無口無表情な彼女が可愛過ぎる!けど、暗躍する女の影が………

読書中毒者

二度目の恋は本物

 古び、ある意味趣すら感じさせる夕方の公園に一人の男が寂しく座っていた。


―そう、俺ね。


「……はぁ」 


 何度目とも分からない溜め息をつく。今の俺の顔は、多分クシャクシャで酷いものだろう。


 そんな男が一昔前の古びた公園のベンチで座る姿は、さぞかし滑稽だろうか。

でも世間体なんて、今は…どうでもいい。


 俺こと『荒木そうや』は、彼女にフラれた。『いい経験になりました、次は良い人と出会えたら良いですね』って感じで……ね。


 嘘告なのを知っていてマジになってしまった男をフッた。彼女からの認識はその程度だろう。

 だが、彼女には俺以前に付き合っているマッチョで金持ちでアソコがデカい彼氏がいたそうなので勝てるはずもなく。


 潔く手を引きました。……嘘です未練たらたら。

 正直学校行きたくない……元カノの親友二人が影で見守っていたから学校中に噂が広まるのも時間の問題だろう。


 だが、だ。正直、俺の顔は普通に整っているし、金もある優良物件で彼女だった子は普通に可愛い子。

 お互い好きでもないのに罰ゲームで付き合い始めたんだけどね……。


 でも、なんやかんや付き合う内に好きに成ってって公認カップルって言われる位に恋人してたんだ。

 決して間男に負けてないと思う(多分


 そして、付き合い始めて三ヶ月目の今日、放課後の屋上にてフラれた。


 サプライズで祝ってくれた誕生日パーティー、旅行デート、恋人らしいこと、全部、全部俺の独りよがりだったらしい。

 所詮3ヶ月と思った奴いるだろ?……だけど、イケナイ恋ってのは濃いのだよ。(俺は知らなかったが)



―あの楽しい日々は嘘だったのか。



―あの明るい笑顔は作り物だったのか



―どうやったらこの喪失感が消えるのだろうか。



―分からない、考えたくない



―でも、こんなに苦しくて涙が溢れてくるぐらいなら嘘告なんて受けるんじゃなかった。


―そう……『恋』なんか



いっその事、死んじゃえば楽になれるかな?


 今日はずっとこんな感じでボケ〜と空を見上げていた。いや、見上げることしか出来なかったんだ。涙が出そうになるもんだから。


 夕焼けに照らされた寂れ切った公園と同化するように、俺は感傷に浸るのであった。

心にあるのは、たった四文字……


―『死にた―

「ん…そう、や?」


 名前を呼ばれて振り向くと十二年の付き合いにもなる俺の幼馴染が立っていた。浅木氷華だ。


 氷華(ひょうか)は艶のある黒髪にボブカットの無機質な瞳を持つ、神が可愛さを凝縮して作ったかのような絶世の美少女だ。姉もいるんだけど……割愛しよう。

 特に注目すべきは彼女の制服、そうウチのではないのだ。いわゆるお金持ち校の制服である。


 何故違う高校って?ちょっとした自分のチキンな心が彼女といることを拒否したのだ!

…そうです、隣歩いてたら何時刺されるか気が気じゃないんです!(経験者デス!)


 べた褒めなのに恋愛感情ないの?ないない、こんな『装甲』だけクソ陰キャが他校の女神様と付き合うとか考えること『しか』出来なかったよ。


 でも……昔は純粋に好きだった。だけど頑張っても頑張っても自身を『その他一人』と同じ認識で思ってしまうと動けなかった。ただ、それだけ。


「っ、何でもない、ほっといてさっさと帰りなよ。もう夕方だし危ないよ?」

「…でも、そうや……苦し、そう」


 その無機質な瞳で心配そうに覗き込んでくる。コイツは何時もそうだ。やっと氷華に心配されない人間に成れたと思ってたのに。ホントに、こういう所が好きだったのかもな。


 好きな人にフラれた直後なのに他の女のこと考えるとか、俺ってホントに…クズだ…ん?んん?


「話して…………じゃないと、殺す」

「っ、氷華何言って…うっ」


 氷華が叩いたら折れそうな手で首をマジで締めて来た。有無を言わさぬ目で……でも死ぬのも良いかなって思ってしまった。


ただ、俺達は静寂の中でただ見つめ合った。


「……なん………で…」

「………………」


―こんなに優しくて大切にしてくれる人に殺されるってどれだけ最高の『死』だと思ったから?

―俺がクズだったから?

――全部に疲れてしまったから?


……んなわけねぇだろ。コイツの握力半端無いの!何か体痺れて抵抗出来ねぇし…マジで!


「……何で、抵抗しないの………このままだと本当に死んじゃうよ……ねぇ、私にぐらい話してよ!……そうやぁ」

「…………」


…しないんじゃねぇ、出来ねぇんだよ!


 首を締めときながら俺に罪悪感を与えるなんて氷華は酷いな。…そろそろ手離してくれないかな??


 数十秒の静寂をただ見つめ合う。だが、運動部に所属しているわけでもない俺にとっての首絞めは引き続き、絶大な効果をもたらしていた。


…ちょっとコレマジでヤバイって!死ぬ死ぬ死ぬ!的確に血管抑えてやがる!やっぱ生きる恐怖より死ぬ恐怖の方が大きいんですけど!遺言言えない!


「…もぅ、むりぃ……カヒュ………」

「あ、気絶した………縛ろ………」

(え?縛るって―――


 それからの話は早いもので拷問されながら聞かれるか、何もしてない状態話すのかの二択をせままれて全てを喋った。

 聞いているときの氷華の顔は苦肉と悲痛な顔でごっちゃごっちゃで俺のためにこんな表情をしてくれるのは正直嬉しかった。

 縛られてなかったらこんな微妙な雰囲気にもならなかったと思うんだがな。


 それから俺の傷心(同居)生活は始まった。

ん?許可?知らんが…親に無表情で放り込まれたよ…急に冷たくなるのなんなん?



