ハロウィンの日の珍事
「異国の文化が入ってくるというのは良い事ばかりじゃない」
いつか所長がため息交じりに言っていた言葉を思い出す。2階の部屋に物を取りに来たら、廊下の真ん中辺りで蠢く見慣れない黒い塊を見つけてしまった。人間が蹲っているようにも、大きな蛹にも見える。強く『視よう』として、尻尾が少しざわざわしたからやめた。目が合ってしまうとろくな事が無い。
外国から『ハロウィン』という文化が入って来てからというもの、その前後は人とそうでないものの境界が揺らぎやすくなった。この気持ち悪い物も揺らぎのせいで研究所内に入って来たんだろう。いつの間に紛れたんだろうかと思いながら海月を呼ぼうとして……ゴウッと音を立てて真横を通った強い風に驚いて尾を膨らませてしまう。
「な、え!?」
少し遅れてぐしゃ、と嫌な音。慌てて視界を前に戻せば想海君が床の上にいたそれを蹴り飛ばしたところだった。とんでもない勢いで蹴り飛ばされた黒い塊は壁に当たると霧散する。唖然としたまま固まっていれば想海君がこっちを向いた。何故か少し申し訳なさそうな顔で。
「危険物と判断した為対処したが、客人だったろうか?」
「……不法侵入だから問題ないよ」
答えておいてアレだけど、これで客人だったらやばかった。研究所の信用に関わった。次する時は先に言ってねと注意をしておいた。
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