紫陽花ドロップと林檎のコンポート
溟が熱を出して2日前位からずっと寝込んでいる。
徐々に熱は下がってきているものの、まだかかりそうだった。いつもあっちこっち出歩いては面白いものを持って帰って来る溟がベッドの上で真っ白い顔して眠る姿を見ていると、何だか心がざわついて落ち着かなかった。鉱物の仕入れで世界中飛び回る程行動力のある溟だけど体は人一倍弱い。そのくせ無理をしてあちこち行くのだから見ていられない。看病する僕の身にもなってくれ。淡く痛む頭を押さえながら冷蔵庫の中からタッパーを取り出して開ける。
溟が体調を崩す前に作った林檎のコンポート。林檎の皮で色をつけたので全体が淡くピンク色に染まっていて綺麗だ。飾りのついた青硝子の器へバニラアイスを出し、その隣へ林檎のコンポートを乗せる。戸棚の中から小瓶を取り出し中身を振りかけた。カラコロと小さな音を立てて雫型の淡い水色の結晶が降り注ぐ。紫陽花ドロップと呼ばれるもので、よくお菓子の色付けに使われる砂糖で出来た結晶だ。純度の高いものに熱取りの効果があるのは薬を扱う人位しか知らない。
溟か僕が具合を崩すと紫陽花ドロップを使ったお菓子を作る。今回はずっと「冷たいものが食べたい」と言い続けているのでアイスに直接乗せてみた。自分の分も手早く作って溟の元へ持って行って二人で食べる。ずっと苦しそうな顔をしていた溟が久しぶりに笑顔を見せてくれたので、内心とても嬉しかった。
その後3日ほどかけて復活した溟は、新種の鉱物が出たという町へ行くため家を飛び出していった。出来ればもっと自分の体を大事にして欲しいのだけど、そうやってあっちこっち飛び回り土産をどっさり持って帰って来る溟が好きなので強く言えないのであった。
フロウライト・シティ 猫市 @blue_labo
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