―1日目


「……おはよ……(大好き)」

「氷華おはよ、何かあったのか?」

「…朝ご飯作ってた……食べて…(大好き)」

「お、おう(圧が…、)」


 氷華の言葉の語尾に大好きが引っ付いてたのは気の所為だろうか?うん、俺の頭が捉えたい方向に捉えてるだけだろう。


ー2日目


「………ん……」

「動きにくいから離れろって」

「……ヤ…」


 氷華の様子が明らかにおかしい。学校でも家でも、ずっと引っ付いて隣にくるのだ。これじゃあ惚れてしまうからホントに止めて欲しい。


 ………女の子、怖イ。



ー3日目


「……ん、私が……作った……弁当(大好き)」

「くれるのか?サンキューな!」

「……ん(好き)」


 親に氷華が通う学校に転校させられた為、氷華に腕組みを強制され、初日登校を果たしたのは恥ずかしさより嬉しさが勝っていた。←昨日の出来事

 

 余談だが、弁当の中身が全てハートマークだったのはお愛嬌と言うべきか。



―4日目


「ふぁ〜あ、ん?……腰、動かない?」

「………そう……や」

 

 朝起きると氷華が腰辺りで寝ていた。寝相が悪いのか徐々に危ない場所に迫って来たのにはある種の不安を覚えたものだ。


…テジャオサエラレナイ…キントレシナイト……、

オンナノココワイ。



一週間後(十一日目)


「そうや…好き………ヤろ?」


「ちょ、おい!喜嬉としてヤロうとすな!俺等高校生!……え?コン、ドームがある?……いや何処で買ったねん」

「……ん、通販……0.1mm、避妊は、したくないけど……」

 

 どうやら全て気の所為ではないらしい。あとスキンシップが激しさを増してきた。

……勿論何もなかったよ?


………ヤブレヤスイゴム………女ノ子コワイ。



一ヶ月後(三十一日目)


「……私の、部屋……入ったらダメ…」

「お、おう……

…でも俺のスマホ、部屋の中に持って行ってたよな……この際隠れて覗いてみよう…」


 女の子の部屋の中に入るのはヤベェ事だけど我がスマホの為に部屋に入ってみると、氷華の部屋全体に俺の写真が貼られていた。


「俺は何も見てない俺は何も見てない。よし!スマホは…この際どうでも良し!」


 扉を閉めてリビングに戻ろうとすると背後に妙な迫力を放つ氷華が立ちはだかっていた。


「ん…見た…ね?……おしおき、必要?」

「っ!…煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」


―一つ分かった事がある。

俺に一途な氷華マジ可愛い!


……女の子って最高だね!何で怖がってたんだろ!



――ー年後


 俺たちは高校三年生になった。

正直言おう、氷華可愛すぎ!3か月経った位からヤンデレみたいな行動が増え始めたんだけど、寧ろ可愛さしか勝たん!

 学校さえ一緒ならばどれだけ楽しいことか……

 

「ねぇ、……今…私の事考えてた?……子供作る?」


 まだ付き合って無いものの氷華は子供作る気満々らしく寝てる間に奪われたのはご愛嬌と言ったところか。…何を、とは言わんが。


「なぁ氷華、言いたい事があるんだ」


「ん、……何?」


 俺はこの一年間ずっと子供の頃好きだった女の子に攻められ続けた。(当時は諦めた)

いや、童貞貰われちゃったけどさ。


 だから、そろそろアノ出来事を思い出にして二人でゴールインしたいって思っちゃったんだ。だから言おう。こんな可愛い子他に取られたくないから。


―こんなに気楽?な関係壊したくない


――もう二度と彼女に振られたくない


―――恋人らしいことをもっとしたい



だけど、だからこそ


「氷華、結婚を前提に恋人になってください!」


「ん、……




…………イヤ……」





「え?」


 あはは、俺が告白するのが遅かったのかもしれない。カレコレ一年も待たせたんだから。もしかして他に男でも……いや、ないなぁ。


 氷華に男の影が俺以外無さすぎて納得いかん。

 

―『仕方がない』


 そんな一言で終われない程に好きになってしまった俺が…俺が悪かったんだ。不相応な感情抱くから……セ○クスまでしたのに……したよね?


―情けない、泣くな泣くな!

こんな酷い顔を見せるものか!

あぁ、ヤバイ目から水が出そう……


「迷惑……だったよな?忘れてくれ!だけど、これからも友達でいてくれたら嬉しいかもしれん!

ハハハ……ハハ」


さよなら2回目の恋。


久しぶり、3回目の失恋。


 足早に立ち去ろうとすると袖を引っ張られた。やめて欲しいよな期待してしまうじゃんか。


「…待って………前提じゃ足りないだけ」


「え?」


 ええ?今何て言いました?前提じゃ、足りない?ってことは!ってことは!


「……一生……だめ?…」









―――――――――――――――――――――――


(side:???)


 残念、残念。

気付いてないなんてホントバカ……種明かしは4年後…盛大にしてあげる。


貴方の横にいるべきは《氷華》じゃない…私。







―――――――――――――――――――――――

 最後までお読み頂きありがとうございます!


今回話に出て来た四人の女の子による恋愛知能戦…最後に彼の横に立っているのは誰か!


ヒントは《題名》です!

フフフ…コレで分かったら未来予知レベルだと思います!!多分百話で完結します!



 

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