第17話 アクア奪還

「なんだ?」


 僕の街に入った一声だ。アクアが火の海になり、死体がそこここに、転がっている。市民が逃げ惑い、見た事のない紋章を付けた兵士達が、市民を捕まえて虐殺している。一瞬、唖然としていると、兵士達が僕に近寄り切りかかってきた。


 ザスッドスッドッバスッ


 僕は、襲いかかってきた兵士達を、一閃で切り捨てて行った。

「とりあえず、出来るだけ助けないと。」 


 兵士達のレベルは必ずしも高くなく、戦闘経験も多くない感じだった。召喚獣達を見た。


------------------------------------------------------

角獣族 一角ウサギ レベル193 うさ吉

スライム族 キングスライム レベル202 スラ吉

家畜族 プチカウ レベル192 ウシ吉

ゴブリン族 ゴブリンキング レベル199 ゴブ吉

死霊族 キングスケルトン レベル201ホネ吉

両性類型 ビックファイヤーカエル レベル60ゲロ吉

狼系 銀狼 レベル56 ロウ吉

コボルト系 キングコボルト レベル40 コボ吉

豚人系 キングオーク レベル52 ブタ吉

鬼系 レッドオーガ レベル50オニ吉

牛人系 ブラックミノタウルス レベル53 ミノ吉

竜系 キングレッドドラゴン レベル64 ドラ吉

飛龍系 ワインパーン レベル24 ワイ吉

キメラ系 ハイグリフォン レベル5 グリ吉

植物人系 ラフレシア レベル28 ハナ吉

犬族 狛犬 レベル30 ポチ

猫族 招き猫 レベル34 タマ

アリ族 ビックファイヤーアント レベル27 アリ吉

リザード系 ロックリザード レベル30 リザ吉

ゴーレム系 レジェンドゴーレム レベル640 ゴレ吉

火獣族 ファイヤーハウンド レベル91 燃え吉

植物族 ビックファイヤーフラワー レベル96 フラ吉

火人族 ファイヤーエンペラー レベル200 火の吉

火鳥族 フェニックス レベル26 ヒト吉

------------------------------------------------------


「サモン、うさ吉。サモン、スラ吉。…。」


 グリ吉、ドラ吉を除く全ての召喚獣達を召喚した。

「ゴレ吉、火の吉、ヒト吉、うし吉はついてきてくれ、他は、うさ吉、スラ吉、ゴブ吉、ホネ吉が隊長となって、4隊に分かれて、敵を倒していけ。とりあえず、このこれを着て、市民と警備隊には手を出すな。」


 そう言って、僕は。大きめのシャツを4枚取り出し、さっと、「市民の味方です。」とデカデカとシャツに書いてそれぞれの隊の人形召喚獣達に着せた。

「皆な頼んだぞ。」

 

 召喚獣達は、それぞれ散って行った。

「さあ行こうか。」


 僕は、ゴレ吉、火の吉、ヒト吉、うし吉を連れて、港に向かうことにした。多分、来る途中で見かけた船が兵士達を連れてきただろうから、そこを抑えに行くつもりだ。ゴレ吉に背負われれば早いはずだが、レジェンドゴーレムになったゴレ吉は、僕より若干小さかったので、乗れない。僕は、走って港に向かう途中、兵士達を、火の吉が、次々と切り裂いていく。ハイエルンでやったのと同じ方法だが、器用にも敵兵だけを斬っていく。火系の魔法も使いこなすし、こいつ何処まで強いんだ。と感心しながら港まで、走り抜けていった。


 港に着くと、人は殆どいなかった。物陰に隠れて見てみると、いつもの商船の奥に、岸壁に1隻、整備されていない沿岸に2隻の船が泊まっていた。本来僕が借りていなければ、港に充分入港出来たのに、2隻の船は未だ荷下ろし等をしているのが見えた。僕はとりあえず、火の吉以外を戻し、船に近づいていった、


 ザザザザザ


 鎧を着た男達が、僕に向かって船の方から走ってくる。数は30程度、何処かの国の兵士の様だ。これだけ兵士がいれば、指揮官もいるだろう。帝国は、領軍を含め統一した階級制度を敷いており、他国も大半は、帝国に準じた制度を敷いていると聞く、とりあえず鎌をかけようと

