腹ペコ天使さんとお腹を満たすだけっ。

白野さーど

第1話 天使が空から落ちてきたっ。

「今日……サボろっかな……」


 飯田いいだ梨久りくは、朝の日差しが照らす通学路を歩いていた。


 一人暮らしを始めて、一ヶ月と十日。


 高校生活が始まって、一ヶ月。


 時間が過ぎるのは早いものだ。


「はぁ……」


 どうして、こんな朝からため息をこぼしているのかというと、それは…――




 ………………………………………………………………………………。




(あ……あれ?)


 瞬きをすると、視界が一瞬にして真っ暗闇に包まれた。


 いや、正確には、なにかが急に上から落ちてきて、地面に倒されたと言った方がいいだろう。


 ……って、今はそんなことを考えている場合じゃないだろ!?


(どうなっているんだ、これ……!? 息が……く、苦しい……っ)


 なにが起きたのわからず、体をバタつかせていると、




「あ、んっ……」




 どこからか聴こえてくる、喘ぎ声のような色っぽい声。


 ん……? 今のは…――


 モミっ。


 な、なんだ、これ……?


 顔を覆い尽くす、大きくて……柔らかくて……温かくて……そして、どこか安心する物体は……。


 それに、なんだかいい匂いがする……。


 いつまでも触っていたい……っ。


(…………ハッ!)


 今の要素から考えられるもの、そんなの……一つしかない!!


 ま、まさか……っ!


「んっ、んん~っ! あれ……ここは、どこ……え」


 大きくて柔らかい物体がゆっくり顔から離れると、周りをキョロキョロしてから、下に目を向けた。


 それによって、目と目が……合ってしまった。


「あははは……。えーっと……」


 傍から見れば、地面に倒れた男の上に馬乗りになって、“大きなあれ”を触られている女性の構図ができあがっていた。


「あ、ああ……ああああっ……」


 口を大きく開けてこっちを見ている、謎の……


(き、綺麗……っ)


 神秘的な淡い光を纏う彼女に、俺は目を奪われた……。


 黄金こがね色に輝く金髪ロングの髪と、見る者を惹きつけるその美貌。


 ふと頭に浮かんだのは…――――――天使、だった。


 そのイメージにぴったりな白を基調とした装いは、これでもかと言わんばかりに“あれ”を強調していて……


(で、デカい……)


 つい妄想の世界に足を入れたくなるが、彼女に見つめられていると、そんなことをしようとはならなかった。


「えっと……あなたは…――」


 謎の美女が呟くと、


「まぁ~こんな朝から、大胆ねぇ~」

「若いっていいわねぇ~」


 と、近所で有名なお喋りおばさん二人がこっちを見ながら、なにやら喋っていた。


 ま、まずい……。


「違いますっ! これは――」

「「ふふふっ。ごゆっくり~」」


 そう言い残して、お喋りおばさん二人は去っていった。


 お、終わった……。


 昼過ぎには、この辺り一帯に知れ渡ることだろう。


「はぁ……。やっぱり、学校に行こうなんて考えなければ――」


 ――むにゅっ。


「あ」

「…………っ」


 胸を揉まれて顔を俯かせた謎の金髪美女は、段々とその頬を赤く染めていく。


 こ、これは……所謂、ラッキースケベ…――




「いっ、いやぁあああああああーーーーーーッ!!!!!」




 バチィィィンンン!!!!!


「ぐぅぅうはぁ……っ!!」


 そこで俺の意識は、途切れたの……だった……。

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