそろ時間だ。始めちゃおう! 今の私は誰も何も怖くないぞ!


:はじまた!

:待ちわびたぞ!

:待ちわびた兄さんの通常進行ひさびさ

 

「み、みなさん! こんナティカーッ!」


:ぐあああ?!

:鼓膜、鼓膜がああ!?

:マイクの圧強すぎィ!

:姫さんハウってる!


「わああ!? ごめーん! ボリュームボリューム……はー、びっくりしたぁ……」


:びっくりはこっちですわ

:挨拶も圧が強かったから余計に惨事やったな

:でも元気があってよろしい

:えらいぞ姫さん


「ありがとう皆さん。前回もミュート切ってなくて失敗しちゃったし、開始はしっかり気をつけなくちゃね……。

 改めて皆さん。初めましての方は初めまして。YaーTaプロダクション1期生の帝星ナティカと申します。以後お見知りおきください」


:知ってる!

:知らない まあ嘘なんだけどな!

:これ初配信なの? 初配信じゃないの?


「お姉さんの初配信は諸事情でアーカイブに残らなくなっちゃったから、改めて自己紹介の場を設けさせていただきました。アグちゃんとルルちゃんに混ざってるの誰? って声もありましたし、お姉さんのチャンネルもアーカイブが残っていませんし、この場でしっかり自己紹介を頑張ろうと思います。ついでにお酒の力も借りて緊張を無くそう! という意気込みです」


:頑張ってー!

:姫さんの配信を見てると子供の成長を見守ってるように思えてくる

:ていうか、お酒飲める年齢なの?

:お嬢と同じ未成年だと思ってた


「未成年どころかルルちゃんよりも年上で、ちゃんと成人してますよ。声が若いからよく間違われるのは嬉しいような悲しいようなって感想です。お酒を買うときは身分証明書を見せろって毎回言われちゃうのは明確に悲しいですね。もっと大人の貫録つけたい……」


:まずは話し方から改善だなw

:今日はどんなお酒を呑むのナティ姉


「今日呑むお酒ですか? 写真は撮ってありますよ。ハイ、じゃんっ!」


:銀色の――じゃねえ、ウイスキーか

:4リッターボトル!?

:意外

:チューハイとかカクテルとか、もっと可愛いのを想像してたわ

:今じゃ日本酒やワインをガバ呑みするアイドルも多いから珍しくはないが

:つよつよじゃないか姫さん


「コスパと味を考えるとコレに落ち着くんですよね。安売りしてたとはいえ4本セットを買ったので、だいぶ奮発しましたよ。今日はこれを700mlミリリットル瓶に移したものを、コーラで割りながら吞んでいきます。氷をいっぱい入れたタンブラーに1:3の割合で注ぎます。味とお酒の割合として、お姉さんはこれが限界です」


:かなり濃い目!

:アルコール度数で言うと10%くらいか

:コーラハイうまいよね。太るけど

:一年は持ちそうww


「確かにカロリーは心配だねー。お姉さんトクホのコーラは苦手だから普通のコーラで呑んでるんだけど、余計に心配」


:コーラ……つまり月賦を期待しても宜しいので?

:コーラを飲んだらゲップが出るのは確実じゃ!


「ふふふ。炭酸対策は抜かりないですよスタメンのみんな。ちゃんと指示は受けています。コーラはコーラでも炭酸はちゃんと抜いていますので。炭酸が抜けても美味しいよね、コークハイ」


:ほう、炭酸抜きコーラですか……たいしたものですね

:おつまみは特大タッパーのおじや、そしてバナナですか

:梅干しも添えてバランスがいい


「お、おじやとバナナ? よくわからないけど、おつまみはお金が出るまで我慢します」


:姫様はどれくらいの頻度でお酒のむの?


「お酒の頻度かー。お酒を呑むと出費がえぐいことになっちゃうから全然飲まないなー。月に一度あるかないかくらいです。嫌なことがあってストレス発散したり、逆に良いことがあったらご褒美に飲んだりするね」


:相当な酒豪とみた

:手合わせ願おう。自信あるよ

:ちょっと準備してこよう、コークハイ


「明日は平日だから、無理に付き合ったりせずマイペースに呑んでね。お酒は呑んでも呑まれるな、です。それじゃあ、お酒トークはこれくらいにして、そろそろ自己紹介にいくね。今日はよろしくお願いします」


:オッスよろしくゥ!

:対戦よろしくお願いします!

