第9話 雑用係

「私はエセリーヌよ」

 10才の女の子であるエセリーヌは、アクア地元料理屋の一人娘。金髪で、そばかすがで始めたぷくぷく顔。それなりにお手伝いをしていた様で、筋肉も付いている。折った杖は、お爺さんの物で、お爺さんが冒険者に貰ったそうだ。

「俺はバーモン」

 小柄な9才の男の子であるバーモン、八百屋の三男。引っ込み思案な感じだが、人懐っこい顔で、3人のムードメーカー的存在だ。

「僕は、リトリンです。」

 背の高い11才の男の子であるリトリンは、魚屋の次男。責任感が強く、疑い深くて、3人のリーダー。奴隷にされている人達を見つけたのは彼だそうだ。

 3人を率いてアクアに戻ると、門には見知らぬ門番がいた。

「僕は冒険者のアレックスです。迷宮から戻ってくる途中、熊に襲われていたので助けて、連れてきました。」

「そうか、また、お前ら。」

「「「ごめんなさい。」」」

 3人が素直に謝っていた。


「どういうこと?」

「アレックスさん。こいつらは、しょっちゅう抜け出して、周りを困らしているんですよ。」

「そうなのか。」

「「「ごめんなさい。」」」

「じゃあ、うちのクランで働くか?クランメンバーでなく、雑用係だが。」

「「「えっ、クランって?」」」

「僕の所属するクランアクアの拠点はあるんだが、メイドはいても、雑用係は居ないんだ。ちゃんと報酬出すし、メンバーでないから迷宮に入る必要も無い。1日50ゴールドでどうかな?基本仕事は殆ど無いから、仕事のない時間は、拠点で勉強や、修行してもらうよ。拘束時間分の報酬出すし、同い年位の子供1人参加させれば、特別報酬200ゴールドかな?」

「「「やるやる。」」」

 3人が喜んでいるところに、門番さんが、


「何で、施しのようなことを。」

「あっ、簡単ですよ。うちのオーナーがアリア様で、資金は自由に使って良いと言われてますので、支援ですよ。まぁ、アリア様の知らないところで色々起きているみたいなのですがね。」

「そうですか。」


 びっくりした顔をしている。多分、アリア様のご指示で問題が生じていると思っているんだろう。この話が今後どんな影響を及ぼすか読めないが、色々な手を打って波乱をもたらさないと感じた。

「アリア様は、今帝都ですし、その前はずっとセイレーンの学校にいたから、ここの実情は知らず、アリア様は報告を受けるだけでしたらね。私もアリア様と学校で出会い、雇用されましたから。この街に重い税金をかけても、アリア様の手取りには関係ないですしね。」

「どう言うことですか?」

「私も騎士の家の出ですので、ルールとして知ってますが、帝国貴族が、子供に勉強や格をつけるために領主にして代官を置いた場合、子供の収入は、前年の税収から定額で決まり、直接経営するまで収入は変わらないんです。」

「そうなんですか。」


 門番さんや、3人の子供たちはびっくりした顔をしていた。

「じゃぁ、行きますか。」

「「「はぃ。」」」


 4人が、びっくりしている状況のまま、僕は門を抜け、クランの本部に向かった。本部に着くと誰も居なかった。受付のある玄関は空いており、本来であれば、ジジーンさんか、他の使用人の人が居るはずだが、開けており、メモもなかった。

「でっけー。」

「すごいわ」

「俺たちここで働くの?」

「そうだよ、それにしても誰も居ないって、ちょっとそこのソファーで待っててね。飲み物は、えーっと。」


 僕は、マジックバックから瓶入りのドリンクを取り出すと。

「「「えーーー」」」

「そこのバーにコップがあるはずだから、使ってね。僕は少し調べてくる。」


 瓶入りのドリンクは、貴族や、マジックバックを持つ商人、冒険者ならともかく、普通の庶民が持ち歩くものではなく、高級品と整理されている。3人は、喜びながら早速コップを探しに行き、僕はその間に、僕の執務室に向かった。


