第022話 もう付き合ってるも同然!(あくまでも個人の感想です)


 俺は相変わらず、ぼろい自室でスマホを見ながら悩んでいた。


「うーん、まーた、探し始めないとなー……」


 引っ越しを決意したのだが、収入に見合った部屋を探し、このくらいかなと思う度に収入が増えていくのだ。

 どんどんと借りようと思う部屋のグレードが上がっていっている。


「でも、あんまり広すぎる部屋を借りても管理がなー」


 俺は正直、綺麗好きでもないし、ずぼらな方だ。

 カエデちゃんがウチに来た時は片付けて掃除をしたが、あれからまったく掃除をしていない。


「ハウスキーパーもないし……」


 掃除を代行してもらうサービスもあるが、信用できない。

 エレノア・オーシャンのことや錬金術がバレる可能性があるし、漏れる可能性もある。


「まーじでカエデちゃんが嫁に来てくれたらなー」


 炊事は怪しいが、掃除はできそうだ。

 得意って言ってたし。


「うーん、ダメだ……」


 俺はスマホをテーブルに置き、床に寝っ転がる。

 良い部屋が見つからないのだ。


「オークション結果を待つか……」


 オークションはすでに開催されている。

 結果は明日の夕方にわかるらしい。

 なので、明日の夕方にカエデちゃんがこの部屋にやってくる予定だ。

 超勝ち組パーティーをする。


「あ、掃除しないと……」


 もういっそ、カエデちゃんの家でやりたいわ。

 絶対にそっちの方がきれいだし。

 もっと言えば、女の子の家に行きたいし。


 俺は大学時代にもカエデちゃんの家に行ったことがあるらしいが、覚えていない。

 酔って、包丁でテーブルを斬ろうとしたらしいが、まったく記憶にないのだ。

 多分、相当、飲んだんだと思う。


 あ、だから招いてくれないんだ……


 俺は渋々、起き上がると、部屋の片付けを始めた。


「カエデちゃんが来るとなると、色々と買いたいけど、引っ越しを考えると二度手間だなー」


 例えば、ソファーか何かがあると、楽でいい。

 ベッドがあると、スムーズに…………何でもない。


 でも、引っ越しをするとなると、そういうのが無駄になる。

 部屋のサイズも違うし、家具と部屋の雰囲気等もあるのだ。


「ハァ…………めんど」


 俺は嫌々ながらも掃除をし、午後から買い物に出かけた。



 そして、翌日、夕方の6時になると、ウチにカエデちゃんが訪ねてきた。


「こんにちはー。お邪魔しまーす」


 カエデちゃんは今日もかわいらしい格好だ。


「どうぞ、どうぞ」


 俺はカエデちゃんを招き入れ、部屋まで案内する。

 キッチンと部屋しかないけど……


「先輩、オークション見てます?」


 部屋に入ったカエデちゃんが座りながら聞いてくる。


「うんにゃ、見てない。お楽しみにしとこうと思って」


 気になって見ようとも思ったが、部屋探しやら何やらで見ていない。


「すごいことになってますよ」

「すごいこと? 値段が爆上がり?」

「はい。一番高い100キロのやつは残り時間が6時間もあるのに2000万を超えました」


 1000万ではなく?

 すでに相場の2倍?


「は? マジ?」

「マジです」


 オークションは今日の23時59分に締め切る。

 まだ上がりそうだな……


「なんでそんなに上がってんの? キロ単位10万だろ?」

「100キロも入るアイテム袋は本当に数がないですもん。あとは話題性ですかね?」

「話題性?」

「ネットで自分のエゴサをしてください。謎の魔女でお祭り騒ぎです」


 俺はカエデちゃんに言われて、スマホで検索してみる。

 すると、かなりの数のサイトがヒットした。


『エレノア・オーシャンとかいう謎の女が100キロのアイテム袋を出品する!?』

『黄金の魔女が日本に降臨!』

『100キロのアイテム袋に企業が殺到か!?』

『外国人がオークションに参加できないのは不平等ではないか』


 うーん、他にもいっぱいある。


「魔女になってるし…………」

「だって、どう見ても魔女じゃないですか」


 うーん、ミステリアスを目指していたのに魔女になってしまった。

 まあ、魔女もミステリアスか。


「しかし、黄金って?」

「ネットで写真が出回ってますよ。金髪ロングだからじゃないですかね?」


 俺はそう言われたので『エレノア・オーシャン』で画像検索してみる。

 すると、電車に乗っている自分やコンビニで立ち読みをしている自分の画像が出てきた。


「げっ! 盗撮じゃん」


 というか、顔バレすんの早っ!


