第216話 一生こき使うことが決定
王様と話を終えた俺は王様の転移魔法で食堂に戻ってきた。
俺が食堂に戻ると、女子連中はすでにお茶会をしていたらしく、テーブルについて優雅にお菓子を食べながらお茶を飲んでいた。
「あ、終わった?」
いまだに鎧を着ているアルクが聞いてくる。
「終わったわよ。アルク、伝言があるわ。王様が納品するポーションを確認したいんだって。届けてきてくれる?」
これは王様に転移される前に頼まれていたことだ。
「了解。じゃあ、ちょっと外すね」
アルクはそう言って、立ち上がると、一瞬にして姿が消えた。
「エレノア様、こちらにどうぞ。すぐにお茶を用意いたします」
ミーアが椅子を引き、座るように勧めてくれる。
「ありがと」
俺は勧められるがまま、カエデちゃんの隣に座った。
「なあ、何の話だったんだ?」
カエデちゃんの対面に座っているヨシノさんが聞いてくる。
「アルクをよろしく的なことね。あとはアルクの姿が変わっていないように見えるからどうなってんのってこと」
「ああ、それか。確かに変わらんな。私もアルクが家のリビングで何度もTSポーションを飲んでは自分のズボンの中を覗いているのを見ていたが、さっぱりわからなかった」
あいつ、ヨシノさんの家で何してんだ?
そして、ヨシノさんも何を見てんだ?
「あの子はまだ子供なうえに美形で中性的だからね」
「といっても13歳だろ。中学生だ」
中学生かー。
「私というか、沖田君は生えてたけど、あの子、生えてなかったなー」
小さいし、成長が遅いのかね?
「君、それ、絶対にアルクに言うなよ。あの後、家に帰ってもクソ魔女って怒ってたぞ」
「めんどくさい子ねー。私は堂々と見せられるわ」
「変態の言葉に聞こえるんだが…………」
…………確かに。
露出狂みたいだ。
「男はあまり気にしないように思うんだけどねー」
「私の弟もそんな感じな気がするが、ここには女しかいないから同意は諦めろ」
女ばかりで嬉しいけど、男の知り合いが少ないのがね…………
ハリーくらいか?
「エレノア様、どうぞ」
俺とヨシノさんが話していると、ミーアが俺の前にお茶を置いてくれた。
「ありがと。あなたはわかった?」
一応、ミーアにも確認してみる。
「いえ……鎧がなければわかると思うんですが…………」
「変だから脱がせるように言って」
「そうします」
ミーアも変だと思っていたらしい。
「しかし、このお菓子、美味しいですねー。お茶もいい香りだし」
黙々とお菓子を食べていたカエデちゃんが満面の笑みで言う。
「ありがとうございます。送っていただいたお菓子も大変、美味しかったです」
アルクの実況だと、このメイドさん、めっちゃ食ってたしなー。
「よかったわね」
「はい。役得です」
太りそうだけど、この人はアルクの護衛を兼ねているって言ってたし、スキルや魔法を使うから太らないんだろうな。
「ただいまー。渡してきたよ」
アルクは王様に各種ポーションを渡してきたようで急に現れた。
そして、自席であろう俺の対面に座る。
「ご苦労さん」
「陛下も喜んでいたよ。ありがとうね」
「いえいえ」
金の延べ棒をもらえるならいくらでも作るわ。
「じゃあ、お菓子を食べよう。ミーアも座りな。一緒に食べよ」
「ですが……」
「いいよ、いいよ。この連中に礼儀なんかいらないから」
非常に失礼な物言いだが、まあ、どうでもいいな。
こいつに礼儀なんか一切、期待してないし、お菓子を食べられれば何でもいいわ。
「では…………」
「ミーア、カエデがくれたチョコパイとクソ魔女がニヤニヤしながらくれた黒いグミだとどっちがいい?」
「…………チョコパイで」
チッ!