「リーダーから、司令官様に急な伝令を頼まれたのですが。司令官様は?」


 兵士達がこちらの様子を見つつ、僕のところに1人の恰幅の良い周りの兵士より良い装備を付けているおじさんが出てきた。

「おう、ジハードの若いのか?俺は、ザミード傭兵団第7隊長のポリードだ。バルザック王国のリシリュー伯爵なら、あの一番奥の旗艦にいる。ハリソン子爵で良ければ、手前の船だ。」

「ありがとうございます。奥の船に行ってきますね。」

「気をつけろよ。」


 と、僕が奥に進むと、後ろから小声が聞こえた。

「隊長、良かったんですかい?」

「何がだ?」

「あの餓鬼通しちゃって。」

「大丈夫だろう。あの召喚獣は、イフリート第一迷宮にしかいないと言われているファイヤーマンだろう。まともに連れ歩くなら、多少レベルが高いはず、あの位の餓鬼で、ファイヤーマンのレベルがそれなりなら、イフリート出身だろう。それで優秀ならジハードクランのメンバーだろう。この推理、俺って天才だろう。それにだ、伯爵の周りには、バルザック王国最強の、ロードメアクランの精鋭がいる。あんな餓鬼相手にならんだろう。」

「そうですね。」


 と、笑い声が聞こえていたところに、兵士が何人か駆け込んできた。

「助けてくれ、モンスターが俺たちを襲ってきている。敵の強力なサマナーか、モンスター使いが来てる様だ。援軍を。」

「何?」


 そう言うと、兵士達が僕の方を振り返った。

「小僧止まれ。誰かあいつを捕まえろ。」


 と叫び声が聞こえた。僕は走り出した。僕は、マジックバックから、工事用魔導具を取り出した。そこに土の魔石をはめ、一気に厚さ3メートル

高さ5メールの巨大な壁を作った。そのまま、足元を壁の天辺まで上げ、海に向かって、壁を伸ばしていって、数分で、港ギルドに頼んで作って貰った囲いまで届いた。まずは1隻航行不能にし、続いて、他の2隻も、囲い航行不能にした。


 ドガン


 僕が、壁の上にいると、火魔法で攻撃を受けた。


 ガガガ


 次は氷の槍が飛んできた。船に乗っていた魔導士達が攻撃をしてきている。

「サモン、ゴレ吉。任せた。」


 ゴレゴレ


 可愛い鳴き声?をあげて、ゴレ吉にマジックバックを持たせると、壁から飛び降り、魔法攻撃の雨の中船に向かっていった。


 ドガン バゴン


 2隻はゴレ吉に任せて、僕は、もう1隻をと思った矢先。ドーンと、心臓が高鳴る衝動を受けた。すかさず、スリープ、つまりダメージを受け、24時間の休眠に入った召喚獣を見ると、


------------------------------------------------------

コボルト系 キングコボルト レベル40 コボ吉

犬族 狛犬 レベル30 ポチ

猫族 招き猫 レベル34 タマ

------------------------------------------------------


 スラ吉のチームの3体がやられた。レベル30~40なので、普通のDランクの冒険者であればソロで、倒せるかどうかのレベルだが、レベル202のスラ吉がいる。スラ吉は、ソロならAランク、パーティーなら、Bランクでなんとかと言うレベルだ。ジハードのBランクがいた位だ、虎の子のゴレ吉は、既に船2隻の制圧に向かわせてしまった。夕方までまだ時間がある。勢いだけで来てしまったことに焦りを感じ始めた。


