第2話 状況把握
「お嬢様、お早いお帰りで、」
「セバスチャン。お祖父様は?」
「書斎で、先程セイレーンから来た急使の報告書を読んでいるところです。」
「良いタイミングだわ。」
「公爵閣下は誰も入れるなと。」
「大丈夫ですわ。」
そう言って私は、セバスチャンの静止を聞かず、書斎に向かった。
「お祖父様。」
「なんだ、誰も入れるなと言っていた筈だが。」
押し入った私に、お祖父様は、驚きを見せていた。
「お祖父様、セイレーンで反乱があったんですよね。」
「何故知っている。」
「実は、婚約破棄に遭いまして、」
私は、パーティーでの出来事をお祖父様に報告した。お祖父様は、私を柔らかく抱きしめて
「そうか、良かったな。バルザック王の野郎殺してやる。」
「はい、お祖父様。セイレーンは?」
「セイレーンは何とか大丈夫だ。リバースのガキも活躍し、ブラックタイガーは殲滅。アクアは火の海になり、多くの被害が出たが、バルザック王国も撃退した。この詳細報告を読みなさい。」
「はい、後、帝国騎士団から、情報連携の」
「帝国報告用資料だ。お渡ししなさい。」
私が資料を受け取ると、
トントントン
「スノーです。アリア、パーティーでの話は聞きました。大丈夫ですか?」
スノーが、私を心配して駆けつけてくれた様だ。声がうわずっている。
「スノー、行きなさい。心配してくれる友を持って良かったな。」
「はい。」
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「あれ?その外套はアリア様が今日着て行ったもの?アリア様は、パーティーに出ているはず?どうしたんですか?」
アリアの外套を持って、アリアの部屋へ向かうメイドのサリーナさんを見つけて、確認した。私は、この巨大な公邸の中でアリアの隣の部屋を与えられたので、食堂で食事をとって帰る道でたまたま見つけたのだった。
「あっ、スノーさん。私もよく存じあげないのですが、アリア様がパーティーから帰ってきて、外套をリリィに渡して、ご主人様の書斎に向かわれたらしいです。何か騎士様達が一緒にいらしたらしいので、その方々にお聞きすればわかるのでは?私は怖くて聞けませんが。」
「サリーナさん。私なら聞けるとでも?」
「スノーさんは、クラン長でおられるので、騎士様も怖くないかと。」
「あら、嫌ですわ。私は単なる学生で、スノー様の名代として、クラン長をしているだけですわ。」
「そうですわね。学生の身分でクラン長なんて。オホホホ」
当然だが、私はこの屋敷で浮いていた。スノーのお友達の田舎の平民で、屋敷のメイドの3割は帝都の貴族の子女が花嫁修行として働いており、半数は執事やメイドの帝都の学校を出た一族執事やメイドだらけみたいな、無駄にプライドの高い人達、後の2割はセイレーンから来ている、セイレーンの貴族や、騎士等子女。公爵様の奥様は亡くなられているので、屋敷にいる女性は、メイド達とスノー、スノー護衛4人と私。スノーの護衛は女性騎士でセイレーンの貴族や、騎士の家柄だから、家柄的には、セイレーンの中堅商人の家の私が1番位低く見られている。それなのに、スノーの友達でスノーのクランのクラン長と言う立場で、部屋を与えられた立場なので、嫉妬の目で見られている。サリーナさんは、スノー付きのメイドで、帝都の男爵家の四女。選民意識が若干強くて、私に嫌味が多い。だが今は構っていられない。
「では、騎士様に聞いてみますわ。」
「そうですか。だから、平民は、…」
私は、話を聞かずに、玄関に向かった。玄関には、帝国騎士団の制服を着た騎士が2人たっていた。
「すみません。」
「はい?」
私が声をかけると、若い方の騎士が振り向いて、応えてくれた。
「私は、アリア様のクラン アクアのクラン長を務めるスノーと申します。アリア様に何か?」
「君がクラン長?」
「はい。」
私は、クラン長を示す冒険者ギルドカードを彼らに示した。
「ふむふむ、たしかにクラン長だな。」
「あっ、アクアって、グリフィンを持つサマナーがいる?」
「はい。アレックスは、クラン長代理です。」
「若いサマナーがいるって話題になってたぞ。で、何用でしょうか?」
ありがとう、アレックス、何故かあなたの名前で信用された・・・。
「アリア様に何があったんですか?」
「うーん。ハーベイ」
「リッチ、良いんじゃないか?」
「そうだな。スノーさん。アリア様は、先程のパーティーで、ベイスターン王子から、婚約破棄を要請され受諾されました。」
「へ・・・・えー。」
私は、冷静さを失い、直ぐに、書斎に走っていった。
トントントン
「スノーです。アリア、パーティーでの話は聞きました。大丈夫ですか?」
反応が無い・・・・。
「アリア、アリア―」
私が、扉で立ち尽くすと、静かに扉が開いた。
「スノー。お爺様の書斎の前で騒ぐのはよろしくないわよ。」
「あ・・・アリア」
私は、笑顔のアリアを抱きしめた。
「スノー痛いですわ。」
「だって、アリアが婚約破棄って・・・。」
「婚約破棄は、まあ良いのよ。」
そう言って、事の次第を細かく教えてくれた。
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