第3話 新たな能力

ゴオオオオオ・・・・


ペルー村が燃え盛る…。

私は魔女マベルに阿鼻叫喚な世界を見せられていた。


「あははははッ!みてみてトランヴェル!人間って本当に無様ね!」

魔女マベルはご満悦のようだ…。


「平和に馴染みすぎて最悪の事態に対応することができない愚かな生き物…それが人間。

安全で平和な世界が仇となって何も対抗することができない哀れな人間ども…滑稽ね」


村は火の海になり、多くの人々が次々と倒れていった…。

私はこの光景を見ていて正気でいられなくなった。


「ほらほらあそこの人間見て見て!」


魔女マベルが指さしたその先には子連れの家族3人と1人の青年が魔物に襲われていた。


青年は不幸にも魔物に足を掴まれた!


「助けてくれええええ」


青年は子供を掴み、助けを乞う…。


「お父さん!お母さん‼」


子供は必死に両親に助けを求める。


「離れろ!この糞野郎!」


父親は青年の手を蹴飛ばし、青年の手から子供を解放した。

そして彼は子供を抱えて逃げていった。


「待ってくれ…あ」


倒れ込んだ青年は魔物に頭から食されてしまった…。


「フフフ面白い…所詮さあ…命に関われば簡単に他者を切るんだよねえ…ホント日常では馴れ合いごっこしているくせにさ…いざとなれば簡単に蹴落とすんだよ人間って…オモシロ~」


魔女マベルの顔は愉悦と共に如何わしい歪んだ感情を露呈していた。


「あはははは…面白い…面白い…ほら…あそこも」


そこには一人の少女と一人の男性が魔物に襲われていた。


「くるなああああああ!」


男性は悲鳴を上げながら必死に魔物から逃げていたが、

それも虚しく、魔物に腕を喰いちぎられた。


「あ…ぐあああああああ」


魔物は男性の首をひっかき、男性の頭が宙に飛んでいった…。


(むごい…)


私はもう見ていられず、目まいと吐き気が堪らない…。

魔物は男性の遺体を一口でたらい上げ、次に少女に襲い掛かる。


「いやだ…誰か!」


魔物は少女にとびかかり、少女の腹を引き裂いた…。


「あ…」


少女は裂かれたお腹を抱え、その場で倒れ込み…祈りをささげ始めた。


「どうか…神のご加護を…」


「あはははははははは!」


魔女マベルは高らかに嘲笑う。


「馬鹿だねえ…あの小娘。実体のないものに助けを乞うてどうする…?あれはもう現実を逃避している。何としても生きなくてはならない場面で現実逃避してるんだ…滑稽だねえ…」


(何が滑稽なんだ…)


私は魔女マベルの反吐の出る言動にかなり嫌気がさし、怒り心頭になった…。


(こいつはペルー村の人々が襲われるところを見て楽しんでやがる…。まるでドラマやアニメを見るかのように…こいつにとってこの惨状はその程度のものでしかないというのか…)


(私は倒したい…この魔女を…この手で!)


<フィイイン…>


(!?)


突然、何の前触れもなく頭痛が私を襲う。


(し……死ぬ…!)


あまりの激痛に私は気を失いかけた……!


<パンッ……>


私の頭の中で何かが弾けた音がした。

音と共に目の前が真っ暗になった……。


(何も見えない……)


辺りは何も見えず真っ暗だ……。


「やあ」


私の背後からいきなり声がした!

私はゾクッとなり、冷や汗をかいた…。


(誰だ…?)


「僕は"ベルチカ"よろしく」


背後から聞こえる声……

やたら幼い…子供だろうか?

謎の声は再び私に語り掛ける。


「君落ちてきちゃったんだね…ようこそようこそ。

ここは君が待ち望んでいた最高の楽園!」


(最高の…楽園?)


「君がここまで来たってことはそろそろ第二ステップに移行したってことだねッ!OKOK!早速君に次の役割を与えてあげるよ!」


(第二ステップ…?何のことだ…!?)


「君の力を一つ解放させるねッ」


<フィイイイイン>


(…なんだ!?)


私の脳裏に複雑な数式が浮かび上がる!


(この数式…どこかで…)


多くの数式が交差し、私の頭は数列で黒一色に覆われた…。

そして暫くすると、一点の小さな光が見えてくる…。


(…そうかこの光…これ…数式の答えか………)


<フィイイイイイン>


私は理解した。この数式を。

いや学習させられたというべきか…。


「どうどう気分は?どうどうこの新しいプログラムは?

面白いでしょ!この新たな"インプット"!」


(……)


「君のその"新たな力"でこの世界を大きく変えることができる」


(なんだ……私は一体何をされたんだ……!?)


「君に新しい"知恵"と"技能"を与えたんだよ」


(……知恵と技能?これが!?)


「そう!君に新しい能力を付与したんだよ!」


『人間を魔女に変貌させる力』


(人間を……魔女だと?)

(何を言っている!?)


「何って……君はもう既に"理解"しているはず」


(!?)


突然、私の頭の中に浮かび上がる……人間を魔女にする方法が…!


(これはなんだ……私に何をした!?)


「僕はただ君の願いを叶えてあげようと力を与えただけだよ」

「倒したいのでしょ?魔女をさ」

「君が誰かを魔女にして、その魔女を使って"本物"の魔女を倒しに行くんだ」

「ほらどう?面白そうだろ?」


(……)


私はあまりにも唐突な出来事に理解がついていない……。


「人間が魔女を倒すのはほぼ不可能……だから人間を魔女にして戦わせるんだよ!」

「目には目を……魔女には魔女を!ってね」


「ただね……すぐ人間を魔女にできたら面白くないでしょう?」

「だからある程度条件をつけさせてもらったよ」


(……条件?)


「そう条件!大丈夫!そこまで難しいものじゃないから!!」


「条件は全部で3つ!」


ベルチカはつらつらと条件を述べていった。

私は何が何やらわからないまま話を聞くしかなかった……。

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