第223話 最近、アルクが我が物顔で家をうろつくようになった
クレアと話を終えた俺は説明会のことをアルクとリディアちゃんに相談し、詳細を詰めた。
リディアちゃんは夜になると、フロンティアに帰っていったが、アルクはそのまま家に泊まっていった。
翌日の1月2日になると、カエデちゃんが帰ってきたため、3人で初もうでに行き、帰りに新春セールを見にいった。
そして、正月が終わってから数日経ち、新年の気分が終わったあたりでサツキさんから電話がきた。
『ギルドから正式にオークションと説明会の開催をすることの許可が下りたぞ』
「それは良かった。ひとまずは安心だな」
『アメリカが声明を出したことで他のいくつかの国も声明を出したからな』
それは俺もネットニュースで知っている。
アメリカに続けとばかりに参加表明と自国でのオークション開催を許可する声明をだしたのだ。
なお、日本は声明を出していない。
まあ、アメリカと組んでいるからその必要性がないのだろう。
「日程とかは決まった?」
『説明会はお前の都合に合わせるそうだが、3週間は待ってほしいそうだ。各国に通達したりの準備がいるからな』
まあ、それくらいはいいだろう。
必要なことだし、各国も即決できることではない。
むしろ、3週間はかなり早いくらいだ。
「もっと時間がいるかと思った」
『お前は完全にフロンティア人と思われているんだ。しかも、王族かそれに準ずる位と想定されている。フロンティア人はせっかちだから予定をかなり早めたみたいだな。本当は半年以上は欲しいんだとよ』
半年は長すぎだわ。
「早いに越したことはないからありがたいけどなー。オークションの開催は?」
『説明から1ヶ月以内には開催することを約束するそうだ』
「えらい親切だな」
『ギルドにも10パーセント入るからな』
そういやそうだった。
もし、1000億で売れたら100億が手に入る。
これを他所の国に取られたくないわけだ。
「5パーセントがサツキさんでもう5パーセントが本部長じゃなかった?」
これまでのオークションはそうだったはず。
『日本で開催する場合はそうなるが、今回はギルドの総本山であるWGOが主催者になる』
「WGOって何だっけ?」
『ギルドはどこの国にも所属していない機関なんだ。WGOはギルドのトップって思っておけばいい。そのWGOが各国にギルドを設置する。その代わり、儲けの一部がその国に入るんだよ』
「それで本部長のところに5パーセントが入るわけかー」
『そうそう』
なるほどねー。
「ということはサツキさんはそのWGOの所属なん?」
『そうだぞー。だから本部長も国もエレノア・オーシャンのことを調査できなかったんだ。出頭要請や任意の聴取とかあったが、私が全部拒否した。ギルマスって実はすごいんだぞ』
この人、仕事してたんだ……
「ものすごい失礼なことを言うけど、あんた、よくそんなのになれたな?」
『それだけAランク冒険者って言う肩書はすごいんだ。それに自分で言うのもなんだが、私、すごい優秀なんだぞ』
俺とカエデちゃんを僻んだり、ソファーでゴロゴロしながらソシャゲしてるだけの人かと思ったらすごいらしい。
見直しちゃった。
「教えてくれればよかったのに」
『いやー、冒険者に詳しくないお前に言ってもなー……WGOも知らないんだろ? 公民で習うだろ』
「んなもん、大学に入ったらすぐに忘れたわ」
歴史も地理も公民もぜーんぶ、忘れた。
『だからそんなお前に教えても興味ないだろ。お前は黙って金になるものを売ればいい。あとは私やカエデ、ヨシノに任せろ。適材適所だ』
なるほどー。
餅は餅屋か。
「わかった。じゃあ、授業はどうでもいいわ。それでWGOとやらが主催者なのはわかったけど、オークションはどうやんの?」
『その辺りを説明会後に打ち合わせしたいそうだ。なんと局長が出てくる』
局長?
誰?
俺の名前的に近藤さんか?
