第08話 お買い物のその先へ

 神樹しんじゅ女学院の入学式まであと5日前になった、3日後には家を出て学院の寮に入る予定だ、未だに学院がどの辺りにあるのかは教えてもらっていない。


 あの顔見せの後、家に帰ってきてから今日までが俺にとっては地獄の日々だった。女性としての立ち振舞や言葉使いから始まりスキンケアやお肌の手入れ、そしてお風呂でのあれこれをみっちり望姉さん(ボロを出さないように普段からそう言う様に言われた)に矯正という名の調きょ……指導を受けた。


 最後なんて逆に楽しくなってきたわ、ちゃんと手入れすると日に日に髪はつやつやのさらさらになるし、朝と晩に化粧水と乳液を使う事で肌触りが良くなったし、鏡を見てついつい自分に見とれてしまったが俺は悪くないと思う。ちなみに化粧はまだ早いのと学院内でやっても意味ないからと言われた、べ、別に興味ないから残念とか思ってないからな。


 他には日課として毎朝ランニングするようになった、色々な舞をするのに体力が必要との事なので体力作りとしてやっている。今は舞を教えている余裕が無いとの事で夏季休暇で帰省した時に教えてくれるみたいだ、取り敢えず学院に行っても朝のランニングは続けようと思う。


 そうそう、数日前にちゃんと入学試験を受けた、学院まで行って受けたわけではなく都内の貸し会議室で受ける事になった。俺以外にも数十人試験を受けているようだったけど、後になって教えられたけど大厄災関係で急遽編入することになった子達も一緒に試験を受ける事になったらしい。この体になってから地頭が良くなったのかすんなり合格ラインは突破したようだ、今の所それがこの体になってから一番良かった事じゃないだろうか。


 後は学院から制服一式と指輪が2個送られてきた、指輪の見た目は普通の丸みを帯び物で何の変哲も……有りまくる物だった。この指輪がすごく不気味で意味不明なのだ、嵌める指の太さに合わせてサイズが変わるとか一体何で出来ているんだろう。


「多分魔術師とか錬金術師が関わってるんじゃない?今までその指輪で指が壊死したとか切る事になったとか聞いた事無いし、そんな危ないの送ってこないから大丈夫でしょ」


 なんて頼もしいお言葉を頂いた、むしろ不安が増しただけだったけど。

 

 次に制服だけど色は黒で前開きタイプのジャンパースカートになっていてその上から白いボレロを着るようになっている、左胸には樹木の枝葉のように見える刺繍がされたエンブレムが付けられている。望姉さんが言うには、高等部になれば黒いセーラーワンピースの制服になるみたいだ。

 

 一度着てみたが少し子供っぽくもあるがかなり可愛いと思った、姿見の前でスカートをちょこんと摘みくるりと一回転している姿を望姉さんに見られて「怜ちゃんかーわいー」とからかわれたのは言うまでもないだろう、自分でも顔が真っ赤になっているのがわかるくらい頬に熱を感じた。


 指輪に関しては望姉さんに聞いてみた、1個は右手の薬指に嵌めて神気を貯める触媒として使っておくように言われ、もう1個は取り敢えず紐を通して首に下げておけば良いらしい。この時学院から指輪が送られて来た意味を少しでも疑問に思って、望姉さんにちゃんと聞いておけばよかったと後に後悔する事になるのだが、この時の俺には思いつきもしなかった。


 そして今日はこれから母さんと望姉さんとお買い物に行くことになっている。タクシーで駅前の大型デパートと銀行に行く予定だ。父さんは朝から出かけているようで今日は家に居ないようだ。


 今日の俺の服装だけど望姉さんの大量のお下がりからチョイスした結果、青色のコットンシャツにデニムパンツとなっている。望姉さんはもっとお洒落なの着ればいいのにと言ってくるが、まだ自分から着るのには抵抗がある、スカート系とか足元がなんか心許ないんだよな。一方望姉さんは水色のワンピースの上から紺色のカーディガン姿だ、相変わらず望姉さんはワンピースが好きみたいだ。


 タクシーが家の前に着たので乗り込み移動する、道は混んでいなかったのか30分程で目的地の駅前に到着。


 まずは銀行ヘ向かい俺が学院で使う通帳とカードを作るとの事だ、学院は寮生活だし食事もタダとは聞いているが何故それが必要かというと、学院の敷地内に商店街やショッピングモールがあるらしいのだ。どういう店舗があるかは現地でのお楽しみと言われて教えてもらえなかったが、俺が使う結構お高めのシャンプーやボディーソープなどそこで購入できるとの事だ。


 少しの待ちが合ったが比較的早く作り終えた、そのまま電子口座を作りそちらには口座に入金されている額の半分を移動させた。金額は驚きの3桁万円である中学生にこんな額渡すとかどうなんだろうな、母さんも望姉さんも当り前のような反応だけど良いのだろうか。俺としても無駄遣いする気はないので特に反論などはしなかったけど、足りなくなったら言いなさいとかうちの家の金銭感覚どうなってるのか少し心配になった。


 電子口座で思い出したが、俺は数日前に念願のスマホを手に入れたのだ。まだ入っている番号は身内しか居ないんだけどね、今は使い方を少しずつ覚えている所だ。普通のスマホや携帯電話だと、学院内では限られた場所でだけ外部との通信通話が可能なようになっているみたいだけど、俺の渡されたスマホはその制限が無いらしいのだ、普通のスマホでも学院の敷地内同士なら通信通話両方出来るみたいだけど。


 理事と学院長が身内にいる特権なのだと思うが、何かあれば望姉さんを存分に頼ろうと思う。そんなわけで、スマホと電子口座を連動させて銀行での用事は終わり。


 俺の用事は銀行で終わったけどお昼までまだ時間があると言う事で、母さんと望姉さんのショッピングに付き合う事に。望姉さんいわくこの時期はセールとか殆どやってないので、買うなら7月が良いよと助言を頂いた、その助言が生かされる事はないと思うけどな。


 なんか疲れたしそろそろ帰ろうかと俺が言った所で、母さんと望姉さんに左右から腕を捕まれどこかの宇宙人さながらある場所に連れて行かれることになった。


「さあ怜ちゃん今日のメインにしてラストの仕上げをするからね逃さないわよ」


「そうだよ怜ここからが本番よ、可愛いの選んであげるからね」


 すごく不穏な気配を感じ逃げようと思ったけど、すでに両腕を掴まれていて無理だった。そして俺が連れて行かれた場所は……俺にとっては魔王城さながらのお店が鎮座している場所だった。

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