ロールエンドロール

遠野リツカ

ロールエンドロール

 本日はお集まり頂き、誠に有難う御座います。


 では、早速ですがわたくしの作品を彩って下さった出演者の方々を紹介致します。


 まずは、○○県立A高等学校の皆様。

 彼らは「複数の高性能爆弾が仕掛けられた校舎に閉じ込められた学生」を演じて下さいました!

 現役の高校生というフレッシュさ、そして柔らかい心を持つ思春期の少年少女らしい恐怖する表情がとても魅力的でしたね。


 B大学附属中学校3学年の皆様。

「修学旅行にて移動中のバスがジャックされ、横転し渡っていた橋からジャック犯諸共落下」というシーンに出演して下さいました。

 まだ変声期只中の少年の掠れた叫び声、少女の悲鳴。大変心地良いハーモニーでした!


 動画配信サービスにて配信者として活動されていたC様、D様。

 彼女たちは「SNSを投稿する度、そして生配信を行う度に何度も書き込まれる過激なアンチコメントによって精神を蝕まれ、配信中に自殺してしまう」という難しい役どころを熱演して下さいました!

 新しく動画が投稿される度に濃くなっていく目元のクマ、傷んでいく髪、噛んだ跡が残る爪、カサカサに乾燥していく肌、皮を剥いたのか血の滲む唇……。

 彼女たちの役への入り込み様は素晴らしかったですね! 役作りの為に美しいお顔、身体を傷つけるなんて!


 E様、F様、G様、その他五名。合わせて八名のメンバーからなるH大学登山愛好倶楽部の皆様。

 彼らは何者かによって登山道から蹴り落とされ、崖下まで転がり落ちるという役を身体を張って演じて下さいました!

 助けを求めて傷だらけの身体で必死に崖を登ろうとする様、寒さに凍える様、恐怖から涙が止まらない様……。「人は死に瀕した際どの様な行動を取るのか」がよく分かりましたね! とてもリアリティのある演技でした!


 えー、そして、私の実の両親。

 彼らは虐待していた子どもに、それまでの鬱憤を晴らす——いえ、その様な生温いものではありませんね。復讐の為に上半身を数十回に渡って刺され死亡する、という役を演じて下さいました。

 こちらの御二方は私が生まれる前から作品に携わって下さいました。…………いえ、彼らがいたからこそ私の作品制作が始まった、と言うべきでしょうか。

 

 父親は幼い頃から多くの方を傷付けてきました。

 幼稚園では周りの園児や先生方、他の家の保護者にまで石を投げたり固い表紙の絵本で何度も殴ったり……。その度に彼の両親……私の祖父母は頭を下げてきました。祖父母は、「今は幼く物事の分別が付いていないから、成長するに連れこういったことは無くなるに違いない」と信じていました。

 しかしその様なことはなく。小学校、中学校、高等学校に進学しても彼は周りを傷付けることを辞めませんでした。詳細な内容は長くなってしまうので省きますが、端的に言うと「いじめ」を何度も繰り返していました。

 そして大学へ進学、アルバイトを始めると勤務先の後輩へのハラスメントを行い、その方を鬱病にさせてしまったそうです。


 母親は、私が生まれるまでは至って普通の人間だったそうです。しかし、父親と出会ってから一変してしまいました。

 二人はアルバイト先で出会いました。ああ、父親が鬱病にさせた後輩の方ではありませんよ!

 なんと吃驚、父親は母親を洗脳し「自分の言うことは絶対、自分以外に優先すべきもの等無い」と思い込ませてしまったのです! この様なことがあるのかと皆様お思いでしょう? 実の子である私も勿論そう思っていましたが、事実なのです。

 父親は、母親が自分から離れない様にと妊娠させました。

 そして二人は自分たちが勝手に作り出したにも関わらず、その子どもに暴力を振るい続けました。

 機嫌を損ねたら家から出す、食事をさせない、風呂に入らせないは当たり前。身の回りにある様々なもので身体の至る所を殴る。散髪代が勿体無いからと家で髪を切るが態と耳朶も切る。水風呂に沈められる。ドラマで観た誘拐のシーンを真似て口をガムテープで塞ぎ手足を縄で縛った状態のまま数日放置。今挙げたこと以外にも色々なことをされましたね……。「ごうもん」という言葉の意味を幼いながらに知りました、良い経験ですね!


 二人は……悪役と呼ぶべき役を誰に言われずとも演じて下さいました。

 彼らの狂気は自らの家族にまで向けられたのです。

 この様な親の元に生まれてしまったから、その子どもは…………ぼくは………………!


 ………………ああ、申し訳御座いません! まだ紹介しなければならない人物がいましたね。


 最も重要で必要不可欠な役——主演は僭越ながら私が務めさせて頂きました!


 お一人お一人の名前を出すことが出来ないのが残念です……なにしろ余りにも出演者の方々が多いので私自身皆様の御名前を把握出来ておりませんで…………。

 ニュース等では一部の方しか御名前が公表されていませんでしたから。


 

 えー、では、最後に私から出演者の皆様へ、感謝の言葉を述べたいと思います。





 














 

 

 


 これからの皆様の益々のご活躍を…………、……ああ! 失礼致しました。私としたことが……。皆様はもう、この世にはいらっしゃらないのでしたね!

 では言葉を改めまして……。


 心より、皆様のご冥福をお祈り致します!



 只今紹介致しました方々は、ほんの一部に過ぎません。

 エンドロールに載る登場人物はこれから先もっともっと増えていきます。そして私の人生という名の作品を更に華やかに飾って下さることでしょう!




 ——私の命が尽きるその日まで!



 

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