 ゴソゴソゴソゴソ


「無いですね。何処ですかね。」

「あんな大量の書類を持ち歩く訳ないわ。何処かに隠してあるはずよ。」

「そろそろ帰ってくるんじゃ無いですかい?」

「あんな、小僧が3日も1人で迷宮に潜れるはずないでしょう。どうせ疲れ切ってここにはこないわよ。」

「金庫は開かないですね。この街トップのシーフを呼んだのに。」


 やっぱり、探っている。大丈夫か?こいつら。とりあえず味方じゃ無いことが分かったし良いか。


 ドタドタドタ


「ジジーンさーん。どちらですか~。」


 僕はわざと音を立てて気付かせた。

「すぐ片付けるのよ。急いで静かにね。」

「「はぃ」」

 

 そう小声が聞こえると、

「ジジーンさーん。」

「はーい。」


 そう言うと、僕の執務室から出てきてすぐ閉めた。

「ジジーンさん。私の執務室で何か?」

「いえ、アレックス様のお恥ずかしながら掃除をしていたらゴキブリが出てきて、慌ててゴキブリ退治をしていると、色々壊してしまい、整理をしていたんです。使用人のロックスと、日雇いで雇ったマーゲンの2人に手伝って貰っていたんです。少しお待ちいただけますか?」

「はぁ。」


 嘘が下手すぎだが、とりあえず、分かったふりをしておこう。

「下に、3人の子供達がいますが、私が雇いました。今後白き薔薇団系のクランの方が来たときの雑用係ですが、この街の子供達の教育ができていない気がするので、暇なときはジジーンさんに勉強を教えてもらいたいんですが、良いですよね。」

「でも、いや」

「ゴキブリのことは、色々壊したことをなかったことにしますから。」

「えっ、うーんわかりました。」

「給料は一日50ゴールド、1人参加させれば200ゴールドの特別報酬。基本は12才までアリア様の支持を高める為の政策だと思ってください。とりあえず、100万ゴールドをお預けしますので、その中から使ってください。書面に受領サインをもらって、毎月私に渡してください。足りなければ追加でお渡しします。私は、宿に戻りますので、明日は、また来ます。下の子達は、ドリンクを飲ませて待たせておきますので、落ち着いたら、3人の自己紹介を受けて、毎日の出勤時間の調整をして帰してください。後、金庫には大切なものを入れてあるので触らないで下さいね。ではまた。」

 僕はそう言って、100万ゴールドが入った袋をジジーンさんに渡し、僕は去っていった。ジジーンさんは、バツの悪さから、僕に教育係を押し切られた後、僕が口を挟めない勢いで

「これで、何が起きるかだな。」


 僕は小声で呟いて、一階に戻った。みんなソファーでリラックスしていた。

「上にジジーンさんがいました。後でジジーンさんがいたのでもう少ししたら降りてくると思います。自己紹介と出勤日程を確認してから、帰ってください。明日からお仕事をお願いします。」

「「「はい。わかりました。」」」


 そうして、三人と別れると、僕は街中を観察して歩いた。色々話を聞いた後で、街を歩くと、最初に見た街とは全く変わった印象を受ける当然だが、特に大通りと、大通り以外で服の雰囲気が変わっていた。貧富の差かとも思ったが、大通り以外の人達は、セイレーンでも見かけるが、大通りの人達は若干セイレーンでも見かけない柄や、腰紐をしている。

「もしや、異国人か?」


 ボソッと呟いて、首を振った。もし、異国人だとしたら、隣国バルザック王国。アリア様のご婚約者ベイスターン王子が次期王となられる国。これは、経済的侵略か、物理的な侵略か、帝国に仇なすのか?誰だかと繋がっているのか。色々調べないといけないが、今のままでは少なくとも僕の命が危ういのは確かだ。とりあえず宿屋に戻って、頭とドロップの整理をすることにした。



