36話 反省会


【YaーTa公式】反省会跡地【帝星ナティカ/紅焔アグニス/ルルーナ・フォーチュン】

9.1万人が視聴中 チャンネル登録者数26.1万人


:待機

:跡地ってなんだww まあ分かるけどww

:サムネにダークマター写ってんぞwww

:声聞こえない?

:なんか聞こえる


「――『こんみかどん』を推します」

「面白いけど、それは姫のキャラじゃないな。『こんひめ』は駄目か?」

「お姫様の人っていっぱいいるだろうから畏れおおいよ……せめて『こんナティカ』かなー」


:空耳じゃねえ!

:音量ちっちぇえ

:ミュート芸!

:待ちわびている途中だぞ!

:また敗北した待ちわびた兄さん


「やっぱりそこに落ち着くかー。そういやルルってどんなのなん?」

「実はまだしっかり考えてないんだ。挨拶にこだわらなくても俺は分かりやすいからな」

「挨拶って普通に『おはよう』『こんばんは』じゃだめなの?」

「それじゃあ完全に没個性だよ。Vtuber争乱時代にありきたりじゃ生き残れません。特別なオンリーワンを目指しましょう。

 それに挨拶はね。自分がこれから演じますよーって心のスイッチ代わりにもなるんだよ。だから思ったより大事なの」

「へー。アイドルのしきたりみたいなものだと思ってたよ」

「俺も社長に聞くまでは知らなかったんだよな」


:オフなのに配信と変わんねぇw

:ミュート芸だな

:仲いいなw

:いっそもう音量上げてくれー!


「まあろk――」

「お嬢」

「ん?」

「マイク乗ってる」

「ふぇ!?」「げぇっ!? マジで!?」

「なんだ、二人とも気づいてなかったのか。俺はてっきりVtuberの伝家の宝刀、ミュート芸だと思っていたぞ」

「初のコラボからそんな冒険せんわ!」

「え、え、いつから!? セットしたの私だ! ごめーんっ!」


:めっちゃ音乗ってたよー

:マジで気づいてなかったのか……団長以外

:団長確信犯ww

:いや天然だろwww

:あり得るw

:ナティ姉はいちいちリアクション可愛いな

:お嬢は解釈一致


「えーとえーと! イグニッショーン! YaーTaプロ1期生、紅焔アグニス、現世に顕現!」

「こ、こんナティカー。YaーTaプロダクション1期生の帝星ナティカです」

「しまった。そういや団員たちがどう返したらいいか話し合ってなかったな」

「ルルゥ!? そこは挨拶しよう!?」

「それもそうか。やあ、待たせたかな。YaーTaプロダクション1期生のルルーナ・フォーチュンだ」


:イグニッショーン!

:イグニッション!

:イグニション!

:やっぱり紅民つよし

:ちゃんと挨拶決めてたもん勝ちですね

:団長が一番シンプルやな

:団長マイペースwww

:ナティ姉は初々しさがよき

:今度の挨拶は叫ばなかった えらいぞ姫さん


「今日は反省会という名の雑談やフリートークを紅焔ちゃんとルルとナティ姉の三人でやっていこうと思いまーす! ――の予定だったんだけどね」

「もう今日は反省会無理じゃね?」

「アグちゃんは自分の発言に反省しなくちゃだよね」

「もうやっちゃう?」

「奇跡的にモノが揃っちまったし、三人揃って気が変わらないうちにやりたいな」

「ルルちゃん何でそんなに楽しそうなの……お姉さんちょっともう吐き気あるんだけど……」

「だって普通じゃなかなか味わえない食材だろ? 楽しみじゃねえか」

「まだ紅焔ちゃん心の準備できてないんですがそれは……」


:お、はやくもか!

:約束が果たされる時が来たな!

:もうコメントが既におめでとうまみれだもんなw

:フラグ建設家の末路

:団長ウキウキで可愛いw

:無知ゆえの無邪気さ

:まさか紅焔ちゃん日和ってるゥ!?

 

「えぇい畜生! やったるわい! コール行こうか! まずはナティ姉に! せーの!」

「「チャンネル登録者数25万人おめでとう!」」

「まだ何も動画が無いけど、頑張ります。これからよろしくね」


:頑張れー!

:ソロ配信大丈夫かな……

:初配信思い出してきてちょっと涙出た


「次はお姉さんから。せーのっ」

「「ルル (ルルちゃん)、チャンネル登録者数65万人おめでとう!」」

「ありがとう、団員の皆。これからも共に歩み続けてほしいぞ」


:一生お供しますぜ団長!

:逐一エモい女

:あと1万でルル (66万)だったんだが おしい

:65万人って、団長も十分すごいんだけどな……

:8時間100万の女には勝てなかったよ……

:28時間→8時間の20時間更新

:ガチでたまげたわ……

:ナティ姉の見守り配信で掲げたお嬢の公約がまさか現実になるとは

 

「最後は俺からだな。それじゃあ、せーの」

「「お嬢 (アグちゃん)、安価ペーヨンゴ焼きそば完食頑張ろう!」」

「うおぉい!? リハと違うじゃん! 最強に盛り上がるところだよ!?」

「よっしゃさっそく作っていこうぜ。お嬢、登録者数100万おめでとうな」

「100万人最速記録おめでとうアグちゃん。じゃあ調理用のカメラのセットするね。ふふっ」

「われ記録保持者ぞ!? タイトルホルダーなんですけど!? なんでそんな雑になれるの!? え、ちょっと、もしかして紅焔ちゃん嫌われてる!? リハのエモエモのエモな空気どこ行ったの!?」


