詩の短編集
柊 鍵
世迷鳥
世迷鳥-1
あるところに、元気なオスの鳥が二羽いました。
いつも一緒にいる鳥です。
とても仲のいい鳥です。
でも、ずっと一緒にいれば喧嘩もします。
喧嘩するほど仲がいいとはよく言ったものです。
どんな喧嘩をしても、お互いに
ごめんね……
謝って、仲直りをします。
何においても、始まりがあれば終わりがあります。
喧嘩も、楽しいことも、辛いことも……
鳥は、いつかどこかへ飛んで行ってしまいます。
高く……遠くへと……
いづれこの鳥もどこかへ旅立ってしまいます。
どこへ行ってしまうのでしょうか。
別れは突然やってきます。
いつも一緒にいた片方が……もう一羽がいなくなってしまいました。
なぜでしょうか。
旅立つにはまだ早いのです。
時間はそんなに経っていないはずなのに……
残された鳥は、弱ってしまいました。
飛ぶこともできません。
どうしてでしょうか。
わかりません。
でも何日かたったある日、ついに飛ぶことができました。
風が強く吹いたのです。
飛ぶ方向があっているかはわかりません。
でもきっと、何かがあると信じて飛んで行きます。
失ったものを求め、風に流されて。
そして鳥は、旅立ったのです。
いく先もわからず。
ただ何かに縋りながら。
ひたすら、風に乗って旅立つのです。
戻り方もわからぬまま。
でももう戻る必要もないのかもしれません。
待つ鳥はもう、いませんから。
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