:わくわく

:べろんべろんのナティ姉に期待

 

・・・・・

・・・


 自己紹介はすぐに終わって、スタメンの皆さんとの雑談の時間となった。

 お酒は人の本性を暴く魔性の毒と聞いていたから、スタメンのみんなが本性を現して、つまらないとか退屈とか、そんなネガティブなコメントも覚悟していた。だけど、実際には否定的なコメントなんて全く無くて、みんな私のつたない配信を楽しんで見てくれている。これだけ落ち着いて話せているのは、やっぱり、最初のアクシデントが効いてるのだと思う。あの時リスナーのみんなが目いっぱい私を支えてくれたから、大丈夫なんだって、安心して喋っていいんだって分かった。

 暖かいな。楽しいな。

 こんなにいっぱいの人と関わりながらお酒を呑むって初めての経験だからどうなるかと心配していたけど、問題なかったみたいだね。

 おっと。


「お酒無くなっちゃった」


:おお かなり飲んだね姫さん

:同じペースで飲んでると思うけど、けっこう酔い来てる

:日本酒2合目~

:ナティ姉の癒しボイスでお酒が美味い

:こんな和やかな晩酌ひさしぶりですわ

:姫さん、大丈夫?


「はい、ほろ酔い気分で温まってきました。お姉さんはまだまだ平気です。

 少し休憩しましょう。おトイレ行って、おかわり持ってくるから、それまでお水でも飲んで休憩していてね」


:はーい!

:ん?

:え

:いまなんつった?

:「ペット」ボトルのおかわりだよね?

:いやいやいやいや

:オイオイオイ。死ぬわナティ姉

:もう死んでる ソースは設定 (幽霊)

:ちょっと水飲んで酔い覚ましてくる。

:耳の掃除しとくか……まさかね

:4リッターボトル買ってるって聞いた時から嫌な予感はしてたけど……

:お酒飲めない民だから参考に聞きたい。普通はどれくらいなの?

:↑ナティ姉の飲み方だと2杯くらいがたぶん普通ライン

:↑ウイスキーの700ミリボトル換算だと半分でも相当強い方

:え……

 

「おまたせー。おかわりの持ってきました!」


:!?!?!?

:おかわりの ウ イ ス キ ー

:はいパワーワードいただきましたァ!

:700ミリ2本目!?

:草すら生えねえ

:ナティ姉もYaーTaの一族でござったか……

:ナティ姉だけは信じていたのに……

:バケモノしか入れねえんだなヤタプロ

:ナティ姉、大丈夫!? 本当に大丈夫なの!?


「え? え? え? 何で驚かれてるの? 心配しなくても、まだほろ酔いくらいだよ?」


:ウイスキーを1本空けておいてほろ酔い……

:配信開始から1時間くらいだよな? このペースなら致死量じゃね?

:幽霊だからアルコールが効かないのか

:実はもう死んでる説

:もしかして、コーラと酒の割合って……


「コークハイの割合、どっちかどっちか言うの忘れてたね。コーラが1で、ウイスキーが3だよ。これ以上コーラを減らすと甘みが足りなくてちょっと飲みづらくなっちゃうんだよね。これが私の黄金比です」


:なぜ酒側を増やそうとするんだ……

:酒豪レース、そもそも階級が違ったでござるか

:ミニマム級とヘビー級よりも差がありそう

:アルコール度数30度近いか?

:もうロックじゃねえか

:そりゃコスパ気にするわ。金がいくらあっても足らねえ

:幻○郷にお住まいだったか……

:幽霊じゃなくて鬼や天狗か


「もしかして、いけない呑み方だった? お姉さん、誰かとお酒って全然呑んだことがなくて、ペースとか量が全然分からなかったんだけど……昨日ルルちゃんと呑みにいったとき、ルルちゃんもウイスキーひと瓶飲んでたから、それくらいみんな呑むものだと思っていたよ」


Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン:ちなみにあの夜だが、家に帰った記憶ねえんだ

Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン:奇跡的に二日酔いしなかったが 気が付いたら自宅の玄関でぶっ倒れてた

:団長!

:団長もよう見とる

:あのユーティリティープレイヤーの団長が……負けた!?

:団長も人の子だったか

:いや一晩でウイスキー1本も大概よ?

:ナティ姉が規格外なのか

:誰かと呑んだことない→地味に悲しすぎる一言


「ルルちゃん、倒れてたの!? ごめんね、お姉さん気づかなかった……でも今日お話ししたときは風邪ひいてないみたいだったから良かったよ」


Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン:ところで姫 さっきほろ酔いって言ってたよな? まだスタメンの皆に言ってない事があるんじゃないのか?

Luruna Ch.ルルーナ・フォーチュン:酒の量に関して訂正しておいたほうがいいぞ 一緒に呑んでいるスタメンの皆のためにも

 

「え。まあ、そうだね。あえて話すことでもないと思ったから話さなかったんだけど」


:嫌な予感がする

:聞きたくないけど、聞こうか

:俺、酒豪を名乗るのを止める覚悟できたわ

:俺はとっくにできてる

:はいそれじゃ、3、2、1、キュー


「酔いの調整用に配信前から瓶2本ぶん呑んで、さっき1本呑んだから、このウイスキー、4本目なんだ」



 


Natica Ch.帝星ナティカ

【こんどこそ初配信】お酒の力を借りて はじめまして!【帝星ナティカ/YaーTaプロ】

8880人が視聴中 チャンネル登録者数26.9万人

#帝の星より愛をこめて



 

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