第250話 贈り物


 パーティーの時の動きを決めた俺達は一度、会場を出て、アルクの案内で1階に降りる。

 そして、控室みたいなところに案内され、かなり早い昼食を食べることになった。

 料理はかなり豪華であり、アルク曰く、立食パーティーの料理をコース風にしたものらしい。

 さすがに王族のパーティーなだけって豪華だ。


「美味しいです! でも、このお肉、何ですかね?」


 初めてフロンティアの料理を食べたナナポンが聞いてくる。


「知らない」

「私もいまだによくわからんが、食べられるなら別に何でもいいだろ」


 俺とヨシノさんは何度も食べているし、おかわりもしたが、よくわかっていない。

 前になんちゃらという名の肉だと聞いたが、名前だけを聞いてもどんな生き物なのかも見ていないので知らない。


「御二人は大物ですね。さすがはユニークスキル持ちです。人肉だったらどうするんですか?」


 その発想に至り、口に出すお前もユニークスキル持ちって感じがするわ。


「ナナカ……君、ものすごく怖いよ……」


 アルクもちょっと引いている。


「やっぱりこの子、夜な夜な猫とか犬を殺してるわね」

「何ですか、そのサイコ女は!? そんなことしてませんよ! 犬とか猫とかの動物は大好きですよ! 私のウサギちゃんが見えませんか!?」


 だってねー……

 普通、人肉とかいうワードは出てこないだろ。


「アルク、前にユニークスキルにもランクがあるって言ってたわよね? 透視はどうなの?」

「透視はデータが少ないけど、以前に持ってた人はかなりヤバい人って聞いているね」

「そうなの?」

「透視を使ってあちこちの情報を盗むスパイだったらしいよ。それで各国を混乱させ、ついにはどっかで殺されたらしい」


 人のこと言えないが、透視も中々にひどいな……


「あなた、怪しい国とかに捕まらないようにね。あと変なこともやめなさい」

「そうします。嫌な未来しか浮かびません」


 ナナポンの顔が青い。

 一回捕まっているからだろう。


「私の完全記憶はどうだ?」


 ミスユニークも気になるらしい。


「完全記憶ねー……それもあまり情報がないね。でも、悲惨な死に方をした例がある」

「何、何? 気になる」

「ヨゴレさんはどういう未来を歩むんです?」


 俺とナナポンは興味津々だ。


「お前らな……」


 ヨシノさんが呆れた顔をする。


「私とナナカさんの未来は自害と殺害よ? あなたも知っていた方がいいわ」

「そうですよ。アルクちゃん、教えて」

「えーっと、完全記憶って見た物を覚えるどころか、記憶をどっかにしまっておいて引き出すことができるんだよ。君らの世界にあるパソコンとかのハードディスクに近い。だから人間パソコンにさせられちゃって容量オーバーで発狂かな……色んな情報を無理やり詰め込みすぎて、自我がなくなっちゃったらしい」


 脳がパンクしたのかな?


「なんかあんたらの世界も結構ひどいわね」

「どこも一緒でしょ。君達の世界は科学が発展したからそれで悪用。僕らの世界はスキルで悪用。人が考えることは一緒だよ」


 人間って怖いなー。


「エレノアさんのユニークスキルはもちろんですけど、他のユニークスキルもバレたらロクな目に遭わない気がしますね」

「だと思うよ。まあ、管理する側からしたら把握しないと困るけどね。君らは満たされているから悪用しないんだろうけど、心に余裕のない人間はすぐに犯罪に手を染める」


 余裕のない人間……

 犯罪……


「横領の常習犯」

「覗き魔」

「説明不要の魔女」


 俺がヨシノさんを指差し、ヨシノさんがナナポンを指差す。

 そして、ナナポンが俺を指差した。


「ごめん。君ら、犯罪者だったね」


 俺は微妙じゃね?

 物を作って売っただけだ。


「アルク、言っておくけど、あなたも不法滞在者だからね」

「…………リディア呼んでくるー」


 アルクはそそくさと控室から出ていったので食事を続ける。


「あなた達も引き際は考えなさいね。いずれユニークスキルのことが世に出るとバレるわよ」


 俺はもう自分の2枚のステータスカードを回収している。


「私は問題ない。管理する側だ。新宿支部で新規の冒険者のステータスカードを見る仕事もあるからな」

「あ、私もギルマスさんに確かめろって言われてステータスカードを見せられました」


 そっか。

 こいつらは冒険者というよりもそっち側の人間だったな。


 俺がこいつらは大丈夫かーと安心していると、ノックの音が部屋に響いた。


「どうぞー」


 入室の許可を出すと、ミーアを連れたリディアちゃんが控室に入ってくる。

 ミーアはいつものメイド服だが、リディアちゃんは真っ白なドレスを着ており、うっすらとだが、化粧をしていた。

 さらにはウェーブがかかった髪をまとめ上げ、銀色の髪飾りを着けている。


「師匠、ヨシノさん、ナナポンさん、本日はありがとうございます」


 リディアちゃんは俺達の前に来ると、にっこりとほほ笑んだ。

 その姿は品があり、どう見てもこっちが王女様だ。


「いや、君らのためならいくらでも働くよ。それにしてもきれいだね」

「本当ですよねー。リディアちゃん、お姫様みたい。でも、ナナポンさんはやめてね」


 ヨシノさんとナナポンがリディアちゃんを称賛する。


「ありがとうございます」


 リディアちゃんはちょっと照れている。


「リディアちゃん、アルクは?」


 呼びに行ったんじゃないの?


「アルクも準備です。主役はあの子ですから」


 アルクの次期王様指名と結婚の発表だからな。


「ふーん……まあいいわ。はい、これあげる」


 カバンからネックレスを取り出し、リディアちゃんに渡す。

 すると、リディアちゃんがじっくりとネックレスを眺めだした。


「これは?」

「この前、欲しがってたでしょ。私とカエデちゃんからあなたに結婚祝い」


 先週、パフェを食べに行った時にアクセサリーショップも覗いたのだが、その時にリディアちゃんがきれいですねと言っていたネックレスだ。

 結構……いや、かなり高かったが、弟子の祝い事のためだ。


「あ、ありがとうございます……ミーア」

「はい」


 リディアちゃんがミーアにネックレスを渡すと、ミーアがリディアちゃんの後ろに回る。

 そして、ゆっくりとリディアちゃんの首に着けた。


「かわいいね。似合ってるわよ」

「ありがとうございます」


 うんうん、かわいい弟子だ。

 かわいくない方は後でいいや。

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