「そういう世の中ですよ。私的には私を誘わずに一人で高級ホテルのケーキバイキングに行ってるこの写真がポイント高いですね」


 カエデちゃんがそう言いながら自分のスマホを見せてくる。


 スマホ画面に写っていたのはイチゴのタルトを美味しそうに食べる金髪女だった。


「うん…………ほら、男だと行きにくいじゃん。1回行って見たかったんだよ」

「へー。いいですねー。私も行きたかったです」


 だって、お前、仕事があるじゃん。


「今度、一緒に行かない? 男1人は無理だけど、お前となら行ける」


 実際、1人で行った時もカップルか夫婦かは知らないが、男を連れた女もいた。


「行きます。私、行きたかった所があるんで」

「行こう、行こう。あ、なんか飲む? 今日はビール以外にも色々買ってきた。お前の好きなカシスとか」

「もらいます。あ、先輩、これ、おみやげです」


 カエデちゃんはそう言いながら愛用のポシェットから明らかにポシェットより大きい総菜を取り出した。


「お前、ちゃっかり、そのアイテム袋を使ってんな」


 俺が以前にお試しで作ってあげた100キロのアイテム袋だ。


「売ろうかと思ったんですけど、せっかく先輩がくれたものなんで」

「良いことを言っているのかもしれないけど、あんま嬉しくねーな。輪ゴムを入れただけだし」

「じゃあ、もっと感動的なものを貢いでくださいよ」


 指輪でいいかい?


「そのうちな」


 俺はそう言って、冷蔵庫に行き、カシスソーダとビールを取り出した。

 そして、部屋に戻る。


「それよかさ、カニ、食いに行こうぜ」


 俺はカエデちゃんにカシスを渡し、ビールを開けながら誘う。


「あー、そうですね。北海道かー。休みが取れるかな?」

「別に何泊もせんでいいだろ。カニ食って帰ろうぜ」


 最悪、日帰りでもいける。


「1泊ならいけるか……」

「お前のところ、客がいないんだから適当に休めばいいじゃん」

「言ったじゃないですか。私は鑑定士です。ウチには3人しかいないんですから休みを調整する必要があるんです」


 そういや、そうだった。


「じゃあ、これあげる」


 俺はカバンからメガネを取り出した。


「メガネ? 先輩、メガネ女子が好きでしたっけ?」

「いや、俺はアンチメガネ派。コンタクト至上主義」

「…………話の流れから予想がつくんですけど、これは何ですか?」

「鑑定メガネ! お前の職を奪うアイテム!」


 ごめんね!




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名前 沖田ハジメ

レベル5

ジョブ 剣士

スキル

 ≪剣術lv5≫

☆≪錬金術≫

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☆≪錬金術≫

  素材を消費し、新たな物を作ることができる。

  レシピはスキル保持者のレベルが上がれば増える。

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レベル5

  回復ポーションlv1、性転換ポーション

  眠り薬、純水

  翻訳ポーション、アイテム袋

  透明化ポーション、鑑定メガネ、鑑定コンタクト

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 コンタクトも作れるのだ。

 材料はメガネかコンタクトとブルーベリー!


 エレノアさんのカラコンも鑑定コンタクトにしたぞ!


「あ、これが流通したら私の給料が著しく下がりそう…………この先輩、後輩を不幸にする最悪なアイテムを作りおった」


 大丈夫!

 その時はもらってあげるから!


「やっぱ売らない方がいい?」

「うーん、仕事の負担が減る…………でも、給料…………先輩、これをウチのギルマスにあげてください。あれに働かせましょう」


 元パーティーリーダーの上司をあれ呼ばわり。


「じゃあ、それ、あげる。度は入ってないやつだから」

「ありがとうございます。これで休めます! 北海道にいきましょう!」


 いえい!


「かんぱーい!」

「かんぱーい! 先輩、大好きー!」


 俺達は乾杯をし、宴会を始めた。

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