第9話

痛い、全身が痛い。だけど体はまだ動く。いや、動かさないといけない。鼎先輩を助けるんだ!あの時優しく抱きしめて、自分を受け止めてくれた先輩を!

「なめんな、ガキが!」

1人の男はナイフを取り出し、僕の胸を狙う。

「ふっ」

それを体を曲げてかわしていく。そして、カウンターのパンチ!

「ぐはっ」

「後6人、とカエデさん。覚悟はいいですね?」

「ふざけやがってー!お前ら、あれを使え!」

「了解です、お嬢!」

男たちは懐から拳銃を取り出す。そして一斉にこちらに向けて発砲する。

、、、今なら読める、この銃弾の軌道が。相手の目線や体の動きから狙いが分かる。僕は体を捻ったりしながら全ての弾丸を避け、男たちを全員無力化した。

「そ、そんなバカな。こんなはずじゃ、、、」

カエデさんは逃げて行ってしまった。

僕は戦いを終えると鼎先輩を拘束から解く。先輩は涙ぐんでいた。

「ぐす、ありがとう、烈火。ボロボロになっても、またこうして私を助けてくれるんだね」

「え、またって、、」

「うん、もう烈火は覚えてないかもしれないけどね、っていうか病院に行こ?傷だらけじゃん、、、」

「そ、そうですね、そうしましょう」

僕は鼎先輩に連れられ、大学病院で治療を受けることになった。全身の骨が折れ、2ヶ月は大人しく入院しろと言われてしまった。


入院中、テレビでこんなニュースを見た。明星透、本名輝良透は数々の罪で逮捕され、カエデさんは少年院に送られた。乃木さんたち警察の活躍により、事態は終幕へと向かって行った。まさか、照と光の父親って、、、


「おはよ、烈火」

「あ、おはようございます、来てくれたんですね先輩」

「うん、お見舞いにリンゴでも、って思ってね。ついでに昔話でも聞いてよ」

鼎先輩は語り出す。

「あるところに小学生の女の子がいました。その子は父親と2人暮らしで母親はいませんでした。ある日女の子は母親が自分を産んですぐ死んでしまい、死因が自分にあると知り、『人に合わせる顔がない』という言葉をそのまま受け止めて、頭に紙袋をかぶって生活していました。ですがそんな彼女はイジメの格好の標的となってしまいました。ですが体育館の隅でいじめられていた彼女を助けたのは自分より年下の男の子でした。彼は女の子の頭の紙袋を取り、言いました。『こんなにかわいいのにもったいないよ!』と。それからの彼女は紙袋を外し、人が変わったように社交的な少女へと成長していくのでした。おーしまい!」

「、、、まさか、それって、、、」

幼い僕は、いいことをするとその都度二水夫婦に報告し、その度に激昂されたため、その時の記憶が抜け落ちていたのだろう。

「烈火は私にとって大事な人なの。それは分かってくれる?」

「はい!僕も鼎先輩が大事です!」

先輩は頬を赤らめ、「うん!」と言った。


入院中は、乃木さん、山田さん、照や光、翔さんまでもがお見舞いに来てくれた。輝良姉弟はどこかせいせいした表情だった。明星透ほか多数の事務所職員の逮捕により、自動的に翔さんは事務所の代表となった。話によると、鼎先輩を新たなスターライトのメンバーにしたいらしい。尚、僕のプロデュースの話は先送りになるのだった。

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