第3話
後日、僕は鼎先輩と共に、翔さんの事務所に向かった。
「ようこそ!我が事務所へ!と言っても僕もここに所属する人間であってトップじゃないんだけどね」
翔さんに出迎えられ、僕たちは一つの部屋に向かう。その道中、、、
「あ、あの人、大御所の明星透(あけぼしとおる)ですよね?」
「うん、そうだよ!彼こそ僕の事務所の代表的存在さ!」
「え!あの人たち最近話題のカールズバンドのスターライトじゃない!?」
「お、鼎ちゃんよく知ってるね。ミキ、サクラ、カエデから成る巷で噂の3人組だよ!」
すると、スターライトと呼ばれた3人組の内の1人が周りに聞こえないような小声で僕に話しかけてきた。
「私はカエデ、午後2時、R3号室で待つ」
不審に思ったが、翔さんとの相談、対話が終わった後、鼎先輩には先に帰ってもらい、僕はカエデさんに言われた通りに例の部屋に赴いた。
「ようやく、、、ようやくこの時が来た!」
カエデさんは僕が部屋に入ると何故か凄い勢いで僕の背後の扉の鍵を閉める。そして襲いかかって来た!
「わっ、、、」
あまりに突然のことに、僕は腰を抜かしてしまった。
「ようやくお前に復讐できる!さあ、死に晒せ!」
カエデさんの構えるナイフが僕の目の前に飛び込んでくる。もうダメかと思ったその時、
(こいつは殺させないぜ!)
僕の中の誰かが体の主導権を奪う。その誰かがカエデさんの攻撃をかわし、反撃に出る。
「ち、なんだ、こいつ、、急に動きが、、、」
「今度はこっちの番だ!いくぞ!」
僕の体から繰り出される拳がカエデさんの肘付近を捉える。
「くそ、まずいな、、逃げるか、、」
「そう簡単に逃すと思うなよ!」
(ストーップ!)
追おうとする誰かをまた別の誰かが止める。すると僕の体の主導権が僕自身に戻ってきた。気がつくとカエデさんの姿はもうなかった。そしてさっきの誰かも出て来なくなっていた。
(やあ、烈火。僕は律人(りつと)。もう1人の君だよ)
ここで把握する、どうやら僕は多重人格者のようだ。
(話が早くて助かるよ。さっきのは一太(いちた)。君の潜在能力を最大限に引き出すから、身体能力が高くなるんだ)
なるほど、どうりで体の節々が痛むのか。
(うん、体を無理に動かすからね。身体に大幅な負荷がかかるんだ)
それはそうと、なんでさっき一太を止めたの?あのままカエデさんを逃してよかったの?
(それは、、まだ、その時じゃないとしか言えないな。君が全てを思い出したときに、また、ね)
帰り道の電車の中、僕は今日のことを思い出していた。多重人格なんて相当なストレスがかからない限り起こり得ない。まあ、確かに両親が死んで、ショックは受けているだろう。だが、本当にそれだけで、、、
「今日のご飯は・・・にしましょう!」と母。
「ぼくもてつだう!」と僕。
「いいな、・・・。期待してるぞ」と父。
ありきたりな日常の風景。だが、
「わーんわーん!」と泣き叫ぶ子供の声。その子供の口を両親が塞ぐ。そしてどこか別の部屋に連れて行った。
「うわ、、!」
目的の駅の手前で目が覚めた。どうやら昔のことを夢に見ていたらしい。
「、、、」
今の光景が本当に起こったことなら、どうして今までその異常性に気づかなかったのか。僕の両親は一体何者だったのだろう。
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