勘の良いガキとメイドだ。
◆◇◆
俺達はその後もお茶会を続け、昼になると、客室に連れていかれた。
そして、各々、異世界のホテル(?)を楽しみ、夕方になると、晩御飯を頂いた。
晩御飯はこの前とは違った食材であり、今回も美味しかったし、カエデちゃんとヨシノさんも美味しそうに食べていた。
夕食を食べ終えると、例の広い風呂に入る。
もちろん、俺とカエデちゃん、ヨシノさんは別だし、アルクと鉢合わせすることもなかった。
風呂から上がった俺は部屋に戻ると、備え付けのテーブルに座り、漫画を読むことにした。
なお、妻とは別室である。
「食べ物や飲み物は美味いんだけど、やることがないのが難点だなー」
この前はポーション作りがあったが、今回は何もない。
別に作ってもいいのだが、最近は作ってばっかりだったから休みたいのだ。
「この漫画も読んだやつだしなー。カエデちゃんを誘って飲もうかな?」
俺は暇を持て余したのでカエデちゃんの所に行こうと思い、漫画をカバンにしまう。
すると、ノックの音が部屋に響いた。
「だーれ?」
カエデちゃんかな?
もしかしたらカエデちゃんも俺と同じように暇を持て余したのかもしれない。
「エレノア、僕だよ、僕」
この声はアルクだ。
「鍵はかかってないから勝手に入ってきなさい」
俺がそう言うと、ガチャッと扉が開き、アルク1人が部屋に入ってきた。
「鍵くらいかけたら? 不用心だよ」
「カエデちゃんやヨシノさんはかけるべきだけど、私はいらないでしょ」
性別的に俺が襲う方だ。
さらに言えば、ミーアはともかく、アルクや王様は転移魔法があるから鍵をかけても無駄である。
「そういや、君の家の君の部屋には鍵がかかってなかったね」
それこそいらんわ。
カエデちゃんと2人暮らしだぞ。
「それで何か用? そんなことを言いにきたんじゃないんでしょ?」
「そうだね。実はちょっと困ったことになったんだ」
アルクはそう言いながら俺に近づき、対面に座った。
「困ったこと? トイレ?」
立ってやるのは難しかったか?
「トイレも風呂も問題ないよ。君、セクハラなのをわかってる?」
「性別が変わった同士だから気にかけてあげてるの。それとも王様に相談する?」
「…………それは嫌だね」
親は嫌だろうね。
「まあ、何かあれば言いなさい。私は男歴26年だから」
「何かあればね…………」
うーん、やはり性教育が必要な気がする。
ミーアは…………レッスンになっちゃうか。
それは妬ましいから俺がエロ本をあげた方が良いな。
「で? 困ったことって?」
「実はさー、フィーレのおみやげをリディアにあげたんだ」
ご機嫌取りかね?
「ふーん、会ってきたんだ。この屋敷に呼んだの?」
「いや、転移でリディアの家まで飛んだんだよ」
ホント、便利な魔法だこと。
「すごいわねー。フィーレの食料は喜んでくれた?」
「うん。リディアは甘いものが好きでね。かなりテンションが上がってたよ」
「良かったわね。好感度アップよ」
俺もなんとなくケーキを買ったことがあって、カエデちゃんにあげたら好感度が爆上がりした。
大好きって言ってたし。
「そういう打算があったわけではなかったんだけどね」
俺もなかったわい。
「話を聞く限り、困ったことなんてなさそうだけど…………」
むしろ、惚気に聞こえる。
「それがさー、おみやげを渡すついでに色々と話したんだけど、根掘り葉掘り聞かれちゃってさー。色々あって、魔女を連れてこいって言われちゃった」
魔女…………
俺?
「なんでよ…………というか、ベラベラしゃべるんじゃないわよ。国家機密でしょ」
次期王妃様かもしれないが、今はまだ他人だろう。
「いやー、まあ、色々あってねー。具体的に言うとー、君にもらったグミを食べたリディアが怒っちゃってー…………それで魔女を連れてこいって」
…………………………。
「…………お前、俺のせいにしただろ」
「師匠、助けて…………」
このガキ…………
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