 ダダダダダ


 足音がして、その方を見ると、その方向には梯子で登ってきた兵士達が、僕に向かって走ってきた。ポリードさん達だ。

「火の吉行くぞ。」


 と、火の吉に声をかけ、兵士達に向かって行った。


 ボゥワワワワ


 火の吉は、兵士達に、王級火魔法業火の雨を降らせた。王級は、帝国でもトップクラスの上級宮廷魔導師クラスでないと使える者はいないランクの高度かつ強力な魔法だ。業火の雨は、中範囲魔法といわれる、半径10メートル程度の場所に放つ魔法で、その範囲に、中級火魔法を雨の様に打ち込むものだ。並の兵士であれば、耐えきれない。激烈な業火の中、立っていたのは、ポリードさんだけで、ポリードさんも膝をついて、意識を手放しそうだった。僕は、駆け寄り、手刀で意識を狩り、武具をマジックバックで奪って、うし吉に傷を回復させ、工事用魔導具で、即席牢屋を作って、梯子をまで行った。梯子の下には、兵士達が集まっていたので、火の吉か飛び降り、次々と、斬りさっていった。

 火の吉は、ゴブ吉や、ホネ吉と同じくらいのレベルなのに、明らかに強かった。圧倒的な力で、兵士達を殲滅し、指揮官らしい者は、意識を奪ってく姿に僕すら恐怖を覚える程だった。

 僕は、素直に、火の吉について、船に向かって行くと、スラ吉がスリープ状態になった。少なくとも、スラ吉を倒せる敵が街の中で戦闘をしている。僕は警戒しながらも、火の吉が意識を狩ったものから、装備を奪い、即席牢屋に閉じ込める作業をしている。はたから見たら、僕は単なる作業員として、火の吉についている様に見えるだろう。少なくとも、敵はそう認識したようだった。

 「ようよう。暴れ回ってくれてるみたいだが、ここで終わりだ。ザミード傭兵団第1部隊Aランクパーティの力見せてやるぜ。」


 と、12人のパーティー、多分6人がフロント、3人ミドル、3人バックのパーティーだ。フロントメンバー5人と、ミドル3人で火の吉を抑えつつ、1人が僕に切りかかった。攻撃を特化型の剣士の様だった。

「上級剣技 龍撃剣」


 そう叫びつつ、龍撃剣を放つった。龍撃剣は、一太刀に強力な力を乗せる剣技で、力技の権化というべき剣技だ。僕は焦らず。

「王級剣技 天撃剣」


 と、龍撃剣の上位剣技で返した。単純計算で、ステータスが同じなら、2.3倍程の威力になる。王級剣技もレベル10にしているので、普通に慣れたレベルで使えている。


 ガギーン


 と、剣がぶつかった音が響き渡り、ギリギリのところで、僕が剣士をふき飛ばした。剣士は、そのまま海に落ちていった。それを見て敵パーティーは一瞬動きが止まった。剣士が楽勝でサモナーの僕を瞬殺する予定だったんだろう。しかも、世界屈指の剣士しか使えない王級剣技を使いこなしている。全くの想定外だったんだろう。そこで出来た隙を逃す火の吉ではなかった。守りの厚いフロントではなく、ミドルに襲い掛かった。敵の女魔法使いを切り捨て、マッチョな、神官を30メール以上離れている倉庫まで蹴り飛ばし意識を奪った。続いて、細身の神官を殴り飛ばして気絶させた。僕は、敵のフロントに、


「王級剣技 陽炎の舞」


で、相手の攻撃を避ける事重視の剣技で切りかかり、火の吉を追わせない様に的となる動きをした。その間にも、火の吉は、バックの弓使いのエルフの弓を粉砕し、同じ顔のエルフの弓使いの首に切りかかった。エルフはかろうじて防いだものの、弓は粉砕し、勢いで、頭から倒れ気絶した。そうやっている中、少し離れた年寄り魔法使いが


「特級水魔法 ダイダロスウェイブ」


 範囲魔法ダイダロスウェイブ。巨大で強力な波を打ちつけてきた。火の吉は、詠唱なしで、巨大な炎の壁を作り、全てを蒸発させた。あたりが、水蒸気で覆われた瞬間、そこまで予想していた火の吉が、魔法使いと、エルフの意識を刈り、フロントで、僕が翻弄していたドワーフの戦士を後ろから頭を切り付け、意識を奪った。ドワーフの声で振り返った、銀髪の細身の剣士の隙をつき、僕が


