1‐2 野性味あふれる異世界へようこそ
第4話 行き来は自由らしい
この異世界への扉、仮にゲートと呼称する。
ゲートから出て、異世界の大地をふみしめた。
緑が豊かな土地だ。見渡す限りの大森林。
ここが地球ではない理由は、空を見ればわかる。
地球からはあんな巨大な星は見えない。
月の10倍は大きい天体が青空の向こうにうっすらと見える。
つまり異世界=異星という事だ。
異星へ来たらどうなる? と常々考えていたことがある。
はたしてそこは地球と同じ環境なのか?
まず、
だから、いきなり倒れるかもしれない。
倒れたところで死ぬ事は無いのだろうが、意識が戻らず動けなくなる事は問題だ。
ゲートに戻れないからだ。
地球側に戻れず、ジ・エンド。
というのが、想定される最悪のシナリオだ。
なので、慎重に、ゆっくりと息をすることにしよう。
すぅぅぅぅううう…………。
「――――――うむ。空気がうまぁああい!!」
とんでもなくうまいなぁ! 清涼感が体にしみわたる!
湖の湖畔、新緑が広がる林を思い出させる。
見上げた空もどこまでも蒼いんだ。
ゆるゆるとふく風がとても気持ちがいい。
磁場が狂った、真っ赤な空しか見ていなかったからなぁ。
「次は動物だ! どんな外見だ? どんな生態をしている!?」
俺は、俺以外の活動する生命の存在を確かめたかった。
地獄のような状況になり果てた地球。
ここは、あそことは違うのだと安心したい。
「ふふふ、犬っぽいのがいいなぁ。猫よりも犬派なんだ俺は」
少し歩くと水場があった。
大きな水場だ。底が深く見通せない。
「ふむ。水……水か。魚はいない。――飲めるか?」
手ですくい匂いを嗅ぐ。おかしな匂いもしない。見た目も水だ。
毒だとしても、最悪苦しむだけで死にはしないはずだ。
なにせ不死身の体だからな!
将来の目標の一つに『他の惑星に降り立つ』がある。
以前シミュレーションしてみた。
まったく未知の惑星に行ったら何が必要か?
しかし、これがとても面倒なんだ。
考えれば考えるほどうんざりするほど時間が必要だ。
降り立った後も数週間は、検査に費やして宇宙船から出られない事だろう。
人間は本当に簡単に死ぬ。
生存するために、環境はセットで考えなければならない。
「だがしかーし。不死身の体というのは良い! 病気に冒されても、最悪自分を
おもいっきり飲んだ。
「…………うま」
水だった。確かに水だ。
そしてとんでもなくうまかった。こんなうまい水があっていいのか?
アル〇スの天然水よりもヴォ〇ビックよりもうまい!
「ふふ……ふははは、ここは良い。とても良いな! 人間が生きる環境がある。まるで極上のキャンプ地にでも来たようだ」
生きている。俺はそう思った。
時が止まった地球にいるよりもかなり気が晴れた。
ここまで地球と環境が似ていれば、人類に近い種が繁栄している可能性がある。さらには、意思疎通ができるかもしれない。
「うむ。ここを
俺は浮かれていた。
だから、背後の水場の奥深く。
底からゆっくりと上がってくる影に気づかなかったのだ。
ざばぁ!!!
「い、……なぁああああ!!!?」
引きずり倒されたと同時に襲う、強烈な痛み。
脚だ。焼けたような鋭い痛みが走っていた。
「い、いったいなにが……うおおおお!?」
俺は見た。
黒光りするごつごつの肌。
二対の目はぎょろりと意思を感じさせないものだ。
俺の足をガジガジと咬みながら、引っ張り込もうとするのは、ワニのような動物だった。だがとんでもなくデカい。力も強い、ずるずると引きずられる。
「な、なんだと……んぎっ!?」
ぎざぎざの歯を持った口が俺の胴体を挟む。ゾブリと腹に鋭い歯がめり込む感覚ののち、ゴギンと音が響く。下半身の感覚が一切失われた。
「ああ、ああああ~~~」
天高く放り投げられた俺は、血と、内蔵の一部をまき散らしながら回転した。
空が、森が、水面がくるくると視界の端をかすめる。
垂直に近い放物線を描いた俺。
頂点で運動エネルギーを使い果たし落下をはじめた時、もう意識を失いかけていた。
最後の視界。
その先にあるのはやつの大アギトで。
ぱくん。がり、ぼり、ぐちゃぐちゃ
俺は死んだ。
◆◆◆
「――――――はっ!?」
次に気が付いた時、俺は真っ裸で泥の中にいた。いや泥かこれ? 泥にしては臭い……って、これうんこだ!!!!
「な、な、な、なんじゃこりゃあ!!?」
訂正。俺はバカでかいうんこの中にいた。最後に見た光景を思い出し、こんなヤバいうんこをする動物はあいつしかいないと思う。
「……捕食された後、消化されたという事か」
流石にぞっとした。うんこになるほどバラバラにされても復活する事がわかったのは良かったが!! うんこだと!? 排泄されなかったらどうなっていたのか……
「せ、戦略的に撤退する!」
急いでゲートまで戻った。
光をくぐると、見慣れた我が家の庭だ。
「うんこを落としたいのに、風呂が使えない。湯が出ないのは問題だ……」
全身から匂う香ばしさに、少し心がめげそうになる。
どこかに、俺が触らなくても動く発電機は無いのか!?
「不死身だとしても、異世界、
俺は気を引き締めなおす必要を感じていた。
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