第4話義妹の同級生
「それで一昨日から義妹が居るってわけ」
同期の男性社員に昼食時に話をすると何かと羨ましがられてしまう。
もしかしたらそれが普通の反応だよなと思う僕の男性的な一面が首をもたげる。
目で、
「そうだよな?」
みたいな視線を送ると同期の彼は頷いて応えた。
それを見ていたであろう宮野彩はわざとらしく咳払いをした。
僕らは小声でその後も話を続けていくのであった。
昼食を終えた頃に僕とは全く関わりのない新入社員の女性に話しかけられるところから本日の出来事は始まろうとしていた。
「須藤さんですよね?」
突然話しかけられて不思議な顔をしていたのか相手の女性はクスッと笑った。
「ごめんなさい。硯の同級生で…連絡貰っていたので事情を知っていたんですよ。それで先程失礼ながら話が聞こえてきてしまい…」
なるほどと頷いていると彼女は自己紹介を始めた。
「遅れましたが今年入社した
美夢は軽く微笑むと少しだけ僕を試すような言葉を口にする。
それに何とも言えない表情を浮かべていると美夢は再びクスッと笑った。
「冗談ですよ。本気にしないでください。でも妹の方の話には真面目に付き合ってくださいね」
そんな意味深な言葉を口にされて少しだけ表情が歪んだ。
「それでは失礼します。また時間があったらお話付き合ってくださいね」
美夢はそれだけ言い残すと自分のデスクに向けて歩き出すのであった。
業務を終えると本日は何のイベントもなく帰路に着くこととなる。
彩は残業があるらしく忙しそうにパソコンとにらめっこしていた。
当然のように美夢は定時で帰宅していたし、さくらは仕事があるのだろう。
通知を受け取ることもなく帰路に着くと硯の方が先に帰宅していた。
「おかえり。美夢と話した?」
早速本日のネタバラシをされて戯けたような表情を浮かべるしか出来なかった。
「何か余計なこと言ってないよな?」
「余計なこと?」
「僕の評判を貶めるような発言」
「さぁね」
何とも言えないその言葉に苦々しい思いを抱くとスーツのジャケットを脱いでいく。
ハンガーにジャケットとネクタイを掛けるとソファに腰掛けた。
「何か余計なことは聞いてない?」
「余計なこと?」
「僕の評判を貶めるような発言」
「さぁね。って美夢がそんな発言するわけ無いじゃん。付き合い長い親友だよ?その兄の悪口言うわけ無いでしょ」
それに何度も頷いて応えるとそのままポケットの中を探った。
「ちょっと!私がいる間はタバコ吸わないでよ」
「はい?なんで?ベランダで吸うし硯に迷惑かけないだろ」
「もう匂いが嫌なの」
「そうですか…この匂いが好きって人もいたけど…」
「そんなの直樹に気があるだけで言っているだけでしょ?それか同じように喫煙者か」
バッチリと答えと思われる言葉を口に出されて僕は言い淀んでしまう。
「それでどれだけ居るつもりなの?」
「さぁね」
本日何度目かのその言葉を耳にして僕は明らかに分かるように深くため息をつく。
「幸せ逃げた〜」
硯は僕を煽るような発言をして笑って見せる。
「まったく…」
そんな一言を口にするとそのまま風呂場に向けて歩き出す。
スラックスと下着などを全て脱ぐと先にシャワーを浴びる。
全身をキレイに洗ってから入浴すると一週間の始めの日を乗り越えた自分を褒めてあげたい気分だった。
かったるい身体を湯船で揉みほぐすと少しの長風呂をして過ごした。
軽くウトウトしてきた頃にガラッと風呂場のドアが開いた。
「ちょっと!早く出てよ!私も入りたいんだけど!」
その言葉で意識を取り戻すと自分の行動を省みた。
(危なかった…今の件で硯の無礼は許そう…)
心のなかで硯に感謝を告げるとそのまま自室に向いベッドに潜り込むのであった。
その日の深夜に硯は部屋を訪れると無理矢理に僕を起こした。
「なに…?」
ベッド脇の時計を見ると深夜二時近くで完全に頭の中は不透明でぼやけていた。
「今度の休日は二人だけで過ごそう。聞いて欲しい話もあるし」
それに何とも言えない返事をして頷くともう一度眠りにつく。
この日のことを僕は後悔することになる。
もっと初めの段階から硯の変化に気付いていればよかったと思うのだが、それはまだ先の話なのであった。
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