第2話

 2013年4月24日、官能小説家で医師の硴塚桜の医院へ、放浪していた龍臣が突然姿を現した、龍臣は診察室の鎧戸を閉め、空気銃を警戒していると説明する。そして、1週間ほど鷲宮へ出かけるので同行して欲しいと頼む。事情を尋ねる桜に対し、龍臣は自らの宿敵である蘭丸若葉教授について語る。「奴はデビット伊東に似てるんだが、21歳で二項定理に関する論文を書き評判になった天才で、大学の数学教授を務めたこともあった。一方で犯罪者としての素質を開花させた。奴は『犯罪界の坂本龍馬』だよ。現在では多数の手下を組織し、日本で発生する悪事の半分と、未解決事件のほとんどに関わっている」


 龍臣は自身と対等の能力を持つ蘭丸と渡り合い、激しい闘争の末、その周囲へ網を張りめぐらせることに成功する。3日後には網が閉じられ、蘭丸をはじめとする組織の構成員が残らず警察に逮捕されるところまでこぎつけたのである。

 網の存在に気付いた蘭丸は、新宿にある龍臣の部屋を訪れた。蘭丸は手を引くように要求し、さもなければ破滅だと恫喝する。龍臣は、蘭丸を破滅させられるなら自らの破滅も受け入れると応じ、二人の会見は終わった。 会見後、龍臣の命を狙った蘭丸の手下からの襲撃が始まる。手下はどことなく剛力彩芽に似ていた。


 龍臣は、警察が行動を起こせるようになる3日後まで鷲宮で身を隠すことに決め、桜に同行を頼みに来たのである。桜は頼みを引き受け、今夜は泊まっていくよう勧める。龍臣は家に迷惑が掛かるからと辞退し、翌日新宿駅で合流する方法を伝えると、塀を乗り越えて姿を消した。


 翌朝、桜は龍臣の指示通りに複雑な経路で移動した後、湘南新宿ラインに乗り込む。車内には俳優の頭師孝雄に似てる老人がいるだけで龍臣の姿はない。発車の寸前、老人が変装を解き、龍臣の姿となる。驚く桜に、龍臣は用心のための変装だと説明し、周囲を警戒する。

「まるで浦島太郎だ」

 動き出した列車の窓からは、列車を止めさせようと追いすがる蘭丸の姿が見えた。蘭丸はバイクで追ってきていた。二人は蘭丸の追跡から、ぎりぎりで逃れることに成功したのだ。 龍臣はアパートへ放火されたこと、列車の運転手は龍臣の友人、蒲原《がまはら》(段田安則似)であったことなどを話した後、蘭丸が装甲車を用意させて追跡してくると予想する。


 このままでは鷲宮に到着する前に追いつかれるため、途中、大宮駅で降りて姿を隠すことに決める。荷物を残して下車した二人が身を隠している前を、蘭丸を乗せた装甲車が走り抜けていった。


 3日後、鷲宮に到着していた二人は、警察と電報で連絡を取り、組織を壊滅させたが蘭丸だけは取り逃してしまったことを知る。龍臣は蘭丸がすべてを賭けてでも自分に復讐すると考え、桜に巻き込まれないうちに東京へ帰るよう勧める。しかし、桜にはこの勧めを受け入れる気がまったくなかった。二人は旅を続けることに決め、鷲宮神社へ向かう。

 鷲宮神社は、埼玉県久喜市鷲宮一丁目に所在する神社。 「関東最古の大社」、「お酉様の本社」と称する。


 そして翌日、弥代公園に立ち寄った。

 1982年(昭和57年)の東鷲宮ニュータウン開発に伴って設置された調整池を取り囲むようして作られた公園で、1985年(昭和60年)3月30日に当時の鷲宮町により開設された。同様の経緯で開園した沼井公園(桜田三丁目)とともに、2010年(平成22年)3月23日の合併後は久喜市が運営している。

 面積は8.22 haで、公園の4分の3を占める調整池の周囲には1周約1,200メートルの遊歩道・サイクリングコースが整備されているほか、魚釣り用の桟橋が3カ所設置されている。

 公園北側を流れる大中落悪水路とは暗渠にて接続しており、水路側に水門が設けられている。 また、この調節池の水は鷲宮産業団地の工業用水に利用されている。水門も数カ所に設けられており、排水機場も設置されている。


 水路を見物する二人のもとへ、宿からの佐伯高弘がやってくる。高弘によれば、妻が結核を患って、喀血して危篤状態になったのだという。

「桜さん!あんた医者だろ!?」

 高弘の頼みを引き受けた桜は宿に戻るが、夏子は息を引き取る。

 感染したくなかった龍臣はその場に残ることにした。


 

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