:wwwwwww

:紅焔ちゃんガチのリアクションじゃねえかww

:一番の立役者を一番雑に扱う事務所がここにあります

:紅民の誰一人怒ってないww

:既に扱い方を心得ておる

:時々笑っちゃうナティ姉にほんわかする

:日本新記録樹立したのに……w

:世界よ、これが日本のYaーTaプロだ

:知らんのか? リハーサルは本番じゃないんだぜ、お嬢


「例のキャラメル、サルミアッキ、センブリ茶……うわあ、なんかすごい絵面……罰ゲーム食材オールスターじゃん……」

「用意した焼きそばは通常サイズ3つだね」

「通常試食用、アレンジ用、オリジナル用の3種類用だ。1つ目は普通に食べて元の味を楽しむ。2つ目は安価の食材を俺がどうにかアレンジして食べられる焼きそばを目指す。こちらは俺と姫がいただく手筈だ。3つ目はシンプルにミックスした味をお嬢が完食する」

「せめて挑戦するにして……逃げ場用意させて……」


:姫さんと団長は食う必要がなくない?


「ルルちゃんが食べてみたいんだって。でも、いくらルルちゃんでもつらいと思うし、お姉さんも話題作りに頑張ってみようかなって」


:やめろ その天使ムーブは俺に効く

:お嬢と俺たちの罪がどんどん重くなっていく

:普通にペーヨンゴ食うの?


「通常の試食は俺の希望だ。カップ麺とソース焼きそばは食べたことがなくてな。かの有名なペーヨンゴを食べられるからちょっと楽しみにしていたぞ。二人とも作り方の指南を頼む」


:そうか! 逐一忘れる記憶喪失

:3ヶ月じゃ食べてない可能性も十分あるわな

:カップ焼きそばどころかカップ麺そのものが初なのか

:普通はカップラーメンからだろうからレアケースよな。

:人生初のソース焼きそばとカップ麺配信……お嬢様かな?


「それから紅民の皆が指定した食材を味見してみるよ。この世界に生きる人間があえて不味い食べ物を作り出して商品化するなんて考えられん。任せろ。このコラボもしっかり成立させてやるさ」


:あ……

:フラグ立っちまった

:ちょっとずつ食べてね団長

:団長が食うのは予定外だった。まずいぞ……

:先に謝っておく 俺たちが悪かった


・・・・・

・・・


「おい紅焔アグニス。なぜこんな企画を実施した。言え」

「勝手にキレられても困るんですけど!?」

「が、頑張ったぁぁあ! 苦ぁぁああい! 甘いの食べたぁぁぁい!」

「結局不採用になった世界一甘い缶詰グラブジャムンならあるが」

「舌が壊れるから止めよう!」

 

:団長ブチギレwww

:呼び捨てww

:ずっと姫さんと無言でアレンジペーヨンゴ食ってたから相当キてたなw

:団長のアレンジをもってしてもダメだったか……

:意外に姫さん頑張ってたな

:頑張りやなんだよなぁ……

:姫さん案外声出るね

:二人とも完食オメ


「洗練の極みに至った人類の叡智に泥を塗りたくる悪魔の所業じゃねえか。お前には人の心が無いのか」

「冗談半分だったんだよー。実現するとは思えないじゃん」

「迂闊な公約は身を滅ぼす……お姉さん、学んだよ」 

「さ、次はお嬢だ。頑張れ」

「エチケット袋、用意してないからね」

「アイドルが食べ物を粗末にするなんて炎上待ったなしだもんな」

「ごめんね。運営さんの指示なんだ」

「普段優しい二人から冷たくされるとこんなに心がつらくなるんだね……」


:いよいよメーンイベントやな

:音量下げたよお嬢 叫びそうだし

:アイドルの配信でエチケット袋の話が出るとは思わなかった

:きた 御開帳

:開け冥府の扉


「げぇっ!?」

「うわ、黒……アグちゃん、本当にこれ食べるの?」

リコリス菓子サルミアッキやベジマイトの黒さか。サムネ詐欺にはならなかったな」

「顔が真っ青だよ? ちょっとだけならお姉さん手伝おうか?」

「い、いやいやいや! ナティ姉にこんなの食べさせられません! 紅焔ちゃん頑張るから、みんな見守ってくれ!」


:こんなのwww

:ナティ姉さん、どこまでも天使ムーブだな

:引くこと覚えていいよナティ姉……


「ペーヨンゴなら……日本の至宝ペーヨンゴなら、この世界連合にも負けない! 覚悟を決めたぞ紅民のみんな! 紅焔ちゃんの胃袋は鉄をも溶かす溶鉱炉! 火中でも栗は拾えるんだ! いただきます!」

 

:いったあああ!

:咀嚼音だけで胸がヒュンとするぞ

:お? むせないのか

:思ったよりいける?

:噛む動作が止まらないんだが

:表情が小刻みに震えてるぞ

:モデルが震えるほどの拒絶反応ww


「ぐぁぁぁあ……ぐゃがゃぁぁぁあぁあぁぁぁああああっっ!?!!!?!」


:うるせえww

:腹の底から絶叫しちょるw

:超神水飲んだ○空よりひでえwww

:一晩で100万登録達成したアイドルとは思えんww


「お嬢。感想は?」

「誰か私の味覚を殺してくれぇええええ!」


:胃袋は自慢のようだな。だが味覚はどうかな?

:お嬢の一人称すら吹っ飛ぶ衝撃ww

:短い付き合いだったなお嬢

:良いやつだったよ……知らんけど

:付き合い短いもんな俺ら

:紅焔アグニス先生の次回作にご期待ください!



 

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