外の二人に気づかれちゃうよ

 「んっ…くっ…。ふぅっ…」


 びばばんぼんびびば…って、自分でも何言ってるか分かりゃしねぇ。失礼。今ちょっと、雪兎くんとベロチューするのに忙しいんだ。

 改めまして、みなさんこんにちは。長谷川理玖です。雪兎くんと付き合いだしてからこっち、しばらく会えなかったんだ。元々、学年で校舎分かれてるしね。それに野球部の練習が忙しくて同好会に顔出せなかったんで、すごいお預け食らってた気分。休日は休日で、試合だしさ…。だから、しばらくは家に帰ってから雪兎くんとオナ電する毎日だったよ。

 あぁ、でも一度だけ試合の帰りに野球ユニフォームで会ったら…。ものっすごい、絶賛されたよ。ほら、アニメの何とかってキャラに似てるとか言ってたじゃん。またキャラがどうとか以前に、いわゆるユニフォームフェチではあったらしい。今度、プレイの一巻として雪兎くんの家に持って行こうかな?

 シチュエーションは、お互いヤりたい盛りの野球部員と優等生…。って、現実と特に何も変わりゃしねぇ。プレイでも、何でもねぇな。だけど、ユニフォーム持って行くのは検討しよう。

 差し当たって、今は雪兎くんと舌絡めるので忙しいんだよ。場所?お久しぶりの、部室棟ですよ。期末試験前で練習が無くなったので、ようやく顔出せたって訳。

 言い忘れてたけど、雪兎くんはとっくの昔に推薦入学が決定したよ。言ったように、市内の男子校。お兄さん達ほどじゃないけど、結構な偏差値の高校だ。うぅ、雪兎くんと同じ高校とか憧れるけど…。オレの学力では、それこそ推薦の力でも借りないと無理っぽい。

 差し当たって、自転車通学の時間が長くなるので体力つきそうって言ってる。簡単に風邪引かない身体に、なればいいですね…。引いたら引いたで、オレが(エッチな)看病してあげるけど。

 閑話休題。オレがしばらくの間勉強してなくて試験がヤバいので、久々に教えてもらいに来たって訳。何せ、赤点取ったら補修ですからね…。これ以上練習出来ない時間が増えたら部活に付いて行けないのと、それ以上に雪兎くんに会えなくなる!夏休みは空いた時間を見つけて会って、若い性欲を爆発させたいんだよ!オレは!

 さて、勉強の進み具合がどうかって言うと…。今現在、ベロチューしてる事からもお分かりですかね。ちっとも、範囲が進みゃしねえ。何せ、言った通りにしばらくお預けでしたからね…。

 最初のうちは「ここからここまで問題が解けたらご褒美にキッス♡」くらいの、ベタベタなやつだったんですよ。それがいつの間にか、一問解く度にキスするようになって…。また、そのキスが舌を突っ込む類のものになって…。

 いつしか、特に問題を解く事もなくキスするようになってました。むしろ、勉強するよりキスしてる時間の方が長いまである。このままで、大丈夫か?赤点取ったら、ヤバい言うたやんオレ!あぁでもしばらく会えなかった時間も相まって、やめられない止まらない!

 やめられないついでに、舌を絡めながら雪兎くんのシャツのボタンを一段ずつ外してみた。当然に肌着は着てるけど、その中の生っ白い肌が露わになる。

 「りっくん…そこまでは、駄目だよ。やめ…」

 雪兎くんが、唇を離して言った。お互いの舌の先から、唾液の糸が繋がっている。どんだけ長い時間、舌絡め合ってたんだオレ達。

 「やめない。長い間、焦らされたんだから。これが終わったら、本当に勉強するからさぁ(嘘)」

 何か言い返そうとする雪兎くんを、再び唇を塞いで黙らせた、「これ」って、どこまでの行為を言うのか?自分でも、考えてなかったな。まぁ、本能の赴くままにって事で…。

 とか考えてたら、部室の扉を開けようとする音が鳴ってお互いに固まった。鍵はかかっているので、入っては来れないようだけど…。ってかこの部室来て長いが、誰か他の人間が来るのは初めてだな?