 宿屋に戻り、そのまま部屋に入った。荷物を下ろし、装備を着替え、ソファーに座り、ドリンクの用意をしてゆったりした気持ちになり、まずはと、スキルを見ると

「はぁ~~?」


 目が点になった

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スキル 腕力のきのみ 1粒 ×107,121

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 3日で10万を超えるモンスター達を倒してきたのか・・・。すげーあいつらと、心でつぶやいた。いくつかのパーティーに分かれていたといえ、約2秒に一体倒してきた、あいつら化け物か?召喚獣だけど、多分全部食べれば、腕力は、世界トップクラスになるだろう。だが、今なってもバランス悪く戦いにマイナスだろうと、腕力をあげるのはやめたが、ゴレ吉のレベルは500近くまで上がるので上げることにした。

 次に、アイテムを見ると全て悪魔の心臓だった。

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アイテム 悪魔の心臓 レベル1 ×371

アイテム 悪魔の心臓 レベル2 ×926

アイテム 悪魔の心臓 レベル3 ×5,068

アイテム 悪魔の心臓 レベル4 ×11,336

アイテム 悪魔の心臓 レベル5 ×8,360

アイテム 悪魔の心臓 レベル6 ×12,133

アイテム 悪魔の心臓 レベル7 ×66,154

アイテム 悪魔の心臓 レベル8 ×2,773

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 悪魔の心臓レベル1を動力としたゴーレムは、10キロの物を1秒間に1メール運ぶ力を生み出せ、魔石レベル1が1つで一日稼働すると言われている。レベルが倍になれば動力が倍になる。例えば、レベル8なら、1280キロの物を1秒間に1メール運ぶ力だが、10キロにすれば1秒間に128メートル。舗装された真っ直ぐな道路では、時速481キロになる。自重があるので、その速度に耐える馬を作ると相当遅くなってしまう。だが、僕の持っている量は尋常じゃないので、例えば、レベル8を128個合わせてレベル15にすれば、時速481キロで1280キロの物を運べる。2頭立てにすれば荷馬車を舗装されてなくても100キロ以上の速度で運ぶことは可能だ。約1時間でセイレーンとアクアを繋ぐ輸送ラインが出来れば、アクアは繁栄するかな?とも考えたが、もっと近い港町バーモンドは、平地だし30分足らずで行ける。根本的な変化が必要だ。そんなことを考えつつ、スーパーレアを見た、一部ノーマルと被るので、ノーマルになり、数は少なく見えているが、


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スーパーレア オリハルコン 1キロ ×40

スーパーレア ダマスカス鋼 1キロ ×1,008

スーパーレア ミスリル 1キロ ×1,212

スーパーレア 土の魔石 レベル10 ×371

スーパーレア 土の魔石 レベル11 ×841

スーパーレア 土の魔石 レベル12 ×4,755

スーパーレア 土の魔石 レベル13 ×9,481

スーパーレア 土の魔石 レベル14 ×7,132

スーパーレア 土の魔石 レベル15 ×11,825

スーパーレア 土の魔石 レベル16 ×64,398

スーパーレア 土の魔石 レベル17 ×2,672

スーパーレア 魔石 レベル16 ×61

スーパーレア 魔石 レベル17 ×145

スーパーレア 魔石 レベル18 ×964

スーパーレア 魔石 レベル19 ×359

スーパーレア 魔石 レベル20 ×169

スーパーレア 魔石 レベル21 ×547

スーパーレア 魔石 レベル22 ×58

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 硬度としなやかさを併せ持つダマスカス鋼、魔力との親和性が高いミスリル、両方を併せ持つ幻と言われているオリハルコンが普通にあった。これだけで、ひと財産で済まない。魔石もレベル22だと1つで100万ゴールド以上の価値がある。まあ、ゴーレムの動力にピッタリだろう。土の魔石も大量に有れば、より効率的に白き薔薇団の作業が進むので、今度納品に行ってこよう。

 次は、レアだ。

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レア 魔石 レベル1 ×371

レア 魔石 レベル2 ×926

レア 魔石 レベル3 ×5,068

レア 魔石 レベル4 ×11,336

レア 魔石 レベル5 ×8,360

レア 魔石 レベル6 ×12,133

レア 魔石 レベル7 ×66,154

レア 魔石 レベル8 ×2,773

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 これだけでもすごい価値だが、何か雑魚く感じる。この感覚が慢心に繋がるので気をつけなければと心に誓った。

