第03話 忙しい日々

 カーテンが閉められ、明かりのついていない室内、俺の目の前には二人の人物がいた。


「始まったか……」


「そうですね、最後の時がついに」


 とりあえず電気をつけてカーテンを開くと、真っ赤な夕日が沈んでいくのが見える。


「それで織ねぇと椿姫は電気もつけないで何やってるの?」


「なんとなく、終末感を出してみようと思っただけだよ」


「それより怜ちゃんおかえり、今だったの?」


「ただいま戻りました、学院長への報告は咲夜さんが向かって、他の子は先に寮に戻ってもらったから」


「みんな怪我とかなかった?」


「大丈夫でしたよ、織ねぇの方は大丈夫だったの?」


「私も椿姫もそうそう怪我しないからね、怪我してもすぐ治っちゃうし」


「うんうん、ボクも頑丈だからね」


 その返事を聞きながら休憩室へ一度入り、人数分と咲夜さんの茶碗を用意してお茶を入れて戻る。


「怜ちゃんありがとう、はぁー怜ちゃんのお茶を飲むと落ち着くねー」


「そんなこと言っても何も出ませんからね」


「いや、ほんとほんと、4年前じゃあ考えられなかったよね、こうも女の子らしくなっちゃってさ」


 胸のあたりを見てくるのでとっさに隠す。その行動自体が面白かったのか笑われた。


「それを言うなら、織ねぇは全然変わらないよね」


「怜ちゃん……それを言ったらおしまいだと思うんだけど」


 立ち上がり追いかけてくるので逃げる。


「怒ることないじゃない、本当のこと言っただけだよ」


「余計悪いわーーー」


 織ねぇの身長やその他諸々は多分小学生の時から余り変わってないんじゃないかな? うわっと追いつかれて捕まってしまった。


「怜ちゃん覚悟しなさい」


「やーめーてー」


 めちゃくちゃくすぐられた、笑いすぎて顔が痛い。


「うふあはくふぅあははは、やめ、やめて、ごめ、ごめんさない」


「いやー、それにしても本当に育ったね、これもぎ取って私にほしいくらいだよね」


「本当にやめい、揉むなー」


 ガラガラと扉が開く音がしてそちらに目をやると、驚愕に目を見開いている咲夜さんが立っていた。


「詩織さん、それに怜、二人はそういう仲だったのね」


「えっ,ちが、ちがうから、咲夜さんちがいますから、ほら織ねぇ降りて、重たいから」


「れ・い・ちゃ・ん、女の子に重たいって酷いと思うよ」


 扉を締めて遠ざかっていく足音が聞こえて焦る。


「今はそんなこと言いから、咲夜さん追いかけないと」


「はいはい、行ってらしゃい、片付けはしておくからそのまま寮に戻りなさい」


「織ねぇお願い、椿姫もまたね」


 急いで生徒会室から飛び出すと目の前に立っていた人物の胸に顔がぶつかった。顔をあげると咲夜さんが立っていた。


「あれ? 咲夜さん?」


「そんなに焦らなくても、詩織さんのおふざけだってわかってるわよ」


「あはははは、なんだか怜ちゃん疲れてそうだったから少し気分転換させて上げただけだよ。さっきも言ったように片付けはやっておくから戻っていいよ」


「それでは詩織さん、椿姫お疲れさま、ほら怜呆けてないで行くわよ、怒ってないからね」


「あ、はい」


 咲夜さんに手を引かれながら寮までの道を歩く。秋口になり夕方にもなると少し肌寒くなってきている。


「あの、報告ありがとうございます」


「いいのよ」


「それとさっきのは」


「詩織さんのおふざけでしょ、あなたの焦った顔可愛かったわよ、それに詩織さんのおかげか少し顔色も良くなったみたいね」


「そう、ですか?」


 自分の顔をペタペタ触ってみるても、あたり前だけどわからない。


「さてとご飯を食べてからお風呂に行きましょうか」


「そうですね、お腹がすきました」


 そのまま手を繋いぎ寮に戻り食堂へ向かう、食堂も終わる時間も近いので食堂にはあまりひとは残っていない。調理の人にすぐ作れるものをお願いして作ってもらう。


「「いただきます」」


 出てきたのは野菜炒めとご飯にとん汁だった。食料に関してだけど外からもちゃんと入ってきているのだけど、やはりその量は減ってきているみたい。それを見越してか、学院内でも色々と作っているようだ。


 その辺りは関わりがないので余りわからないのだけど、初めて学院に来た頃にはなかったビニールハウスが立っているのを見かけた。聞いた話にはなるのだけど、学院生も手伝ったりしている子もいるのだとか。


「ごちそうさま」


 先に食べ終わった咲夜さんが食器を返しに行く。俺も急いで残りを食べ終えて後を追う。食堂の職員にお礼を言って部屋に戻り着替えを用意する。お互いに頭と背中を洗いあって湯船に浸かる。


「はぁー、やっと疲れが取れる気がしますね」


「そうねそれにしても今回は大変だったわね」


「本当にそうですね、ゆっくりお風呂に入る暇もなかったですからね」


「朱天さんは大丈夫、どこで休んだままみたいだけど」


「えーっと、朱天大丈夫?」


 呼びかけると依代から全裸の姿で朱天が出てきてお風呂に浸かる。


「心配をかけたかの、わしは大丈夫じゃぞ」


 あ”ーという感じの声を出しながら体を伸ばしている。


「私に攻撃する手段がないから朱天にばかり負担が行ってて」


「気にするでない、元々わしはそういう気質だからの、問題はない」


「それにしてもこれが大厄災の影響ってやつなんだね」


「そうだの、わしの知るものよりも規模が大きくなっているようだがの」


「本当にこれからどうなっちゃうんだろうね」


「さての、こうなってしまってはわしにも想像できないでの、やれることをやるしか無いの」


「まあそうだね」


 俺の出来ることなんて結局結界を張ってみんなを守ることしか出来ない。それならそれを突き詰めていくしか無い。


 お風呂の暖かさに包まれてなんだか眠くなってきた。それを見た咲夜さんが「怜、眠いなら出ましょうか」と言う声を聞いてお風呂から上がった。

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