第2話 王命結晶
俺が転生してしまったこの世界、ミストロードはロード三部作と呼ばれるアクションRPGの一作目であり。
そこに登場するNPCのソルドーはその後の二作品にも登場する、ロードシリーズの重要キャラだ。
ソルドーは登場する作品とストーリーの進行度によって身に着けている武具が変化していくため、俺は自身が所持する武具を確認する事で。
ここが一作目、ミストロードの世界であり。
なおかつ今がまだ本編の開始前、もしくは開始直後だろうと当たりをつけた。
もともと俺はアニメやライトノベルを主食に生きていたので自分の置かれた状況を確認し、かつて遊んだことのあるゲームの世界に転生してしまったのだという結論に至るまでそう時間はかからなかった。
騎士として心身ともに鍛えられたソルドーの肉体に精神が引っぱられているのか、息を吸うように命のやり取りを行わなければならない世界に来てしまったことや自身が既に”人ではなくなってしまっている”ことにもそこまで動揺する事はなかった。
俺が何故ソルドーになってしまったのか、どうしてミストロードの世界に転生してしまったのか。
そこが最大の謎なのだが、それを自分の頭で考えてみたところで何も分からないので俺は一先ずソルドーとして生きることを受け入れ。
その上で、今後の活動…その方針を定めるために自身が持っている前世の記憶…ミストロードというゲームの情報を思い出しながら整理していくことにした。
(まず初めに、ミストロード…この物語のあらすじからおさらいしておくか)
物語の舞台となる大陸、アインタロスにはかつて十二の王国があった。
この十二の王国は干支をモチーフに作られており、竜人族であるソルドーは辰をもとにした竜王国の生まれである。
ある時。
海の向こうから、人を狂わせ怪物へと変質させてしまう恐ろしき厄災。
大陸の北東から上陸し広がり続けるこの冥府の霧を、大いなる犠牲を払い十二王国の賢者が築きし魔法障壁で押し留め封じた時には、既に
残された四つの王国その長たちは、ごく稀にだが壊嵐霧に耐性をもつ者がいることから霧に沈んだ王国内にまだ正気を保ち救助を待つ生存者がいるかもしれないと考え。
壊嵐霧に耐性をもつ者の中から選ばれし者たち、即ち勇者に、魔法障壁を越え壊嵐霧に呑まれし八つの王国を巡る任を与えた。
その際、勇者である彼ら彼女らには生存者の救出の他にもう一つ。
最重要かつ極秘の任務が与えられることになる。
それは各王国の長が持つ”王命結晶”の確保。
アインタロス大陸の命そのものとまで言われている十二の王命結晶は、正しき王の元に無くてはならない。
勇者たちは八つの王国を巡り、王の安否を確認し。
王が未だ正しき王であるのなら救い。
もしも、王が怪物へと堕ちていたのなら殺さなくてはならない。
王命結晶をその身に宿す、新たな王を迎えるために。
(…とはいえ)
俺は
八つの王国、その長たちが既に正気を失い怪物と化していることも勿論知っている。
つまりは、王国の長たる八人の王がこのミストロードの大ボスであり。
ストーリーをクリアする上で避けては通れない敵なのだ。
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