#8
窓の向こうで数羽の鳩が飛んだ
黒板を見るふりをして その上の時計を視界に捉える
「あと十秒」 心の中でいつもの呪文を唱えると教科書を閉じた
教師の面倒くさそうな締めの言葉が耳から耳へとすり抜けていく
帰ったら新作のゲームをやり込む
楽しみが肥大していく ここには用はない
ここではない何処かに行きたい
自分ではない誰かになりたい
いつかでいいから何者かになりたい
あの人に愛して欲しい
カーテンを閉めたら椅子に腰掛ける
暗い室内にモニターの光だけが輝いている
夜の光源のようで何処か心が踊った
楽しみにしていたゲームが出来る喜びか 輝かしい光を目の前にした喜びか
今の僕には分からないが夢中でコントローラーを握る
自分の分身に見立てたアバターを操作してニンマリと微笑む
どれだけ自分を否定しても僕は僕でしか無い
いつまでも僕を生きていく
自分を更新することでしか幸せはやってこない
そんな説教を自分にして嫌気が差した
「手っ取り早く」 禁止ワードが心に浮かんだ午前一時
目を閉じたら夢の世界へと…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。