 「部長ー?いないんスか?こないだ貸したBL本、返してもらいに来たんスけど?」

 だいぶ前に言ってた、美術部と兼ねてる女子二人だ。作者も名前考えてないので、「モブ子A」と「B」でいいよ。こいつら幽霊部員のくせに、今更顔出して来やがった。すごいどうでもいいけど、BL「同好会」なので雪兎くんは「会長」だよ。だけど、あだ名みたいな感じで定着したらしい。

 「ちょっと待ってA子。あたし、合鍵持ってるから…ほれっ」

 そう言って、部室の扉の鍵を開けようとする音が聞こえた…ヤバいな。このままだと、雪兎くんのシャツを脱がせてあれやこれやしようとしていたのがバレてしまう。あと多分、いま唇離しても絶対に唾液の糸が伝わっている。

 長谷川理玖14歳、ここはどう切り抜けるか…?と思っていたオレの目の端に、ある物が目に入った。これぞ天啓と受け取ったオレは、すぐさま自身と雪兎くんの身体を移動させて…!

 「部長?やっぱ、お留守?」

 「勉強道具出たまんまだし、休憩とかでどっか行ってるんじゃない?」

 そう言って、外からは雪兎くんに貸した「BL本」とやらを探し始める音がした。やれやれ、気づかれはしなかったか…。

 ところで、「外から」と言ったね。今オレちがどこにいるか、読者のみなさんにはご想像がつくかな?

 そうだね、掃除用具ロッカーの中だね!

 …えぇと、ご説明しましょう。部室棟の各部屋に、掃除用具入れのロッカーが置いてあるんですよね。苛めが起きそうとか、考えないのかなぁ?うちの学校。でも、こう言う状況(腐女子二人にホモバレしそうな状況)では役に立ったわ。

 そして、続けてご説明しましょう。これは、作者が大好きな「ロッカーの中に男二人が閉じ込められる」展開ですね。一度はやってみたかったけど、なかなかその機会がなかったとか。そりゃそうでしょう。日常生活で、いい年した男子二人がロッカーに入る展開とかそうそうないわ。

 まぁいいや。これもプレイの一巻だと思って、先程までの続きをさせて頂こう。ちょうど、雪兎くんのシャツのボタンは外しきっていたしね。ロッカーの中で再び唇を重ねながら、肌着ごしに乳首を弄ってやる。暗くてよく見えないけど、雪兎くんが切ない表情を浮かべているのはよく分かった。

 「………………っ…」

 いいねぇ。オレ、こう言う音出したくても出せない状況とか大好き。相手が声上げないように必死な所とか想像するだけで、もうね。

 言うて表にいるのは腐女子二人だし、バレても「ちょっと同好会の活動が行き過ぎたんだよん」で誤魔化せるでしょ。実際、どんな感じなのか以前からの興味はあったしね。なかなか面白いわ、これ。ってか、病みつきになりそう。

 雪兎くんが、切なそうに(多分)ガクガクと震え出す。ほらほら。音立てたら、外の二人に気づかれちゃうよん。ちょっとエスカレートしたオレは、両手を使ってさらに激しく乳首を弄ってやった。ついでに、股間をグリグリと押し付けてやる。限界かなぁ。これは、思わず声出しちゃう?

 「あったよA子。この本でしょ?本棚に、並べてあった…。ほいじゃ、撤収〜」

 あらら、もう終わりかよ。まぁ、いいかな。だいぶん楽しませてはもらった。腐女子二人は目当ての本が見つかったようで、部室を出て鍵をかけてから去って行った。

 「これで、夏の祭典に間に合った」とか言いながら。本を資料にして、何らかの創作物を出品するつもりらしいよ…。うん、お前らも受験生でしょ?そんな事やってる暇、あるの?

 雪兎くんがもう限界、とばかりにロッカーを飛び出して、息をついた。同時に、えらい剣幕でオレに対して怒りをぶつけてくる。まぁ、当然ではあるかな。

 「りっくん!?一時は、どうなる事かと。もうもう、こんな事はやめてよねっ」

 「あはは、ごめん。ごめんって。でも、どうだった?ロッカーに閉じ込められる展開は、雪兎くんも好きだって言ってたじゃん。実際に自分で体験してみて、どう思ったよ?」


 「掃除用具臭かった。あんな所で、致そうとする人の気が知れない」

 「それな」

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