第24話~心~
「今日は私と李留君、ベイとワッカの4人で探査機に乗る事にするわ。暖は母星への報告をまとめておいてくれるかしら?」
遥の伝達で、各々が自分の持ち場へ向かうと場は解散となった。
「今日は遥さんに太陽を確認してもらえると思うと、少し気持ちが楽です。宜しくお願いします」
李留は笑顔で遥に駆け寄った。
「今日は万能な暖がいないから、記録は宜しくね李留君。あとベイ、装備を万全に安全は勿論考慮しながら、ステーションへのテレポート実験もしてみましょう?」
「了解。その代わり明日オフにしてよ?俺、バーチャルレストランの新メニューを食べたいんだ」
遥は、それは仕方ないわねと言うかのごとく、優しい呆れ顔を返信の変わりにしてみせると、一緒に出発していった。
「暖、今日はステーションで任務なら、昨日の続きをさせて?」
暖に集合時間だと起こされるまで、沙羅は暖のベッドをあろうことか占拠してしまっていて、暖は結局一睡もしてない様だった。
起こして?と言って、本当に起こす様な人でない事は、誰よりも知っていたのに、完全にそれは自分の甘えだった。
申し訳なさそうにしながら見つめてくる沙羅に、暖は「じゃあ、頼むよ」と、微笑むと部屋に戻ろうとした。
「沙羅、その後レストランに来れる?」
突然、大和が声をかけた。
「えぇ、探査機が戻るまで私はフリーだし行けるわ。何か用?」
すると真琴が立ち上がった、
「お姉ちゃん、あの、大和の……」
真琴は、自分では治せなかった、大和の右手の傷口のケアを頼もうとした。
すると、その言葉をかき消すかの様に、大和が言葉を被せてきた。
「珈琲の温度設定の項目を追加したんだ。沙羅にチェックしてほしい。」
「そう………そういう事なら喜んで。じゃあ、暖行きましょう?」
沙羅は暖に声をかけると、部屋を出ていった。
真琴は沙羅にケアを頼まなかった、大和の右手を見つめた。まだきっと痛むはずな傷口がそこにあった。
「私もお姉ちゃんとチェックに行きたいな……」
任務をこなしながら、真琴は独り言の様に大和へ呟いた。大和はその言葉を聞こえなかった振りをした。
真琴が一緒に行くと、また右手の傷口のケアを沙羅に頼むかもしれない。だから聞こえない振りをしたのだろうか。大和はそんな不器用な優しい人だ。
それはこの短期間でよくわかった事実。
でも、昨日も任務の合間に確かレストランへ行っていた。あの時もしかしたらお姉ちゃんと一緒だったのだろうか?今日もだから、お姉ちゃんだけに声をかけたのだろうか。
お姉ちゃんだけに…………
「今日から母星との通信、短時間だけどしても大丈夫だよ真琴。」
大和は無表情で、タイピングの手を休める事なく真琴にそう告げた。
「通信?映像でやり取りしていいの?」
「構わない。またみんな順番にしてもらおうと思ってるけど、真琴は俺がレストランに行ってる間にしてきたらどうかな」
「その時間に?」
「探査機メンバーが帰ってくる前の方が、みんなより長く話せるしその方が色々助かるんだ」
「でも、尚更パパとの通信はお姉ちゃんと一緒じゃないと……」
「真琴には恋人がいるんでしょ?」
「…………えぇ、いるわ………」
「恋人との時間は大事にした方がいい」
「わかった有り難う……じゃあお言葉に甘えようかな……」
真琴はそう言うと、任務の手を早めた。
鞍馬と久しぶりに話せる、嬉しさの陰に隠れた気持ちが何なのかが、真琴にはわからなかった。
そして真琴はそれを気のせいにした。
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