第8話 『死神』の実態
『死神』ことフリストは頭を抱えていた。
どうしてこうなったああああああああああ!
「え、何?死神?誰が?」
「それはもちろん、
「そうだぜ!兄貴。俺たちはその『死神』様の誇り高き解放軍なのさ!」
はぁ?
一瞬、耳を疑った。おいおいおいおいおいおいおいおいおい!嫌だよ!意味分かんないよおおお!誰かああああああああ説明してええええええええ!
「いや、本当に何でそんな噂ができてるの?」
俺たちは本当に逆賊認定されてしまったのか?深い絶望感が俺を襲う。
今にも死にそうな表情をしている俺にヤスエは言う。
「何をいまさら、我らのしていることは貧民を救うことに他ならないが、見方を変えれば、王国貴族に牙を向けているのだぞ。」
いや、確かにだいぶ前から俺たちはテロリスト認定されていてもおかしくはないと思ってたけども。
ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ ヤバイ
どうする?このままだと本当に、追討軍が俺たちを討ちに来るんじゃないのか?
ちなみに俺たちがアジトとしているのは、かつて悪徳領主が治めていた領地である。
俺たちは領主館に住み着き、野宿生活から解放されたことと、領内の民から歓迎されてて、一日中寝てても、勝手に部下や村のおばちゃんや、気のいい漁師のおっちゃんが野菜や肉をくれるから、居心地が良くて長居してただけなんです!
王様!お願い!俺を殺しに来ないでえええええ!
俺はいよいよヤバイと思い、この村を出ようとした。
「領主様!どこいくんです?」
おい、誰だ?今、領主って言ったの?聞き間違いですよね?俺領主じゃないし。
「俺たちには兄貴が必要です!」
「私達の領主様はフリスト様しかおりません!」
嫌です!俺は領主じゃないんで、責任とりたくないです!
「我らは覚悟ならできています!最期まで、フリスト様にお仕えいたします。」
なんか、みんな目がマジなんだけど。
おいおいおいおい!この状況で逃げたら、絶対この人たちからも殺される!
ていうか、ここまで王様の心証悪くしたの、お前たちが原因だからな!
何か勝手に「隣村を開放してきました。」「○○村の領主が民を苦しめているので、ぶっ殺してきました。」「わかっております。我らは
皆、勝手に俺のことを深読みしすぎて、解放軍活動はりきりすぎているし、だいたい、事後報告だし、俺がすべて、知っていたと思い込んでるし。
俺は腹をくくるしかないのか?
ある夜、領主館の庭をうろうろしながら、考え込んでいると後ろから声がした。
「
「レイスか。」
彼女はまっすぐ俺を見つめこちらに近づいてくる。
「悩み事ですか?この私にもお話しください。」
この時の俺は誰でもよかったから、この不安を一人でかかえこみたくなかった。
気が付くと俺は、今までの事を正直に彼女に語っていた。
「大丈夫です。私がついております。それに王国と敵対する気がないことは
彼女は俺の手をやさしく握った。
俺はこの時、緊張の糸がゆるんだような感覚を覚えた。
冷静に考えてみると、もう後戻りはできないな。成り行きとはいえ、こうなってしまったんだ。
腹をくくろう。
でも、極力、追討軍は勘弁してほしい。
そんなことを考えていると、そのことを見透かしたかのように、レイスは言った。
「
ヴァーミリオン公国か。確かに、かの地に居座る異民族を討伐していけば、王国としても、俺たちの存在意義を認めるかもしれない。
案外、いい考えだな。
俺はレイスの話に賛同した。
「レイス。君の言う通り、セッラ帝国を公国領から撃退できれば、俺たちは王国の英雄になれるだろう。わかった。旧ヴァーミリオン公国の村々を奪還し、そこを中心に、俺たちの勢力を拡大していこう。」
「
「なぜ、泣いているんだ?」
感極まったレイスは急に俺に抱き着いてくる。
「我が故郷の無念をぜひ、はらしてください。」
「故郷?」
「申し遅れました。私の名はレイス・ヴァーミリオン。」
「レイス、君は家名持ちだったのか?ん?ヴァーミリオン?」
「はい。私はヴァーミリオン公国の生き残り。元第一公女のレイス・ヴァーミリオンです。」
「マジでええええええええ!?」
「私が
そうだな。なんか、すごいことになったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます