真夏の夜に打ち上がる、圧巻の15,000発
みなさんこんばんは、長谷川理玖だよ。何か、久々に普通の挨拶をしたような。
夏休みも8月に入って、今日は花火大会。地元・高崎が誇る、高崎まつりの日だよ!現実世界では、9月に開催されてたって?うん。この話、3年ほど前の時代設定なんだ。
真夏の夜に打ち上がる、圧巻の15,000発(コピペ)!!しっかり鑑賞しようと思えば、有料の入場券があるんだけど…。雪兎くんもオレも、そう言う所にお金を使うのは大嫌い。そもそも花火を見るだけなら、伊勢嶋邸の屋上にお邪魔すれば済む話。だけど今年は、二人でイチャイチャしてお祭りの雰囲気を楽しみながら見る事を選択したんだ。
今日も今日とて野球部の練習試合があったので、待ち合わせ場所に到着するのが遅くなった。前日から聞いてはいたけど、雪兎くん浴衣姿だぁ!超可愛い、お持ち帰りしたい!
お義母さんの沙都子さんに、着付けしてもらったらしいよ。何でも出来るよね、あの人。オレも、(楓兄貴あたりのお下がりの)浴衣を着ないか誘われたのだけど…。言った通り、到着が遅くなるのは分かっていたしね。それに、去年サイズが大きめの甚兵衛を買ってたのでこちらを羽織った姿を見せたかったんだ。
予想通りと言うか、超評判良かったよ。オレも最近になって思うんだけど、胸元とか足元とかチラ見えしてエロいもんね。男の甚兵衛。来年は、雪兎くんと衣装テレコにしてもいいかなぁ…。
って言ったけど、来年のオレらはどうなっているんだろう。こんな風に仲良く、二人して花火大会に行っているんだろうか。再来年は?そのまた来年は…?うぅ、ガラにもなく、弱気になってしまった。オレたちのリア充ぶりは、末永く爆発している…筈。
差し当たっては、今このお祭りを力いっぱい楽しもう。縁日にはしゃぐ雪兎くんを、見ているだけでこっちが幸せな気持ちになってくる。ってかこいつ、黙って見てればめっちゃ食うな。たまに、外食だったり弁当だったりでお昼一緒に食うけど…。華奢な見た目通り、そんなに食べる方じゃないんだよ。それが、さっきからタイ焼き何個食うねんって話。「甘い物は、別腹」なんだってさ…。多分、頭の出来が違うので脳が糖分を求めてらっしゃるんだと思います。
でもでも、そう言う何気ない事(?)がとっても楽しい。楽しいついでに、他のカップルみたく手を繋いで歩いてみたいんだけど…。なんとなーく、踏ん切りがつかない。お互いのチンコさんざん握ったり握られたりしといて、今更って話だと思うけどね。
だけど、ちょっとだけ寄り添って歩いて…。お互いの手が触れるかって距離で、ちょっとだけ小指を絡めてみた。雪兎くんも、それで満更でもなさそう。多分、手を繋ぎたいと思っていたのはオレだけじゃないっぽい。しばらくそんな感じで、恋人のような他人のような顔をして歩いていたら…。
野球部の連中と、道で出くわしてしまった。こいつら、野郎ばっかで寂しい奴だな…。と思ったけど、今のオレこそがまさに野郎二人で歩いてる最中なんだっけ。
どちらともなく絡めていた指を離して、また少し距離を取った。多分お互いに、『オレ(俺)は何て言われてもいいけど』『雪兎くん(りっくん)が変な噂を立てられたら・・・』みたいな事を考えたんだろう。オレらの仲なんて、多分もう学校中に知れ渡ってると思うけど。
野球部の連中も連中で、目の端に雪兎くんの存在を認めてさり気なく別れを切り出してくれた。多分、『あっこれは、気がつかなくてごめんね』『年寄りは退散するから、後は若い二人でどうぞごゆっくり』とでも思ってくれたんだろう。気を使って頂いて、どうもありがとうございます…。
それから雪兎くんと二人、また並んで歩き始めたけど…。なーんか、妙に気まずい雰囲気が漂い始めたな。決して、野球部の奴らのせいだとは言わないけど。再び指を絡める気にもならないし、この沈黙をどうしよう…。
だけど、歩いてる途中で思い直した。ついさっき、来年や再来年はどうなってるか分からないって考えた所じゃん?それでも今を精一杯楽しむって、決めた筈じゃん…?
そう思ったら速攻で、雪兎くんの腕に手を伸ばしていた。小指だけなんてケチくさい事言わず、5本すべての指を絡める。いわゆる一つの、恋人繋ぎってやつね。雪兎くんはちょっとだけ戸惑ってたけど、何だかんだ嫌な気持ちではなかったみたい。
道行く人たちに好奇の目で見られるのは恥ずかしかったけど、直接何を言われる訳でもないし…。とか思ってたら、屋台のオッサンがヤジ飛ばして来やがった。
「そこのお二人さーん。これ(タコ焼き)を食べたら、もっともっと仲良くなれるよ〜!」
だとさ。うるせぇ!てめぇ自身が、中の具にでもなってろや。ちなみにタコ焼き屋かどうかは忘れたけど、作者自身が実際に飛ばされたヤジだよ。
さらにいたたまれなくなって、いつしか人混みを離れて歩いていた。だけど、せっかく繋いだ手は決して離す事はなかったさ。気づけば花火大会が始まって、夜空に満開の華が咲いていた。
「綺麗だね…。今日この花火を、りっくんと一緒に見れて良かった。ちゃんとした、観覧席から見るんじゃなくたってさ」
オレも、そう思う。そう思えるのは、きっとこうして雪兎くんと二人で見ているから…。今この時間が、ずっと続いていればいいのにね。
『好きだって事が、言えなかった』かぁ。いや…お互いに好きだって事は、すでに伝えた後なんだけど。今日この日に伝えようと思っていた事が、どうしても言い出せなかった。でも、いいかなぁ…。差し当たっては、今この花火を二人で見るのに忙しいし。
手を繋いだだけで、キスもその他のエッチな事も何もしなかったけど…。たまには、こんな日があってもいいかな。なんて。
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