第18話 白き薔薇が舞う時

「はっ」


 僕が意識を取り戻すと、装備をはずされベッドに寝ていた。

「起きましゅたか・・・。」


 そこには、緊張感のかけたスレインさんが、事務作業をしながら、座っていた。

「スレインさん、どうして・・・。」

「はぁ、アレックスさんのサポートで、どうせ事務が回らないでしょうからと、アリシアしゃまが・・。」


 やっぱりカミカミだ。

「それより、どんな額を動かしているんですか・・・。金額が大きすぎます。しかも、立ち上げた事業規模が大きすぎて、わたしじゃまわしきゅれましぇん」

「すみません。でも、」

「わかってます。」


 スレインさんは優しい笑顔を僕に見せ

「男だったらやりゃなきゃならないこともあるでしょう。そろそろ起きて下さい。気を失ってから4時間程度たちました。2時間程で、街の掌握と、捕虜の確保を行い、騎士団50人を残し、白き薔薇団50人は、セイレーンに援軍に戻りましゅた。」

「僕も・・・。」

「ロッシ様からの伝言でしゅ。セイレーンは俺たちが守る。お前は休んでろ。と、」

「でも、・・・」

「あと、仔細は既にアリシア様に報告しておりましゅ。大事には至らないかと思いましゅが。」

「そうですが・・・。悪魔の対処が、」

「アレックスさん。あなたは今日、どれだけの成果を上げたと思っているんでしゅか?海賊3隻をソロで制圧。街を開放。これだけで、実態を加味しゅれば。公爵閣下よりの、勲章と褒章が与えられ、冒険者ギルドからSランク昇格実績と、評価されましゅ。」

「海賊?」


 アレックスは、理解できず、変な声を上げてしまった。

「海賊です。宣戦布告したものではないでしゅし、バルザック王国も、イフリート公爵家もこんな虐殺行為認めないでしょう。単に海賊に身を落とした貴族の行為、各クランも海賊とは知らずに仕事を受けたか、メンバーが勝手に受けて除名にしたことするでしょうね。冒険者ギルド総本部も、事実を全て認めると、今の独立性を保てないでしょうから、話を小さく小さく持ってくでしょうね。だからその海賊、対価としてのSランク認定実績でしゅ。」

「政治って面倒くさいですね。でも許せないです。そうだ、街の人達は?」

「ほぼ全滅でしゅ。守備隊も全滅し、商人ギルドも大通りの商会は、壊滅しギルド長の遺体も発見されたそうでしゅ。莫大な資金と一緒に。不正やバルザック王国の手引き、ブラックタイガーと協力した犯罪行為、セイレーンや、帝都、イフリートなどなど帝国有数の商会が絡んだ悪事の数々の証拠、中でも、奴隷シンジケートが出来ていたらしく、商人ギルド長は、帝国最大の闇ギルドの幹部だったらしいです。あと、ドボルベード代官を閉じ込めて専横を握っていたボボッガさんは、奇跡的に市庁舎の地下室で見つかったそうでしゅ。市庁舎から、不正、横領、貴族の関与の証拠が見つかりました。一つ厄介だったのは、港町バーモンドを治めるロドリコ・セイレーン伯爵閣下が、バルザック王国、イフリートと繋がってこの事件に関与した証拠も見つかったことでしゅ。ロドリコ閣下はリーハイム・セイレーン次期公爵閣下の弟君で、奥様がイフリート公爵家からいらした方でしゅ。気が弱くて、奥様の尻に敷かれているとの噂でしゅ。それで、実態はおくしゃまが主導しゅて今回の事態にも大きく関与しゅているみたいなんでしゅ。リーハイム・セイレーン次期公爵閣下が今回の件で、亡くなって、公爵家を我が物としゅる予定だったんでしゅね。」

「そうですか・・・。あれますね。」

「あれましゅね・・・。」

「でも、僕のこの事件での戦闘はもう終わりですね。僕のできることはなさそうですね。」


 僕と、スレインさんは、遠くを眺めた・・・・。数か月位面倒なことが続くんだろうなと。

「そうそう、スレインさん。街の子供達も亡くなったんですか?」

「いやー。街がほぼ壊滅していて、この建物と後いくつか以外は全壊ですからせいかきゅにはわかりましょえんが、アレックスさんが解放した所謂旧市民と呼ばれる方によれば、旧市民の方の遺体は殆ど発見できませんでしぃた。」

「それは、どこかに逃げたと?」

「分からないでしゅが・・・。」

「そうですか・・・。一応、サモン ヒト吉」


 そう言うと、ヒト吉ことフェニックスが召喚された・・・。

「あわわわわ・・・。」

「大丈夫ですよスレインさん、私の召喚獣ですから。」

「フェニックスですか?伝説の・・。」

「そう、フェニックスです。」

「これでどう?」

「本当は、犬種を召喚できたらいいんですが、戦闘でやられてスリープ状態ですので・・・・。」

「そうですか・・・。」

「ヒト吉よろしくお願いいたします。」



 そう言うと、ヒト吉が闇に消えていった。ヒト吉が消えていく方向を眺めていると、


 プルプルプルプル


 魔導具が大きな音をたてた。僕は魔導具を開くと


 ドーン


 アリシア様のドアップがあった。

「あっ、アレックス君大丈夫?」

「アリシア様・・・・。」

「アレックス君、この通信機とかいう魔道具便利ですね。スレインさんからの報告もすぐでしたし、」

「それは良かったです。それで・・・。」

「あぁ、一応現状報告・・・。」


 それは、僕の想像をはるかに上回る状況だった。報告内容をまとめるとこんな感じだ・・・。


リーハイム・セイレーン次期公爵閣下が執務を終え、宮殿に戻る途中を、20人の反乱騎士に襲われた・・・。

護衛の騎士は6人だったが、隠れて、白き薔薇団筆頭Sランクパーティーが警護していた。

「「「「「天誅・・・・。」」」」


 と切りかかっていく騎士達を、

「王級剣技 胡蝶の舞」


 ミスリル製で紋章の上から×印をつけた鎧を着た剣士が、舞踏でも舞うように次々と反乱騎士達を切り捨てていった。

「リーハイム様こちらへ、」


 長いひげを蓄えた、いかにも魔法使いという感じの老人が、リーハイムを誘導していた。

「爺、すまぬな・・・。引退して余生を楽しんでいた物を・・・・。」

「余生って、こんな爺さんが宮廷ででかい顔をしていると、下の者が育たないから、アリシア様の所にいるだけですよ。」

「そうですよ、この爺さん、年甲斐もなく、先月も・・・。」

「バレックス、五月蠅いわ。」

「はははは、」


 リーハイムは、豪快に笑いながら宮殿に走っている。護衛の騎士の他、魔法使い、ドワーフを引き連れており、顔に余裕を見せていた。

「始まったからには、徹底的に行くぞ。バレックス、すまぬが、訓練場にいる騎士達の指揮を頼む。副騎士団長のドリーンは、バーモンドに、ガイアスはアクアに送っていて、騎士団長のバッカランは宮廷防衛を任せている。元副騎士団長のお前の薫陶を受けた精鋭部隊を集めている。市内各地の制圧を、アリシアと共にやってくれ。」

「了解です・・・。では。」


 そういうと、ドワーフのバレックスは、抜けていった。

「爺、お前は私と一緒に行って、バッカランをサポートしてやってくれ・・。奴も若い、遠慮なくな・・・。」

「私が本気の時に遠慮なんてないのはご存知でしょう。」

「反乱騎士が片付いたら、カインは、私の護衛で・・。誰も文句は言わせんぞ。」

「そうでしょうな。フランツ王国から、アリシア様、ロベルト様をお救いした時に、リーモンド様をお救い出来なかった責を取り、騎士団長を引退し、自ら鎧に×をつけた堅物。まともな騎士達は彼を騎士の鑑と思っておる。セイレーンの白き牙。白き薔薇団の看板になった今でも、セイレーンの最強の騎士じゃ・・・。誰も文句は言わん。」

「そうだ、ブロード」

「あいよ」


 リーハイムの呼びかけに、忍び装束の女の子が出てきた。

「ブロード、アリシアに作戦開始の連絡を頼む。」

「あいよ。」


 ブロードとよばれた女の子は高く飛び上がり、手筒花火を取り出し、空中から上空に花火を発射した。


 ドカーン


 その音は、公都セイレーン中に響き渡った。


 タタタタタ


「カイン、戻ったか・・・。」

「リーハイム様、反乱騎士23名切り捨てました。中に、バッシュモン子爵や、ロービスティ男爵がおりましたが、」

「全員覆面で分からなかったが、種族差別派貴族たちも、加担していたのか・・・。」

「そうですね。私は、護衛に着けばいいのですね・・。」

「頼む・・・。」


 と宮殿の前まで着くと、異形の者達が、門の前に集まり、騎士達と戦ってた。騎士達には、上級クラスまでのスキルを身につけさせていたが、何とかしのいでいる感じだった・・・。

「爺、あれが悪魔の果実で・・・・。」

「その様ですね、破邪の石を持っているので、戻して・・「私に力試しさせてください。」」


 爺の話を、カインが遮り、悪魔に切りかかっていった。

「王級剣技 鳳凰剣」


 カインが、一閃すると、その剣撃飛んでいき、悪魔を切り捨て、壁に傷跡をつけた。

「王級剣技 唐紅」


 悪魔を切り捨てたのを確認することなく、次々に悪魔を切り捨てていった。見ていてどちらが悪魔か分からない感じなくらい、カインは悪魔顔になっていた・・・。

「これが無ければ良いやつなのに・・・。」


 宮廷前にいた悪魔を退治すると、リーハイム様達は宮廷に入り、事態収拾に本格的で動き出した。


 白き薔薇団及び騎士団は、ブラックタイガー、下部クラン、関連商人、貴族等、50か所を次々と強襲し、約2時間の作戦で、2500人を拘束、戦闘で700人を倒した。悪魔化したのは250人。倒したのは30人で残りは破邪の石で人に戻して拘束した。ターゲットの9割以上の拘束、殺害に成功した。しかしながら


「ブラックタイガーのクラン長ドドリゲルのSランクパーティーと、Aランクパーティー2つが逃げたのよ南に。」


 アリシア様は苦悩な顔を浮かべていた。

「南って・・・。」

「そうよ、アクアの方へね・・・。」

「ロッシさん達は?」

「逃げたのは、ロッシ達が到達したあとね。多分アクアに着くのは1時間後。どうにか時間を稼いで、公都の警戒態勢は解除したから、我が白き薔薇団最強パーティー他4パーティーを送ったから。セイレーン騎士団副団長のガイアスさんとも協力して何とか時間を稼いで・・・。」

「わかりました。」


 この事件での僕の戦闘はまだ終わらなかった・・・。

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