「王級剣技 雪崩100閃」


 と、超速で連続に切りつけ滅多斬りにし、倒した。3対2となり、僕が再び


「王級剣技 陽炎の舞」


 僕が翻弄して行く中、金髪の勇者風剣士、盾役のごっつい戦士、ショートランスを持つ指揮官風の中年の意識を火の吉が順番に削っていった。戦いが終わると、僕は順番に装備を奪い、即席牢屋に入れていった。


「サモン うし吉。」


 と、うし吉を召喚し、牢屋に入れたもの達の傷を治していった。火の吉は、次から次に来る雑魚達を倒して、僕が即席牢屋に入れて行く作業をしていると、僕の後ろから静かに


グサッ


 僕は、腹を刺された。振り返ると、海に落とした剣士だ。

「うひゃー、皆んなの仇だ。死にやがれ。」


 そう言って、僕見てニヤッと笑みを浮かべ、僕に刺さった剣を抜こうとした。


 ドス グサ


 剣士の、首が飛んでいき、剣士の体が飛ばされていった。うし吉と、火の吉だ。剣士の体が飛ぶととともに、僕の腹に刺さった剣がスッーと抜け、血が噴き出してきた。

「うっ」


 僕が意識を手放そうとした時、僕の体が温かくなり、傷の痛みが無くなった。

「はへ?」


 うし吉が僕の傷を魔法で埋めてくれた。うし吉は、レベルは高く、迷宮でずっと回復魔法を使い続けた為、回復魔法は低級だが、異常な回復力を持っていた。

「うし吉ありがとう。」


 僕は、意識をなんとか踏ん張って保ち、うし吉に寄りかかった。なんとか、うし吉に支えてもらいながら、敵の武器を奪い、即席牢屋に入れつつ、敵艦の前についた。船には、5人の騎士と、太ったおじさんが立っていた。

「ほう、冒険者強いでないか?バルザック王国の騎士に取り立ててやろう。こんな辛気臭いセイレーンの平民でいるより、100倍好きに生きれるぞ。フォッフォッフォッ。」

「ハリソン子爵閣下のお申し出だ。すぐにはいと応えんか馬鹿者。」


 世間知らずそうな、ボンボン騎士が、子爵が話した直後に人を馬鹿にしたように言った。

「平民の冒険者風情が、ハリソン子爵閣下を待たせんな。そもそも、お前にYES以外は許されん。平民とはそんなものだ、帝国の平民は教育がなっとらん。愚図平民が!早くはいと言わんか。」

「やめとけ、ローバン君。平民は、何も考えられないんだ。貴族と一緒にするのではないぞ。フォッフォッフォッ。」

「そうですね、ハリソン子爵閣下。おい、冒険者、今夜にでも、セイレーンは悪魔によって崩壊するんですから、お前に選択肢はないんだよ。わかったかな?」


 ブラックタイガーが、悪魔の果実で、大量の悪魔を生み出して、セイレーンを崩壊させるという事か。そろそろ倒すか・・・。と思った時に、ドーンと、心臓が高鳴る衝動を受けた。ホネ吉達パーティーが全滅していた。どんなやつらが、街中にいるんだ・・・・。と思いを巡らせていると、

「お前、聞いているのか・・・・。」


 僕に向かって、ローバンが怒鳴っている。

「お前ら、やっつけるぞ。」


 ローバンがそう言うと、騎士達が船から降りてきた。

「火の吉よろしく。」


 火の吉は、ひとっ飛びして騎士達の意識を刈り、子爵を持ってきた。

「とりあえず、意識を刈っておいて。」


 ドン


 一撃で、意識を刈り、僕は騎士達を含め、即席牢獄に入れ、人がいなくなった船をマジックバックに納め、うし吉の上に載って、街に戻った。




 街中は静まり返り、大通りの真ん中で、剣を交えている音が聞こえてきた。

「火の吉頼んだよ・・・。」


 火の吉は、大通りの真ん中を走り、血の不足と、疲労で意識がもうろうとしている中、剣戟の音が聞こえる場所に進んでいった。


ガン、ドーン、バキャーン、ドワーン


 遠くで、火と、氷、風等の魔法が飛び交い、剣の音も響いている。僕が近づいて行っても、戦闘は続いていた。敵は4人。長身、長顔、黒髪の侍。ヘテロクロミアで白髪の魔導士の女の子。金髪で美しいスタイルを持つ盾を持つ女戦士。赤髪のとっぽい神官。みんなが魔法を使い、武器での戦闘をおこなっいる多分冒険者パーティー。こちらは、火の吉、ゴブ吉、ウサ吉の三体が戦っている。火の吉が入ったことで、押しているが、一進一退を繰り返している状況だ。

