工夫すればなんだってできる
僕は【NBC兵器魔法】のひとつ、N兵器魔法の「テッポードン」を使う事を思いついた。
スキル【NBC兵器魔法】はそれぞれ3つの系統に分かれている。
ひとつ、即効性があり、大威力の「N兵器魔法」。
ふたつ、遅いが、広範囲大威力の「B兵器魔法」。
みっつ、即効、小範囲、小威力の「C兵器魔法」。
そのうちのN兵器魔法は、純粋に破壊力だけを持った魔法になる。
とくに「テッポードン」は、「ツァーリ」なんかより威力が抑えめで使いやすい。
僕はイカダの帆の向きを調整すると、背後、つまり暗黒魔大陸に向かって手をかざし「テッポードン」を唱えた。
すると、まるで周囲が暗くなったかと錯覚するような閃光がカッとはしる。
刹那、火球が発生して、そこから凄まじい勢いの風がこちらに到達してきた。
帆はその風を受けて、まるで海の上を飛び跳ねるように進む。凄まじい馬力だ!!!!
僕は振り落とされないように帆柱にしがみつく。
暗黒魔大陸の方をみると、まるでキノコみたいな雲がもうもうと立ち上がっていた。
ふう、テッポードンの威力はすごいな。思った以上のスピードが出て、びっくりした。
でもこれなら、手で漕ぐより、ずっと早く進めそうだ。
今日中には人里に付けるかもしれない。それならそうしたいものだ。
イカダの上で寝たら、寝返りで僕が海に落っこちそうだもの。
よっし、頑張ってうちまくろう!!
「テッポードン!テッポードン!もひとつおまけにテッポードン!!!」
<カッ……ズアアアアアアアアアアアアア!!!!!>
海の上でテッポードンを撃つと、想像以上の水柱が上がる。
風と一緒に、波の力も借りて、僕は暗黒魔大陸の極彩色の海原を猛進した。
「よし、いいぞ!工夫すればなんだってできるんだ!」
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ここは何処かの世界の、「地上の楽園」を自称する北の国。
この国では、
この国は名目上、「民主主義・人民共和国」を掲げているが、政党は一つしかなく、したがってマトモな選挙などドコにもないので、民主主義ではない。
そして、人民から選出、または委任された大統領がいるわけではないので、共和国でもない。
この北の国は、実質的には中世の王国と変わらない。
銀一族が世襲する、王政とも言える政治体制で運営されているのだ。
既にそのシステムはどうしようもないレベルにまで固定化されてしまっていた。
車が空を飛び、宇宙に日帰り旅行ができる日がやってきても、この国はおそらくそのままだろう。
いや、名目上は誰でも「首領様」にはなれる。
しかし……そうではないのだ。
確かに首領には後継者が必要だ。最も優秀な人物が就かなければ。
そして最も首領の考えに忠実な人物が就かなければならない。
そう、それを満たす人物がたまたま偶然に銀一族しかいなかっただけなのだ。
「筋斗雲を使い、落ち葉に乗って大きな川を渡り、松ぼっくりで手榴弾を作り、砂で米を作った」
銀一族以外にこれができる者は存在しないのだ。
秘術なので明らかにすることはできないが、これは歴史的事実だ。
すべてが純金で作られた質素な執務室に、厳めしい軍服を着た将軍がやってきた。
彼は首領様にとあることを伝えに執務室にやって来たのだ。
首領様というと、「喜び娘」を抱え込んで激しく前後しているところであった。
「
今の
「挨拶は良い、キミと私の中じゃないか、何でも言ってみたまっウッ……ふぅ」
「テ、テッポードンについての報告が」
将軍の前に居る脂ぎった男は、彼をじろりとにらんだ。
残酷で悪意のこもった眼をしている。
彼は恐怖を感じない。恐怖は感じさせるものだ。そういう意思を感じる眼だった。
「ふむ、テッポードンについて?金がかかり過ぎるという事なら、それはもう決まったことだ」
テッポードン1発の発射には、3億ドルかかる。これは国際市場で食料を買えば約350万トンになり、これだけでこの「北の国」に住む、全ての国民の腹を1年満たせる。
つまり、テッポードンをテストか何かで海に撃ちこむだけでも、国の民は飢えて死んでいく。
「反乱が起きたら全部殺せば良いのだ。餓死者は死なせておけばいい」
「私は2000万の民すべてを必要としていない。生存の権利を持つ、100万の民がいればいいんだ」
彼は道徳的な意思や概念を持ち合わせていない。
それどころか、人を助けるという行為から、一切の関係を断っている。
彼は包み紙からゴムを取り出すとそれを装着し、再び前後しだした。
「私はおっおっ明日の明日の富強祖国を建設するためにうっうっおっほっしているのだ」
彼は民がまともに食べることができず、あまつさえ死ぬという事を知りつつも、国家予算をテッポードンに振り分けているのだ。
「ウッ……ふう、知っているだろう?きたる日、中京を火の海にするのが我々の任務だ」
「そのテッポードンが、全て消えました!!!!」
チュチェッ!!!!と奇妙な悲鳴を上げて、銀子首領は卒倒する。
不幸なことに、純金製の執務室は、彼の頭蓋を支えるには固すぎた。
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