「偉い人?」
『ギルドで一番偉い人』
「ふーん…………どんな人?」
『マイケル・スミスっていうカナダ人だ。調べれば出てくるぞ』
どうでもいいな。
どうせ、おっさんかじいさんだろ。
「とりあえず、了解。日本に来るんだよな?」
『そうなる。私のギルドで会うことになるな。流れを言うと、局長は説明会にも同席するから一緒にエメラルダス山脈に行き、説明会をする。終わったら戻ってきて打ち合わせだな』
やっぱり池袋支部か。
「池袋って危険じゃね? 局長さん、大丈夫か?」
『ギルドはフロンティア関係の元締めだ。他国も事務局長に手を出すのは非常にマズいからその日は平和になる。ハリーとクレアもその日はウチのギルドから離れるだろう』
ギルドって怖いな。
「まあ、わかった。アルクに連れていってもらう」
『そうしろ』
「局長さんの護衛は?」
『いっぱいいるんじゃね? ただ、説明会の護衛は私』
お前かい。
「大丈夫かー?」
『ドラゴンが出ても問題ない。秒殺してやる』
この人はこの人で好戦的なんだよなー。
さすが挑発持ち。
「了解。俺はナナポン、アルク、リディアちゃんを連れていくから」
『聞いているし、ギルドもそれは了承している』
カエデちゃんかヨシノさんが言ったのかな?
「じゃあいいや。子供はダメとか言われるかと思った」
『魔女の弟子は魔女…………そう思われている。ナナポンはともかく、他はフロンティア人だと思われてるな』
すごい!
俺以外は合ってる!
「あの2人、バレなきゃいいけど……」
『注目はお前1人になるから大丈夫だろ。それとこの件はマスコミには完全に非公表だからな。言うなよ?』
「家から出ないからマスコミに会うことはないな」
沖田君が言っても誰も信じないしな。
言わねーけど。
『まあ、そういうことだから任せたぞ』
「わかったー。こっちで適当に日程を決める。決まったら電話するわ」
暇な俺やアルクはともかく、大学があるナナポンとその辺がよくわからないリディアちゃんの予定を聞かないといけない。
『ん。頼むぞ。じゃあなー』
「はいよー」
俺は電話を切り、スマホをローテーブルに置いた。
そして、ソファーの背もたれに背中を預け、床で日課のヨガをしているカエデちゃんを見る。
「説明会は3週間後?」
俺がじーっとカエデちゃんの柔らかい身体を見ていると、隣に座っているアルクが聞いてきた。
「そうだな。リディアちゃんに予定を聞いてくれ」
「リディアはいつでもいいと思うけど、聞いてみるよ」
アルクが頷き、了承したので今度はエレノアさんのスマホを取り、操作する。
『ナナカさん、例の説明会だけど、3週間後になりそう。あなたの予定は?』
ちゃーんと、エレノアさんで送らないといけない。
あいつ、うるさいし。
それにエレノアさんで送ると、秒で既読がつくし、返事がくる。
『3週間後は特に予定もないので大丈夫です』
ほらね。
「ハジメー。リディアはいつでもいいって」
俺がナナポンの返事を見ていると、アルクが俺の方を見た。
「早くね? リディアちゃんも念話ができるのか?」
「いや、どうやらウチに来て、陛下と話しているらしい」
王様に聞いたわけね。
「ふーん、ナナポンもいつでもいいって言ってるな。お前、いつがいい?」
「君は黄金の魔女なんだろ? 金曜にしよう」
なるほど。
金繋がりか。
いつでもいいし、それでいくか……
「じゃあ、その日な。俺はナナポンに伝えて、サツキさんに電話するからお前はリディアちゃんに伝えて」
「わかったー」
俺はアルクの返事を聞くと、ナナポンに金曜日になったことをメッセージで伝える。
そして、サツキさんに再び、電話することにした。
よし、これで説明会の日程は決まったな。
後は待つだけだ!
…………うーん、3週間も待つのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます