魔法世界に憧れて

小椋鉄平

第1話 魔法に憧れて

 魔法……それに憧れたのは幼い頃からだ。きっかけは、おぼろげだが誰かに助けてもらったんだ。もしかしたらそれは夢だったのかもしれない。それほどまでにおぼろげな記憶だ……。ただ、悪い奴らを魔法のごとく瞬時に倒していく光景だけが何故か鮮明に覚えている。相手にも触れていないのに数メートル後方に吹き飛ばしたり、脂汗をかかせている光景を。俺もあんなふうになれたらと思って幼少の頃を過ごした。多分、戦隊モノを見ていたのも影響されていると今になって思う。


 しかし、そんなものがこの世界にはないと近頃は受け入れ始めている。高校の頃までは疑って信じず…そのせいで友達はオタクしかできなかった。


 そして今、何故か窮地に立たされている。


「はっ…はっ…は……」


 とにかく逃げる、逃げる……。


「こっちに行ったぞ、見失うな!」


 集団の怒号がこだまする。このままではヤバイ……。

 走ったことによる汗と、冷や汗が混じり気持ち悪さが増す。


 角を曲がった……が、そこは行き止まりの路地だった。とっさに戻ろうとするが、追いつかれてしまい出口を塞がれる。


「鬼ごっこもおしまいだ……。ったく、てこずらせやがって」


 ジリジリと距離を詰めてくる。俺は、手が届かない距離を取るべく後退する……が壁に背中がぶつかりこれ以上後ろに下がれなくなった。


「くっ……」


 汗は止まらない。せめてもの抵抗に黒ずくめの男を睨む。息が上がる。鼓動がうるさく鳴り響く。


「ただ見たってだけで殺さなきゃいけねぇのはいけすかねぇんだが、俺も掟には逆らえねぇ…恨むなよ」


 黒ずくめの男が拳を振り上げる。その時に見えた腕は筋肉隆々だった。

 腕が振り下ろされた瞬間、身構えた。


 その後のことは……本当のところは分からないとしか言いようがない…。

 なぜかというと………。


 転生してたからだ。さらに、事前説明もなしだ。

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