追放の真実

 僕はスローライフらしく、種を植えた畑に水をやっているのだが、不思議なことに畑の作物がまったく育たない。


 うーん、スキルがないとこういうものなんだろうか?


 いや、そんなことはないはずだ。

 

 草木はスキルや魔法の力で育っているわけでもない。

 鳥が空を飛ぶのは魔法でもなんでもないし、草木だってスキルを使って実をつけるわけじゃない。つまり論理的に考えて、別の要因があるはずだ。


 そうか……何で気が付かなかったんだ!!



 暗黒魔大陸のような負のパワーがこの大地を覆い尽くしているに違いない!


 ……クソッ!魔王め!!

 きっと悪のオーラを発して、この大地を枯らそうとしているんだ!!


 なんてひどいことを……!


 ぼくは枯れ木だらけになった森と、焼け果て、土がまるでレンガのようにカチコチになった大地を見た。ゆたかにながれていた川の水は赤く染まり、口を付けた無数の動物がそこで息絶えていた。


 そうか「ミニットマン」や「ト-フゥ」を使った後、土地がこんな風になったのは、すべて魔王のせいだ!!


 なんて卑劣なやつなんだ……!


 魔王は暗黒魔大陸のように、人々の住む豊かな土地を、死のはびこる大地に変えようとしているのだ!!方法はよくわからないがきっとそうに違いない!


 ――その時だった。


 空に無数のゴーストが浮かんで、こちらに向かっているのが見えた。

 あんな数は見たことが無い。まるで流星雨のようだ。


「ゴースト?!なんて数だ!」


 視線を落とし地平線を見ると、骨だけの馬、「デッドホース」にまたがったスケルトン・ナイトの軍勢が見えた。


 不死者の軍勢?!こんな事ができるのは……この世界に一人だけだ。

 そう、魔王しかいない!!


 僕は不死の軍勢に対して、N兵器魔法を放つ構えを取った。


 アンデッド種には「完全毒耐性」と「完全病気耐性」があるため、BC兵器魔法はあの手のモンスターに対して、全く効果が無いのだ。


 この弱点を知っているのは、僕と勇者アレスくらいのものだと思っていたが、なぜ魔王はNBC兵器魔法の弱点を知っているんだ?!


 絶対におかしい、まさか……!!


 その疑念は次の瞬間、確信に変わった。


 僕はアンデッド・ナイトの騎兵隊に混ざって現れたその姿を見た。その姿を忘れるはずがない、勇者アレスとその仲間たちだ。


 パーティから僕を追放した彼らが、魔王の手下たちと一緒に居る。


 これは一体どういう事だ?!


 なんてことだ!勇者アレスは……魔王の手に落ち捕虜になったのか!


 待てよ……捕虜なら魔王城にでも閉じ込めておけばいい。

 

 魔王が勇者をいやいや奴隷として戦わせるために、人の国までわざわざ連れて来るなんて、そんなリスクのあることをするとは思えない。


 第一、勇者アレスが魔王の為に戦うはずがない。

 彼が人間を裏切ったりしない限りは。


 ……嫌な考えが形になって、現実がそれを補強する。

 僕の中ですべてがつながった。


 まさか、暗黒魔大陸で僕を追放したのは……!!

 あの時すでに勇者アレスは、魔王の配下になるつもりだったからなのか!!


僕はついに「追放の真実」に気付いてしまった。


 暗黒魔大陸で僕がが勇者パーティを追放されたのは、あの時すでに勇者パーティ側の存在だったのは、僕一人だったからなんだ!!!!


 クソ!!!!なんてことだ!!!!!!


 きっと世界を救えるのは、もう僕しかいないんだ。

 勇者アレスは悪の勇者だった。彼は魔王の従順な配下になってしまった。


 そして勇者アレスは、魔王と共謀して……人間の最後の希望である、この僕を始末しようとしているんだ!


 そんなことはさせない!!

 N兵器魔法をすべて打ち尽くしたとしても、この世界の平和は僕が守る!!!!!

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