「おい、冒険者達、もう君たちの雇い主は捕まえた。こちらに投降してくれないか。」

「はーん。餓鬼が、殺すぞ。」


 黒髪の侍が僕のところに向けて、剣撃を飛ばしてきた。

「王級剣技 剣撃壁」


 僕は無数の剣撃で何とか剣撃を防いだ。

「何、王級剣技だと・・・。だが、死にかけじゃねえか。死ねや」


 僕に黒髪剣士が突っ込んできた。僕は、ヤバい防ぎきれないと覚悟した


 ドドドドドドドドド


 後ろから土埃をたて大きな音が聞こえた。そしてそのまま僕を越え剣士にあたった。瞬間的に剣をボキット折り、意識を刈った。

「ゴレ吉・・・。ナイス。」


 ゴレ吉は、2隻の船を制圧。ロードメアクランのメンバーを倒して、走ってきた。そして、ゴレ吉は、女戦士をラリアットで倒し、王級氷魔法をぶつけた魔導士をヘッドバッドで吹き飛ばし、逃げ始めた神官を、火の吉が倒した。約4秒・・・。早すぎる状況だった。僕は、4人から武器を奪い即席牢屋に閉じ込めた。


 ドカドカドカ


「何が生じたアレックス殿」

「ロッシさん・・・。」


 僕は、ロッシさんにセイレーンへの工作についての情報を含め事情を話し、牢屋に入れたり、意識を刈った者達を捕まえ、被害者の対応をお願いし意識を手放した。




幕間1 アクア陥落前

「あの艦隊はなんだ?」

「見た事の無い旗だな、形も知らん。」

「あれは所謂クルーザー級と言われる船だな。戦艦じゃよ。」


 若い港湾労働者達が、騒いでいると、長老と言われる高齢の港湾労働者が呟いた。

「「「戦艦?」」」

「そうじゃよ。しかも、あれだけ船が重そうにしている。相当な人を積んでいるんだろう。上陸まで2時間かな?懐かしいなぁ、昔、戦が多かった頃はあんな船沢山見かけたが、最近は見かけなくなったのう。アクアが戦火に燃えるか?」


 港湾労働者達は、最近もらった仕事を精力的にこなしていた。半月前まで酒場や家で昼間から酒を飲んでぐうたらしていたが、今では、アレックスさんに頼まれた仕事に従事し、充実した日々を過ごしていた。

「おめーら、とりあえず、逃げるぞ。街を出るんだ。出れないなら、そうだ、今作ってる壁の中に隠れるんだ。壁で囲った先、岬の手前に洞窟が沢山ある岩場があって、そこの一つが山の向こうに通じている。あの船は、えーと、2時間で上陸するから、1時間で親戚含めて集めて逃げてこい。アレックスさんのお陰で、当座の金はある。」

「ハーメリックさん、わかりました。」

 港ギルドのギルマスハーメリックは、長老の言葉に即座に判断し指示を飛ばした。


「そうだ、ラッツにも声をかけろ。アレックスの屋敷にも人を走らせろ、丁度正午の鐘の音で、ここをとじる。いいかテメェら、新市民達は知らねえが、オレ達の仲間は絶対に護るんだ。いいか?」

「「「はい。ギルマス。」」」


 そう言って、港湾労働者達は、街中に散って行った。

「アレックスさん。この金も、ガキ達に作ったネットワークもこの時のためだったんですね。ラッツの野郎も、アレックスさんの親派に取り込んでたし、旧市民を守る為に、アレックスさん。旧市民は守りますから。」


 と、ハーメリックは、1時間半で旧市民の殆ど全ての脱出に、新市民に見つかる事なく成功させた。アレックスと、そのクランのオーナーであるアリアは、知らないうちに、旧市民の絶対的な支持を手に入れたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る