第264話 サバゲ―少女


 電話を切ると、スマホをテーブルに置く。

 すると、カエデちゃんも電話を終えたようでリビングに戻ってきた。


「先輩、サツキさんに伝えました。すぐに本部長さんに伝えるそうです」


 カエデちゃんはそう言いながら隣に座る。


「ありがとう。こっちもクレアに伝えた。そういうわけで明日リディアちゃんと一緒に行ってくるわ」

「私もですよー」


 姉弟子さんがアピールをしてくる。


「はいはい。リディアちゃん、明日9時集合だからね」

「わかりました。準備しないと」


 リディアちゃんはそう言うと、立ち上がり、ミーアを連れてリビングから出ていった。


「準備って何?」


 よくわからないのでアルクに聞いてみる。


「さあ? 服とかじゃない?」


 運動用の服かな?


「一応、聞くけど、リディアちゃんは戦える?」

「魔法は得意だけど、それ以外はからきし」

「動ける?」


 そう聞くと、アルクが首を横に振った。


「見た目通り、運動神経は良くないね。まあ、人のことは言えないんだけどさ」


 やっぱりか。

 洞窟は足元が悪いから注意しないとな。


「まあ、気を付けるわ」

「お願い」


 俺達は明日の予定を決めると、特にやることがなくなったので家でゆっくり過ごした。

 そして翌朝、やっぱり寝ているカエデちゃんを起こさないように部屋から出ると、リビングに向かう。

 すると、アルクとリディアちゃんがすでに起きており、朝食を食べていた。


「おはよう」

「おはようございます」


 2人が挨拶をしてくる。


「おはよー……この家に5人で住み始めて数ヶ月経つが、いまだに皆揃って朝食を食べたことがないな」


 そう言いながら席につくと、ミーアが朝食を持ってきてくれた。


「全員、仕事がないと起きないからね」


 まあ、仕方がないだろう。

 まだ勝手に目が覚める年齢でもないし。


「だよなー……ミーアは食べたん?」

「私はすでに食べました」


 ミーアって何時に起きているんだろう?


「ミーアは偉いなー」

「そうですかね? 普通なんですけど……」


 普通か……

 普通って何だろう?

 残業と土日出勤地獄と楽な冒険者暮らししか経験していない俺にはわからない。


「こういう奥さんって良いよね。でも、ごめん。俺にはカエデちゃんがいるんだ」


 かわいいもん。


「なんで何もしてないのにフラれたんですかね?」


 ミーアが呆れたようにアルクに聞く。


「そいつの言動にいちいち反応しない方が良いよ」

「それもそうですね……」

「あ、ミーア、お風呂を用意しておいて」

「…………かしこまりました」


 その後、朝食を食べ終えると、風呂に入り、エレノアさんにチェンジする。

 そして、リビングに戻ると、ナナポンがコーヒーを飲んで待っていた。


「おはようございます」

「おはよう」


 席につくと、ミーアがコーヒーを置き、ポニテを作ってくれる。


「メイドさんも大変ですね」

「そんなことはないですよ」


 ミーアがやんわりと否定した。


「前から思ってたんですけど、給料とか出しているんですか?」

「知らない。カエデちゃんに聞いて」

「把握していないんです?」

「もう数えるのも面倒なのよ。毎月、大量のお金と金が手に入るしね。最近はクレアから金を受け取っても確認すらしてないわ」


 最初は金の延べ棒でピラミッドを作ったりしてたが、最近は飽きたのでアイテム袋に入れて投げてある。


「まあ、量が量ですもんねー。ところで、リディアちゃんは? まだ寝てます?」


 言われてみればリディアちゃんがいない。


「アルク、リディアちゃんは?」

「着替えてくるってさ」


 着替えねー……

 ジャージとかの運動着かな?

 さすがにドレスはないだろうし、こっちの服だろう。


 俺達がコーヒーを飲みながら待っていると、扉が開き、リディアちゃんがやってきた。


「お待たせしました。いつでも大丈夫です」

「う、うん……」


 戻ってきたリディアちゃんは迷彩服を着ており、長い髪は三つ編みにし、帽子まで被っている。

 さらにはマシンガンのエアガンまで持っており、どう見ても軍人スタイルだ。

 似合ってるか似合ってないかで言えば、かわいいし、似合っているのだが、違和感はすごい。


「リディア、何それ?」


 アルクが呆れながら聞く。


「戦闘服」

「いや、それはわかるんだけどさ……うーん、まあいいか。でも、その銃は何?」

「これ? エアガン。この前の誕生日に師匠に買ってもらった」


 アルクが仕事でいなかった時に買ってあげた。


「えー……君、何をプレゼントしてんの? 普通、銃を贈る?」


 アルクが避難してきた。


「リディアちゃんが欲しいってねだってきたのよ。さすがに本物は危ないからエアガンにしたけど」


 まあ、そもそも日本じゃ本物は売ってないんだけど。


「マシンガンはなくない? 普通のハンドガンでいいじゃん」

「リディアちゃんに言いなさいよ。それが良いって言ったの」


 本当はでかいスナイパーライフルを欲しがったが、持てなかったのでマシンガンになった。

 実はちょっとうらやましかった。

 俺もクレアにもらった本物の拳銃を持っているけど、ショボいもん。


「リディア、なんで?」

「別にいいじゃない。かっこいいでしょ」


 かっこよくはないかなー……

 まあ、最近は人がいっぱい死ぬ戦争映画をよく見ているからその影響だろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る