第1話 嘘つき?

「あそこか。」


 僕は、通りを真っすぐ進み、そのままその建物に入っていった。


「すみません。」

「何でしょう。」

「クラン アクアのクラン長代理のアレックスと言います。今日市に参りましたので、その足で市の代表の方にご挨拶に参ったのですが。」

「そうですか、少々お待ちください。」


 アクア市の受付の女性は、上司の様な人と相談し、戻ってきた。


「アレックスさん、挨拶は結構です。」

「そうですか、一応、オーナーからよろしくお伝え頂くよう言われてきましたので、その旨よろしくお願いします。」

「わかりました。」

「ところで、この市の税金とかは、」

「えーっと、クランの方は、セイレーンで納税等を行っていただけば結構です。基本的に、税制はセイレーンと変わりませんので。」

「えっ、わかりました。」


 そう言うと、市庁舎から出て、隣のクラン拠点に向かった。


「すみませ~ん。」

「は~い。」

 奥の方から、赤ちゃんを抱いた女性が出てきた。


「ジジーンさんですか?アレックスです。」

「はっ、クラン長代理ですか。聞いてた通り、お子ちゃまですね。」

「ははは、そうですね。僕はアリア様のクラスメイトで、アリア様の道楽に付き合わされたものです。実家が寄子の騎士爵家なので、」


 僕は、笑みを浮かべた。


「そうですか、大変ですね。」

「お互い様です。ジジーンさんは、確かこの街が常駐騎士の、」

「そうです。常駐騎士ハーラウェイの妻です。一応事務は出来ますので。後、宿舎や掃除に何人か雇っています。」

「わかりました。とりあえずの予算として、50000ゴールド預かってきましたので、帳簿付と管理をお願いします。」


 ジジーンさんにお金と帳簿を渡した。


「わかりました。お預かりします。今日は、」

「今日は、街中の宿をとってます。明日以降も宿をとっていこうと思ってますので、」

「はぁ、わかりました。」

 そして、二言、三言交わした後、ジジーンさんから


「ハーラウェイがご挨拶したいと申していたんですが、よろしいですか?」

「私から伺いますよ。市庁舎では、受付に行ったら挨拶不要と言われたんです。挨拶にと思って行ったんですが、私自身クラン長代理とは言え、単なる冒険者なりたての新米冒険者、多少思いあがっていたことを痛感しました。まあ、クランの税はセイレーンに納めれば良いとのことなので、納税等はセイレーンの白き薔薇団にお願いしちゃって楽ですけどね。」

「そうですか。ハーラウェイは、大体大門脇の監視塔の事務所にいますから。」

「わかりました。では、後で行ってみます。明日は夕方きますね。」

「かしこまりました。頑張ってね。アレックス君。」


 そう言って、挨拶を済ませ、そのまま監視塔の事務所に行った。


「すみませ~ん。」

「はい。どうしました?」

「僕は、アレックスと言います。最近出来た冒険者クラン アクアのクラン長代理ですが、ハーラウェイさんいらっしゃいますか?」

「あの、姫の道楽って、ごめんなさい、ハーラウェイ隊長ですね。こちらになります。」


 そう言って、15歳くらいの少年騎士が奥の執務室まで連れて行ってくれた。


 トントントン


「隊長、ローデックスです。アクアのクラン長代理がいらっしゃいました。」

「は?」


 そう言って、急いでドアが開くと、驚いた顔の25歳位の青年騎士が立っていた。


「さあ入って。」

「はい。」

「ローデックスありがとう、君は執務に戻って。」

「はい。」


 そう言って、僕は中に入り、僕をソファーに座らせた。


「これは、本来私が行くべきところ、来て頂きすみません。」

「いえいえ、奥様に来て頂いており、お世話になりますので、」


 そんな話をし始めると、机なメモに文字を書き出した。


「アリア様のクランですから、私はアクアの警備隊長ですが、騎士爵家の五男坊で、下級騎士ですから、私の方から伺うべしものです。」(盗聴器が付けられてます。)


 僕は、メモの内容に一瞬たじろいだが


「僕も、騎士爵の五男坊で年下ですから、僕から伺うべきですよね。話し方が慣れなくて申し訳ないですが、わかりました。」

「わかって頂ければ、この次からは私から伺いますが、妻がいると色々不都合があるので、」

「奥様が不都合って、まぁ、騎士ですから色々ありますよね。」

「そうですね。ご迷惑かけます。」

「そういえば、この街で挨拶しておいた方が良いのは、どなたですか?」

「各ギルド長ですか?それぞれ癖がありますが、」

「たとてば?」

「商人ギルドのモーリシャス、職人ギルドのラッツ、港ギルドのハーメリックですかね。」

「どんな方ですか?」

「まあ、モーリシャスは、好々爺って感じです、商人ぽくない感じですかね。ラッツは、この街を何とかしようと頑張ってる青年ですか。ハーメリックは、金と女に汚い男です。」

「仲良くするには、どなたですか?」

「モーリシャスかな?金あるし、人でも多く抱えてるから。」(×、△、○)


 意外な反応だった。ハーメリックがまともで、モーリシャスはダメか。


「お金は、アリア様からそれなりに頂いてますので、皆さんにご挨拶しますね。」

「まぁ、それが良いでしょうね。」

「そう言えば、君の父上は?」

「フリッパー・リバースです。今、セイレーン騎士団の中隊長で、帝国少佐のはずです。」

「リバース卿か、リバース卿には、見習い時代お世話になったなぁ。私の父は、ローデン・フラモント帝国少佐、セイレーン騎士団の事務長だよ。父上と同輩のね。」

「そうですか、父同様、仲良くして下さいね。」

「こちらこそ。」

「では、明後日、迷宮に潜るので、入口までご案内頂けませんか?」

「あぁ。」

「出来れば、父上のお話を聞きたいので、お一人でお願いしたいのですが。」

「そうか、お望みとあらば。」

「では、明後日朝に事務所に伺いますので、」

「了解した。楽しみにしているよ。」


 そう言って、事務所をでて、まだ明るかったので、街中をぶらついた。空き地がやけに多いように思えた、港町なので荷置き場かとも思うが、少し多いかもしれない程度だった。また、活気の無い商店街の物価は、セイレーンより多少高いくらい。輸送費と考えればおかしな水準ではない。普通に考えれば、宿屋の娘さんが嘘つきで、何のために嘘をついたのか?面白い半分に探ってみることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る