自分のそういう魅力に気づいていないんだよね

 さて、伊勢嶋邸を後にする際の話なんだけど…。また門扉の辺りで、雪兎くんのご兄弟の一人に出会ったよ。


 こないだの楓兄貴とは、また別のお兄さんだ。雪兎くんから写真を見せてもらっていたので、すぐに分かった。この人は、伊勢嶋家次男の…蛍さんだ。

 年齢は23歳で、現役医大生。医学部は6年制で、卒業を経て国家試験に合格する必要があるんだってさ。でもその試験を乗り越えたら、噂に聞く地獄の研修医期間なんでしょう…?どれだけの膨大な時間と金を、費やすんだって話。雪兎くんが、医者を目指さなくなった理由も何となく分かるなぁ。

 黒髪で、見た目の方向性としては雪兎くんにちょっと似てるよ。だけど、身長がスラッと高くて筋肉質で…。この家には珍しく、スポーツマンタイプのイケメンだ。雪兎くんがコンプレックスに感じる理由も、これまた何となく分かるわ。

 実際にスポーツマンで、中学は公立に通って野球部に所属していたらしい。つまりは、オレのOB!この後の用事は控えていたけど、ご挨拶ついでにしばらくお話を続ける事となった。蛍さんも、思い出話に華を咲かせるのが楽しそうだったしね。

 また部活以外でも、地元の草野球とかにはちょいちょい顔を出していたらしい。オレも、一度くらいは会った事があるのかなぁ?雪兎くんとはだいぶ年が離れてるけど、仲が良くてしょっちゅうキャッチボールを付き合っていたんだとか。何その光景。想像したら、ちょっと萌えるわ。

 反対に三男の楓さんとは仲が悪く、しょっちゅう言い合ってるってさ。比較的最近の話で、どっちかのプリンを食ったとか食わなかったとかで取っ組み合いの喧嘩をしたとか。雪兎くんたちは、「またか」って感じで遠巻きに眺めていたらしい。

 うん。あんたら、お金持ちなんでしょう?プリンなんか、その気になったら店ごと買い占められるんでしょう?何があったか知らないけど、兄弟仲良くしたらと思うんだけどねぇ。

 話の途中だけど、突然蛍さんが黙ってとある方向を見つめだした。視線の先を追うと、プール帰りの少年…?ここらへんに住んでいる、小学生くらいの男の子たちだと思われる。そしてやっと口を開いたので、何を言い出すかと思ったら…。

 「十二歳くらいの子の妙な色気って言うのはさあ…手足が妙に長くて、細くてさ、それで変声期でさ。変化の瞬間って、実はすごく魅力的なのに、たぶん中一や中二の男の子たちは自分のそういう魅力に気づいていないんだよね。惜しいなあ、みたいなね。まあ、みんな手を出さないからね。同年代の女の子も若すぎて、男の子の魅力に気づけないじゃん。いやあ、良いんだよね…プール帰りの男の子とかって、すごく色っぽいんだよね 」

 とか何とか、長文でどっかの映画監督みたいな事ぬかしやがったぞ。そうかそうか。つまり君は、そう言う奴(ガチのショタコン)だったんだな。こいつにだけは、小児科を担当させたら駄目だろ。ってか伊勢嶋家の四兄弟、変態しか存在しないのか…?まぁ、オレの雪兎くんは天使なんだけど。

 弟の楓さんがガチのブラコンである事を、さも小馬鹿にしていたけど…。正直、清々しいほどの五十歩百歩だ。いや、どちらかと言うと「目糞鼻糞を笑う」かな。それも、あなたの方が鼻糞寄りであると思われます。身内に収まらない分、犯罪臭が漂ってくるからね…。

 ちなみに長男の桜さんは、どう言う種類の変態にするか作者が考えている最中らしい。って言うか、どう転んでも変態なんだ。これは終わったな、伊勢嶋家…。子孫とか、残せないんじゃない?まぁオレが成人する頃には医学が発達してるだろうから、雪兎くんにポンポン子供産ませて家を存続させてやるよ。その際は、屋敷とか財産とか一切合切相続させて頂くのをお忘れなく。

 蛍さんと別れて、しばらく歩きながら考えてたけど…。オレ、やっぱあの人と会った事があるような。子供の頃に、いつもキャッチボールとか草野球を付き合ってくれた高校生のお兄ちゃんで…。すごい優しかったけど、ある日そのへんの草むらに連れ込まれてあれやこれやと…。うぅ、あんまり思い出したくもなかった。

 オレがいま男同士での行為に違和感を感じないのも、多分あの時の経験が原因だ。結果として、雪兎くんとこうして付き合えた事は凄い嬉しいんだけど…うん。


 やっとの事で忘れてた傘持って帰ったけど、この天気だとしばらく使う機会がないなぁ…。と思っていたら、まさかのゲリラ豪雨が降ってきて早速めちゃくちゃ役に立った。

 色々と運命が複雑に絡み合うけど、最終的には自分にとって一番良くなるように動いてるのかなぁ…って。

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