第271話 夏はエアコンの下でアイス!


 ちょっと首をひねったので回復ポーションを飲んで癒すと、カエデちゃんが麦茶を持ってきてくれたので一息ついた。

 そして、リディアちゃんがシャワーを浴び終えて戻ってきたので今度はナナポンに風呂に行かせた。

 しばらくすると、ナナポンも上がったので最後に俺が風呂に行き、シャワーを浴びる。

 軽くシャワーを浴び終えると、脱衣所で身体を拭く。

 すると、脱いで投げてあった黒ローブも下着もなかった。


「ミーア、着替えはー?」

『近くに置いてありますよ』


 脱衣所の外で待っているであろうミーアにそう言われたので探してみると、確かに台の上に置いてあった。

 服は夏のエレちゃんセットだった。

 俺は着替え終えると、脱衣所を出る。


「わざわざ洗うの? 大変じゃない?」

「いえ、それが仕事です。それに夏は早めに洗わないといけません。あ、冷蔵庫にアイスがありますのでどうぞ」


 本当にできた子だなー。


 俺はリビングに戻ると、キッチンの冷蔵庫からアイスを取り出し、ソファーに座って食べだした。


「あー、夏はこれよねー」


 風呂上がりのアイス美味い。

 しかも、結構動いたからより美味しく感じる。


「エレノアさん、大胆ですねー」


 百合ポンがそう言いながら俺の太ももを撫でる。


「歳を考えた方が良いね」


 アルクがまたしても暴言を吐くが、俺は気にしない。

 最近、こいつの挑発レベルを8にすべく頑張っているのだ。


「夏は暑いからね。すべすべでしょう?」

「そうですね。美脚です」


 そうだろう、そうだろう。

 これがポーション風呂だ。

 夏はポーション風呂が楽でいい。


「よし、ナナカさん、あなたに良いものを見せてあげるわ」

「え? えっちなやつです? 沖田さん……」


 なんでやねん。

 脱がんわ。


「そんなものよりも良いものよ。ミーア、ペットボトルを持ってきてナナカさんの頭に乗せなさい」

「はい?」


 ミーアが首を傾げる。


「何をするんです?」


 ナナポンも首を傾げながら聞いてきた。


「私のきれいな後ろ回し蹴りを見せてあげる」


 いつぞやのガキにお見舞いしていたやつだ。

 あの時はパンツを見られてしまったが、今日は大丈夫。


「嫌ですよ! 絶対にペットボトルと見せかけて顔を蹴る気でしょ!」

「そんなことしないわよ」


 俺は女子に暴力を振るわない。


「する気だー。絶対にする気だ。普段から沖田さんをディスってる私への不満を爆発させる気だ」


 自覚あったんか?

 ならやめーや。


「爆発したらあなたの首の骨が折れるからしないわよ」

「えー……嘘ですよね? 私のこと嫌いじゃないですよね?」

「はいはい。嫌いじゃないから足を撫でるのをやめなさい。くすぐったいわ」


 百合ポンは百合度が高くていかんわ。

 カエデちゃんを寝盗ったらマジで首を刎ねるからな。


「それでどうだったの? 終わった?」


 俺とナナポンがしょうもないやり取りをしていると、アルクが聞いてくる。


「ええ。無事に地図を描き終えたわ。カエデちゃん、今度出勤する時でいいからサツキさんに渡しておいてくれる?」

「わかりましたー……明日です」


 あっ……


「可哀想に……よしよし」

「うえーん、辛いよー」


 カエデちゃんの背中を撫でると、カエデちゃんが抱きついてきて泣く。


「週一出勤で絶望してる…………御二人は社会を舐めた存在になってしまったんですね」


 お前もだろ、カンニング女。


「そのために心を鬼にして頑張ってきたのよ。狭いボロアパートで2人で勝ち組になろうと誓い、安酒を飲んだわ」


 まあ、最高のキャバ嬢がいたから楽しかったけど。


「懐かしいですねー」


 ねー?


「今でもビールじゃないですか」

「あのね、高いお酒は味がわからないの。ビールと発泡酒の差もわかんないのよ?」

「わかりませんよね。高いワインも買いましたけど、カシスの方が美味しかったです」


 これが庶民よ。


「お酒を飲まないからわからないけど、この世界はどれも洗練されているからでしょ。それで地図を描き終えたんだったら仕事は終わり?」


 アルクが話を戻した。


「そうね。あんたもリディアちゃんもご苦労様」


 特にリディアちゃんのホ、ホーリーライトは良かった。


「いえいえ、私も楽しかったです」


 確かにリディアちゃんは楽しそうだったね。


「僕は転移で運んだだけだから何もしてないね」

 

 それが大事なんだよ。

 エレノアさんは外を歩けないもん。

 アメリカ以外のエージェントに何をされるかわからんわ。


「あ、そうだ。リディアちゃん、あの本は何だったの?」


 リディアちゃん、洞窟の奥にあった本のことを聞く。


「本?」

「洞窟の奥に部屋があってね。どうやら鉱山跡じゃないっぽかったのよ。その部屋に本棚があって結構な数の本があったから回収してきたの」

「へー……なんか怪しいね」


 俺もそう思う。

 でも、読めないんだよな。


「本は魔法の禁忌について書かれていました。ほとんどの本が解読不可能でしたが、数冊は読めましたので回収した方が良いと判断したんです」


 禁忌……


「魔法に禁忌があるの?」

「あります。主に命に関わることですね。人を蘇らせる魔法とかです」


 人を蘇らせる……

 命の結晶……


「あの部屋の主は錬金術師じゃないわよね?」

「おそらくは違います。もしそうならとっくに生命の水を作っていると思われますし、そういう魔法を研究する必要もありません」


 まあ、そうかも。


「禁忌の魔法の研究ねー。それであんなところに住んでたのか……絶対に犯罪者ね」

「恐らくそうだと思います。ですが、身元がわかるものが何も残っていませんでしたので詳細は不明です」


 フロンティアは死んだら煙となって消えてしまうからなー。

 しかも、かなり古い時代のことだろうし、わからんか。

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