拝啓、目を覚ましたら見知らぬ世界にいました。

青冬夏

プロローグ

 一

 

 ふわぁ・・・・・・。

 目覚ましを止めて、私は学校に行く支度をする。

 私は小川楓。

 四月から高校に入学し、これからキッラキラの高校生活に送ろうとしている女子高生!

 これからどんな生活が待っているのか、私はそんなことを毎日思いながら高校生活を送っています!

 「行ってきまーす!」

 私は家の奥に聞こえるよう、声を大きくしてから家を出る。

 ふんふん。

 鼻歌を鳴らしながら、私は道端を歩く。

 「おはよう!」

 「やっほ! 調子はどうだい?」

 私は幼馴染みである、山咲綾に話しかける。

 彼女とは小学校、中学校と同じで、超がつくほどの親友。

 容姿は私より優れており、道を歩く度に男子の視線が集中するほど。

 「良いよぉ~。ってかさ、楓ってほんと、朝から元気だよね」

 「いぇす! いつも元気じゃないと、私は張り切れないからね!」

 私たちは他愛のない会話をしつつ、学校に向かうと、ある光景を目撃する。

 「おーい。何やってんだよ」

 「ほら、金出せよ」

 不良グループがいわゆる、陰キャを襲って金をせびろうとしている。

 「うわ、出た。大体学校にいるよね、ああいうグループ」

 綾が小声で私に囁くと、不良グループがこちらに絡んでくる。

 「お、嬢ちゃん。可愛いじゃねぇか。どうだ? 連絡先、交換しねぇか?」

 金髪の男が綾に連む。

 「何やってんの? 早く行きなさいよ」

 「あ? 君には用ないっつーの」

 悪態をつかれ、私は思わず舌打ちをする。

 (・・・・・・綾より超絶イケてる美貌なのになんでだよ)

 そう思っていると、「おい」と校門の方から声がした。

 そちらへ振り向くと、そこにいたのは〝ザ・イケメン〟って言う感じの男子高生がいた。鼻は高く、目がキリッとしている。

 (まさしく、私のドタイプだぁ~!)

 私は心の中でガッツポーズをしていると、その男子高生は不良グループに近づく。

 「この娘が可哀想じゃねぇか。良いから、あっち行けよ」

 「チッ。じゃあな、小娘」

 金髪の男がイケメンくん(私が勝手につけた)に悪態をつけ、他の人と一緒に校舎内に消える。

 「大丈夫だったかい?」

 彼は振り向き、優しく声を掛ける。

 「は、はい! だ、大丈夫です」

 「そうかい」

 彼が立ち去ろうとした瞬間、綾は彼の制服の端を握る。

 「・・・・・・どうしたんだい?」

 彼が不思議そうに綾を見つめる。

 (・・・・・・ちょっと待って、いきなり告白⁉ え? え?)

 私はこの状況(少女漫画にありそうな)をじっと観察をしていると、綾が意を決したのか、男の目をじっと見る。

 「あ、あの。わ、私と付き合ってくれますでしょうか!」

 (うわ。出た。四月に高校生デビューして、いきなり男に告白。まじないわ~)

 私は綾に内心引いていると、男は「うん。良いよ」と言う。

 (オッケー出すんかい‼)

 内心ツッコんでいると、綾に不思議そうに見つめられる。

 「どうしたの? そんな、変顔して」

 (へ、変顔・・・・・・! しまった・・・・・・! つい顔に!)

 「な、何でもないよ! ほ、ほら、急がないと間に合わなくなっちゃうよ!」

 心の中を悟られないよう、私はズカズカと歩く。

 (あ、焦る・・・・・・。親友が四月から付き合うなんて・・・・・・。わ、私も、彼氏、つくらないと)

 そう、私はこちらへ歩いてくる二人を見て思った。

 

 二

 

 放課後のチャイムが鳴ると、皆が一斉に教室を出始める。

 「楓~。一緒に帰ろ~」

 そう綾が私に話しかけると、「良いよ~」と言う。

 「ねぇ、なんでいきなり告ったの?」

 「いや、それは~・・・・・・」

 綾がモジモジしていると、「分かった! 一目惚れだ!」と私は声を大きくして言う。

 「ちょっと! あんまりでかい声で言わないでよ!」

 彼女が恥ずかしそうにして言うと、私はぐふふ、と笑いをこぼす。

 (ふっふっふ・・・・・・。いくら親友であれ、私は新学期初めから付き合うカップルを許さんぞ・・・・・・。見とけ・・・・・・、私の、妬みを・・・・・・!)

 「楓? どうかした?」

 「ギクッ」

 心の内がこぼれていたのか、それとも、読まれていたのか、綾は私に心配そうに見つめる。

 「い、いや、決して、君たちの関係を壊そうなんて~・・・・・・。あ、あははは」

 綾に睨まれると、私はそそくさと教室を出る。

 駅前のカフェ。

 高校生活と言えば、やっぱり、放課後に友達とカフェで一段落をするのが定番でしょ! という私たちの(謎の)掟でカフェを訪れた。

 外観、内装と共に昭和レトロ感が満載であり、SNS映えしそうな雰囲気であった。

 「あちっ」

 私は猫舌なので、あまり熱い物を飲めることが出来ず、いつもホットコーヒーにストローをさして飲むというのが、私流の飲み方。

 (って言うか、私は年中ホットコーヒーを飲む女でもある)

 「そう言えばさ、綾ってもう部活とか決めたの?」

 メロンソーダーを飲む綾に聞く。

 「うーん。まだかな~。候補はあるんだけど」

 「例えば?」

 「サッカー部のマネージャーとか?」

 「おお、なんで?」

 「いや、なんとなく」

 「まさか、彼氏?」

 私がそう言うと、綾が飲み物でむせる。

 「あ、そうなんだ」

 「ち、違うし! なんだか、楽しそうだなって」

 「でも、まだ見学会やってないじゃない」

 私にそう言われ、綾は赤くなった頬を膨らませる。

 そんなかんやで、私たちはカフェで他愛のない会話をして、過ごした。

 「ただいま~」

 私は家の奥の人に聞こえるよう言い、直行で二階にある自室へと上がる。

 ドアを閉め、鞄を置く。

 (なんで彼女つくるのよ! 一学期に!)

 私はベッドに倒れ込み、うつ伏せになる。

 何度か布団を叩いて、あのライバルに怒りをぶつけていると、突然眠気が襲ってくる。

 ふわぁ・・・・・・。

 眠。

 どうしてだろ。

 昨夜、ちゃんと八時間も寝たはずなのに。

 どうしてだろ。

 うん。

 これは、きっと。

 疲れているんだな、私。

 あんな光景を見て、精神的に疲れているんだな。

 うん。

 よし、寝よう。

 私は目を瞑り、夢の世界へと入った。

 

 ◇

 

 ――ヒヒーン!

 うん? 馬?

 私は目を覚ますと、そこに広がった光景は、なんとーー。

草木が生い茂る草原だった。

私は驚きを隠せず、「え⁉ どういうこと⁉」と声に出してしまう。

 「やぁ、やっと起きたかい?」

 そこにいたのは。

 綺麗な鼻筋に。

 目がキリッとしていて。

 服装が、まるでどこかの王子様の服装の、男がいた。

 「・・・・・・うわぁ!」

 (ここ、一体どこなの~‼)

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