崩落(第9回 お題「育つ/育てる」)
女が身のうちで育てたモノらは、「行け」と命ずる女の口から暗闇の中へと飛び立った。
その姿は女の目にも映らず、そのはばたきは女の耳にも届かぬが、空気の振動で大群が行動していることを伝えてくる。それが徐々に遠ざかってゆく。
どれくらい経ってからであったか。
かすかに感じられた夜気のゆらぎが止まった。ソレらが「果て」へと至ったのだ。
女は息を詰め、気配の絶えた遠方へと目を遣る。闇のただなかにひとり立つよるべなさが、ひたひたと女をひたしてゆく。
どれくらい経ってからであったか。
がりがりと鋼が鋼を削るような音が幾重にも重なり、響き渡る。
闇におびただしい亀裂が走り、玻璃のような音を立てて砕けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます