小学校
パリの小学校にマーリアちゃんといっしょに入学した。
空里も、もう2つくらいになったから
「あやめっち、いってらっしゃ~い」
って言って、玄関先で手をふってくれている。
ボクのママはフランス人で、ボクもフランス語もわかるから、小学校でもマーリアちゃんと同じ普通クラスに入った。
フランスの小学校のフランス語のレベルは高い。
1年生で、もう完全にフランス語で文章を読んでいく。
文字の段階は、すでに幼稚園で終わっていて、小学校で、物語を読む。
パリの小学校でも、ママやパパのフランス人ではない子どもたち向けの特別クラスもあるみたい。
そのクラスでは、最初から、フランス語の文字の成り立ちとかから、授業を進めてくれるみたい。
ボクはマーリアちゃんといっしょに普通にパリの小学校に通いはじめた。
小学校初日にマーリアちゃんといっしょに小学校に手をつないで仲良く向かっていた。
そしたらマーリアちゃんは
「あっ!あやめっちと同じクラスになるみたい...」
って言ってる。
「えーっ!なんで、わかるのーっ?」
「えっとね...同じ教室にあやめっちといっしょにいる映像とか、同じクラスの名簿に、あやめっちとわたしの名前載ってるのとか、先生に2人とも呼ばれているとか...そんなこと、今ふと見えちゃった...」
「えーっ!マーリアちゃんすごいーっ」
「えへへ」
「じゃあ先生の名前わかる~?」
「う~んとねぇ...」
しばらくマーリアちゃんは考えてた。
「ヴァネちゃん...」
「ヴァネちゃん?」
「ヴァネっち...」
「ヴァネっち?」
「あっ、ヴァネッサ先生みたい...」
「ヴァネッサ先生なのか~」
小学校に着いたら、やっぱり同じクラスだ。
そしてヴァネッサ先生っていう可愛い女の先生だ。
最初はみんなで自己紹介をした。
ボクは
「ママはフランス人、パパはアメリカ人。2人とも日本好きなので日本に留学していて、日本語もぺらぺらです」
って言ってから
「こんにちは~!よろしくね~」
って日本語で言ってみた。
「わははは」
って、みんなから、結構うけてた。
ボクは教室でも女子のほうの席に座っている。
マーリアちゃんの、ちょうどうしろの席になった。
マーリアちゃんと、いつでもしゃべれて、ちょうど良い~。
「やったあああ」
マーリアちゃんを時々、うしろから
「こちょこちょ、こちょこちょ」
って、くすぐっている。
ママはピアノ大好き。
だからボクも、日曜日にママに連れられて、ピアノ教室に行った。
まわりみんな女の子だ。
ボクくらいか、もう少しお姉さんか、もうちょっとちっちゃい子か...
初日に行ったら、教室にズラーッとピアノ並んであって、ボクも、そのうちの1つに座った。
ピアノの先生は、最初、ピアノの説明や、音の出し方や、どういうふうに音は並んでいるかとかを教えてくれた。
ボクにとっては初日だったけど、まわりの女の子の何人かは、もうすでに何回かは習ってるみたいで、初めてピアノに触っているボクのことを応援してくれているのを感じていた。
「ありがとうっ!」
って、その女の子たちに向かって思いながら、先生の言うとおりにピアノを弾いていった。
ママも、ボクのピアノを弾いてるところを嬉しそうに見ている。
それから家にもピアノ届いた。
だから毎日、家でもピアノの練習をしている。
ボクもピアノ大好き。
だから毎週日曜日にピアノ教室に通っているのも、めっちゃ楽しみだし、家で毎日ピアノに触って練習するのも面白い。
家では空里にピアノを弾いて聞かせている。
ボクの弾いてる時に、空里も、ボクの横に座って、いっしょにピアノに触って音を出している。
日曜日のある日、ピアノ教室でピアノを弾いていたら、優しく見守ってくれてる、さよりんの存在を感じた。
ピアノの先生は、毎回めっちゃきびしいんだけど、それは、あくまでもピアノに対してきびしいのだから、ボクは、そんなきびしい先生も好きだった。
先生は、ボクの指使いにも、ビシビシきびしく言ってくれてる。
まわりの女の子もみんな応援してくれている。
そんな時に、うしろで、そっとボクの弾いてるのを見守ってくれてる、さよりんを感じた。
弾きながら
「あっ!さよりんだっ!さよりん見に来てくれてるっ!」
って思った。
だから、普段よりも、もっと安心しながらピアノを弾けた。
たぶん、まわりの他の女の子や先生には、さよりんの存在はわかっていないと思うけど。
でもボクには
「さよりん来てくれてるなっ!」
っていうの、わかった!
ボクのちょうど前に座ってる女の子は、いつもボクのことを応援してくれている。先生に言われて1人づつ弾く時にも、ボクの弾いている間、ちょっとうしろを向いて、ボクの弾いてるところを見ていてくれてる。
その子には、なんとなく、さよりんの存在も見えてるのかもなあ~って思ったりもしたけど、特に、その子と、さよりんの話はしていない。
なんとなく、うしろを向いてボクの弾いてるところを見てくれてる時に、うしろで見守ってくれてる、さよりんのことも見えてるんじゃないかなって感じのすることもある。
その女の子は、ボクよりちょっとお姉さんみたいなので、さよりんと同じくらいなのかもしれない。
さよりんは、しばらくボクの練習しているところをうしろから優しく見守ってくれているけど、終わる頃にはフッと存在を感じなくなってしまう。
「ああ、帰って行ったのかなあ~」
って思う。
小学校のヴァネッサ先生は、校庭でも、みんなといっしょによく遊んでくれる先生だ。
だから大好き。
校庭に2つの大きな渦巻きを描いて、2チームにわかれて、1人づつスタート地点から出発する。そして、両者のぶつかったところで、ジャンケンをして、勝った子は進み、負けたチームは、またスタート地点から次の子、出発する。そして、相手チームに、より多く攻め入ったほうのチームの勝利となるゲーム。
みんなといっしょに参加できるから良い。めっちゃ盛り上がる!
みんなと近くの公園まで遊びに行ったりもする。
色とりどりの花の咲いてる公園で
「ドリャーッ」
って言って、ヴァネッサ先生に抱きつく。
マーリアちゃんも
「ウォリャーッ」
って言って、先生に抱きついている。
芝生の上で寝っ転がって、先生といっしょにゴロンゴロンしている。
先生とみんなでオルセー美術館にも行った。
学芸員のお姉さんとも館内で会った。
「あーっ!マーリアちゃんとあやめっち!久しぶりーっ!」
って、また声をかけてくれた。
「2人とも、もう小学生になったのー?」
って聞いてきた。
「そうだよ~」
「同じクラスだよ~」
「そう!良かったねー」
マーリアちゃんといっしょに、また「ヴィーナス誕生」の絵のところに行って、しばらく2人で、じーっと、ヴィーナスさんをながめていた。
そしたら、また、さよりんの存在を感じた。
横で、またボクたちといっしょに絵を見ているさよりんを。
今日は姿は見えないけども、なんとなくボクには、ボクの目を通して、さよりんもいっしょに絵を見ているような、そんな感覚を感じていた。
どういうことかと言うと、さよりんは、ここで今、実際にボクたちといっしょに絵を見ているのではなくて、ロンドンにいるんだけど、さよりんには、ボクの今、見てる絵の画像を頭の中で感じているような、そんな感じだ。
だから、今、さよりんもロンドンで、ボクたちといっしょに、この絵を見てるんだな~っていう感覚。
マーリアちゃんも、そんなボクのことを見て
「うんっ!うんっ!」
って、うなづいていたから、マーリアちゃんも、やっぱり同じことを感じているのかなあ~って思った。
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