第095話 訪問


 俺はギルドでの用件を終えたので家に帰ることにした。

 どっかのトイレで沖田君に戻って、カエデちゃんと一緒に帰ろうと思ったのだが、カエデちゃんは残業らしい。


 俺は友達の家に遊びに行くというナナポンと別れると、買い物に行き、夕食とオートマップの材料を買い、家に帰った。

 家に帰ると、誰もいないリビングのテーブルに買ってきた材料を出す。

オートマップを作るのだ。


 まず、紙をテーブルに置き、その上にコンパスと鉛筆を置いた。

 準備はこれで終わりである。


 あとは念じるだけであら不思議!

 オートマップの完成だ!


「……ただの紙だな」


 これ、どうやって使うの?


 俺はただの紙を持って、首を傾げる。


「えーっと…………あー、縮尺を書くのね」


 頭の中に使い方が思い浮かんだため、シャーペンで紙の右上に1/50と書いた。


「これで歩くのか……」


 俺は紙を持って、立ち上がると、家の隅々まで歩く。

 すると、紙にどんどんと図が描かれていき、ついには鍵がかかって入れなかったカエデちゃんの部屋以外の見取り図が完成した。


「ふーん、という感想しか出ねーな」


 もしかしたら、例の測量会社さんは買ってくれるかもしれない。

 でも、正直、微妙な感じは拭い去れない。


「すごい技術だが、やっぱり微妙だな。サツキさんにあげよう」


 俺は買ってきたノートの上にコンパスと鉛筆を置き、オートマップノートを作成すると、カバンにしまった。

 そして、弟子が提案したボディーソープポーションを作ろうと思い、買ってきたボディーソープをテーブルの上に置く。

 すると、インターホンが鳴った。


「ん? 誰?」


 俺は立ち上がり、リビングにあるモニターを見にいく。


 俺がモニターを確認すると、そこにはとある部分がモニター越しでも主張していることがわかるヨシノさんだった。


 え?

 家に来たし……

 探っていたのはわかってたし、俺とカエデちゃんの関係を知っていたから家の場所も知っているのはわかるが、直接、来るか?


「はい、何でしょう?」


 俺は通話ボタンを押し、モニターに向かって、声をかける。


『あ、沖田君かい? 急で申し訳ない。ちょっといいかな?』


 どうしよう?

 嫁(予定)が残業で頑張っているのに家に巨乳のねーちゃんをあげちゃうの?

 うーん、まあ、100パーセント、そういうロマンスではないんだろうけどなー……


 俺はリビングを見渡し、見られてマズいものがないかを確認する。


 エレノアさん関係は全部、俺の部屋だし、問題はない、か……


「ちょっと待ってねー」


 俺はそう言って、通話を切ると、テーブルに出したボディーソープをカバンにしまった。

 そして、アイテム袋をキッチンに隠すと、急いで玄関に向かい、扉を開ける。

 当たり前だが、そこにはヨシノさんが立っていた。


「やあ」


 ヨシノさんが軽く手を上げる。


「こんにちは。どうしたん?」

「大事な話があってね。カエデは?」

「カエデちゃんはまだ仕事。あがる? お茶くらいは出すよ?」

「そうだね……あまり外で話せる内容ではないんだ」


 何だろう?

 告白?


「じゃあ、どうぞ」

「悪いね。お邪魔するよ」


 俺はヨシノさんを招き入れると、リビングに通し、テーブルに座らせる。


「あのー、一応、聞くんだけど、なんで家を知ってんの?」

「すまない。調べた」


 怖いなー……


「なんで?」

「それが大事な話に繋がることなんだよ」


 やっぱりエレノアさんかなー?


「はぁ……? 急すぎてびっくりしてるわ」


 アポって知ってる?


「いきなり家に来たことは申し訳ないと思ってる。でも、急ではない」

「へ? 急じゃん」


 何言ってんねん。


「さっき、近いうちに大事な話があるって言ったじゃないか」


 ………………んん!?


「言ったっけ? さっきって昨日?」


 今日、沖田君はヨシノさんと会っていない。

 会ったのは…………


「さっき、ミレイユ街道で会った」


 あ、ヤバい。


「何のことでしょう?」

「君はエレノア・オーシャンだね?」


 あれー?

 バレてるぞー?

 バレるようなことをしただろうか?


「いや、そんなわけないじゃん。そもそも性別が全然違うし」


 俺、男。

 エレノアさん、女。


「隠すな。私にはわかる」

「隠してないのに…………ちなみに、なんでそう思ったん?」

「君がそうであるように私もユニークスキルを持っているんだよ。それでわかった」


 ユニークスキル……

 あ、これはダメだわ……

 ど、ど、ど、どうしよう!?

 カエデちゃんはどこ!?


「ふぅ……コーヒーでも飲む?」


 俺は一つ息を吐くと、お客さんにお茶を出していないことに気が付いた。


「もらおう」


 俺は立ち上がり、キッチンに行く。

 そして、お湯を沸かし始め、考える。


 どうしよう?

 ヤバいね。


 うーん、とりあえず、黙らせるか……

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