 最後にノーマル。

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ノーマル ガラス 1キロ ×371

ノーマル ガラス 5キロ ×402

ノーマル ガラス 20キロ ×177

ノーマル 桐 1本 ×871

ノーマル 桐 20本 ×651

ノーマル 桐 4本 ×1,264

ノーマル 黒檀 1本 ×298

ノーマル 黒檀 4本 ×1,123

ノーマル 黒檀 20本 ×309

ノーマル 杉 1本 ×332

ノーマル 杉 4本 ×568

ノーマル 杉 20本 ×98

ノーマル 赤松 1本 ×1,143

ノーマル 赤松 4本 ×1,264

ノーマル 赤松 20本 ×807

ノーマル 唐檜 1本 ×891

ノーマル 唐檜 4本 ×911

ノーマル 唐檜 20本 ×660

ノーマル 楓 1本 ×494

ノーマル 楓 4本 ×1,048

ノーマル 楓 20本 ×766

ノーマル 大理石 1キロ ×2,211

ノーマル 大理石 5キロ ×2,464

ノーマル 大理石 20キロ ×1,084

ノーマル 御影石 1キロ ×2,187

ノーマル 御影石 5キロ ×1,838

ノーマル 御影石 20キロ ×1,139

ノーマル レンガ 2000個 ×313

ノーマル レンガ 10000個 ×609

ノーマル レンガ 40000個 ×712

ノーマル 粘土 1キロ ×211

ノーマル 粘土 5キロ ×253

ノーマル 粘土 20キロ ×48

ノーマル 鉄 1キロ ×512

ノーマル 鉄 5キロ ×832

ノーマル 鉄 20キロ ×312

ノーマル 鋼 1キロ ×414

ノーマル 鋼 5キロ ×426

ノーマル 鋼 20キロ ×121

ノーマル 玉鋼 1キロ ×924

ノーマル 玉鋼 5キロ ×83

ノーマル 玉鋼 20キロ ×73

ノーマル 銅 1キロ ×2,502

ノーマル 銅 5キロ ×3,096

ノーマル 銅 20キロ ×1,765

ノーマル 銀 1キロ ×2,193

ノーマル 銀 5キロ ×2,987

ノーマル 銀 20キロ ×412

ノーマル 金 1キロ ×3,874

ノーマル 金 5キロ ×2,621

ノーマル 金 20キロ ×221

ノーマル アクアマリン 小玉 ×5,171

ノーマル アクアマリン 中玉 ×58

ノーマル アメシスト 小玉 ×4,675

ノーマル アメシスト 中玉 ×36

ノーマル アレキサンドライト 小玉 ×5,267

ノーマル アレキサンドライト 中玉 ×2

ノーマル エメラルド 小玉 ×4,898

ノーマル エメラルド 中玉 ×14

ノーマル オパール 小玉 ×4,051

ノーマル オパール 中玉 ×33

ノーマル ガーネット 小玉 ×5,854

ノーマル ガーネット 中玉 ×14

ノーマル サファイア 小玉 ×3,240

ノーマル サファイア 中玉 ×49

ノーマル ダイアモンド 小玉 ×5,670

ノーマル ダイアモンド 中玉 ×11

ノーマル トパーズ 小玉 ×5,578

ノーマル トパーズ 中玉 ×55

ノーマル ベルベット 小玉 ×4,922

ノーマル ベルベット 中玉 ×53

ノーマル ラピスラズリ 小玉 ×4,286

ノーマル ラピスラズリ 中玉 ×43

ノーマル ルビー 小玉 ×3,332

ノーマル ルビー 中玉 ×7

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 ガラス、木材、石系、土系、金属系、これだけあれば色々な物の生産に充分な量となるだろう。鉄や鋼が若干少ない感じだ。金がこれだけあれば、相場が崩れるが、なぜみんなこの迷宮を攻略しないのかと思うくらい、価値が高い内容だ。それ以上に、誕生石と呼ばれる高度な魔道具や、魔法の杖等で重要な物資も大量に取得できている。この大半は、スノーさんと、大工房に預けようと思った。

 その日はそんな確認をした後で、ゆっくり寝ることにした。

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