第24話
演習場に集められた一年生はそれぞれ手のひらに火と水を出す魔法に取り組んでいた。
「出るは出るけど小さいなぁ…」
手のひらにゆらゆらとろうそくに灯る火ほどの炎が揺らめく。
水は出現できても重力に逆らえずにそのまま垂れ流されていた。
実験をするかのように皆、魔法を練習する。彼らはこの学園が脅威にさらされていることはまだ知らない。その恐怖にさらされたとき、彼らはどう思うだろうか?
皆の努力する姿を見ながらも、誠は同じような魔法に取り組む。自分への課題は二つの属性を連続で発動できるようになること。例えば、炎から水への移行はイメージしたものが違うのでそれぞれ想像するため
手から放つことも考慮するとなると更に工程が複雑化してしまう。故にここまでの想像を一工程として頭に思い込ませることでテンプレートを引き出すかのように簡単にできるようになるのが当面の目標だ。
「テンプレートを作るに当たって、まずは2つの工程を一つとみなして発動するんだ。そこに連続発射の状態も想像する」
華蓮先生に見てもらい、一度やってみる。
「はあああああ!」
炎が手から放たれたところで、次が発動しない。一秒のタイムラグの後水が放たれた。それぞれの威力自体は申し分ない。火炎放射に水の噴射が出た。
「私はこんな小細工じみたことは好きじゃないな。それぞれのものを強くしたほうがよくないか?」
華蓮先生はそう言いながら、自慢の炎を出現させ壁を破壊した。彼女は紅蓮の華蓮と言われており、とにかく燃やす魔法を得意とする魔法師で有名だった。魔法師同士の戦いでたった一人で100人の魔法師を紅蓮に葬ったという都市伝説まである。
それ故に部隊に所属は難しく、常に孤高であるというのも有名な話である。
「威力を強くすればするほどその分消耗します。一発でかいの打ってあと動けないじゃ意味ないでしょ。どこのラノベかよ」
「魔法力を上げりゃいいだけだろ。勝手に限界を決めるな」
先生は肩に軽くポンッとたたき、他の生徒の指導に行った。
「……」
魔法師同士の戦いがあるかもしれないっていうときに、長期的な努力は後々手遅れになる可能性がある。であれば、付け焼き刃でも有効な魔法のアレンジで対抗するのは間違いなんだろうか?
やり始めたことは、簡単に諦めたりはできないと思い続けることにした。
……………………………。
……………。
……。
結局、魔法力が切れ授業が終わってしまった。
魔法世界に憧れて 小椋鉄平 @ogura-teppei
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