胸が、モヤモヤする
みなさんこんにちは、長谷川理玖です。新学期になって、二年生になりました。
今日は登校初日だったけど、当然の事ながら足取りは重かったよ。腕には、邪魔なギブスつけたままだったし。
そして、当然の事ながら金髪を注意された。いけ好かない野球部の監督が、生活指導も兼ねてるんで毎日校門に立ってるんだよ。色々と言われたが、とりあえずお説教は放課後まで待ってもらえる事となった。オレの負傷は部活中の出来事であるので、指導していた彼にも負い目があるのだろう。
放課後かぁ。こんな腕で、野球部の練習に参加するのもなぁ。元々部活の連中と仲良かった訳でもないし、顔出さずに帰ろうか…。何か本当に、新学期から辛気臭い事で嫌だな。
昼休みが終わって5時間目、部活動の紹介で全校生徒が体育館に集まった。当然ながら、野球部も…。本来なら、オレも壇上で紹介に加わっていた筈だけど。別に、カケラも羨ましいと思っている訳じゃありません。
部の紹介がひと通り終わり、続いて同好会の順番となった。部としての立場がない彼らと紹介は、至極短いものであったが…。中で、ひときわ異彩を放つものがあった。その名も、「BL同好会」。よく、設立許したなうちの学校…。
しかも、その紹介で壇上に上がった人物を見て目を疑った。聡明な読者さん達は気づいてるだろうけど、例の伊勢嶋雪兎くんだよ。もじもじと緊張しているようで、割とハッキリした口調で彼は言い切った。
「えっとぉ。BLは単なる娯楽に留まらず、もはや本格的な文芸の域に達していると僕は思います。同好の士がいたら、僕と一緒に会を盛り上げて行きましょう。そして、ゆくゆくは部への昇格を目指しています。以上です」
体育館に、乾いた拍手がこだました。本当はもう二人ほど女子生徒が在席しているけど、彼女らは美術部の活動がメインなんだってさ。三年生で受験勉強が始まるので、実質的に活動するのは雪兎くんただ一人。よく、学校から潰されないなと思う。これは、伊勢嶋家が地元の名士であるのと…。
単純に、会として実績を残してるからなんだってさ。県で行われたとある作文コンクールに、BL同好会の名義で提出した雪兎くんが入賞。詳しく知らんが、LGBTQをテーマにした内容だったらしい。文章力も去ることながら、着眼点が中学生のそれではないと絶賛の嵐であったそうだ。
すげぇな、彼…。国語以外でも、総じて成績は優秀なんだって。まぁ、家族みんながお医者さんの家系だしね。彼自身は、医者の道を目指すつもりはないらしいけど…。
だけど、すげぇと思った。たった一人で、あんな壇上に立って演説してさ。会の名前が名前だけに、ホモだの何だのと嘲笑する奴らもいるみたいだけど。てめぇらも、偉そうに言うなら同じ事やってみろってんだ。でも、そう言うオレはどうだろう。髪を金色に染めて粋がってるけど、同じように人前に立つ度胸があるかって話。
本当の勇気って、あぁ言うのじゃないかなあ…。って、何だろう。胸が、モヤモヤする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます