詩「誰もいない教会」
おもながゆりこ
第1話
聞いてくれる?
わたしのわがまま。
わたし、あなたと行きたい所があるの。
誰もいない教会。
そこで結婚式を挙げたいの。
そう、ふたりだけの結婚式。
タキシードなし。
ウエディングドレスなし。
参列者、牧師、聖歌隊、オルガニスト、式場担当者、いっさいなし。
共に腕を組み、バージンロードを進み、祭壇の前へ。
ベールアップなし、ブーケなし、讃美歌なし、指輪の交換なし。
あるのは誓いの言葉と、誓いのキスのみ。
お互い、家に帰れば家族がいる。
勿論、家族はたいせつ。
伴侶は運命の人だし、こどもも可愛い。
手放せないし、離れられない。
だけどわたしたち、お互いの事もたいせつ。
ふたりが恋人である事を、誰も知らない。
誰にも言えない。
言ってはいけない。
だからせめてふたりだけの結婚式を挙げたい。
行ってくれる?
誰もいない教会へ。
詩「誰もいない教会」 おもながゆりこ @omonaga
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